「切島くん!行こ!」
名前の方から腕を絡めてきて、切島はたじろいだ。
初めの頃は唇が触れるだけのキスもままならなかったのに、最近になってようやく慣れてきたのか、スキンシップが多い。
それより、そんなに密着して腕を組むと胸が当たってしまうことは不可避なのだが、果たして彼女はわかっているのだろうか。
切島はそんなことを頭の端で思い理性と戦いつつも、夏祭りを楽しんだ。
綿菓子の屋台を見つけて、やけにテンションが高い名前。
切島はひとつ買ってやると、彼女は目をキラキラさせて喜んだ。
綿菓子を人差し指と親指で摘んで千切り、口に含む。そしてベタついた指を舐めた。
そうやって歩きながら嬉しそうに頬張っている顔を、切島はゴクリと生唾を飲んで見つめてしまう。
「なあに?」
「すげー幸せそうに食ってるなーと思って」
「えへへ。わたあめ、好きなの。ふわふわでかわいいし甘くて美味しい!」
満面の笑みでそう言う彼女に切島は、可愛いのはお前だ、と心の中で叫んだ。
名前は綿菓子を食べ終わると、絡ませていた腕を解き、ゴミ箱へ向かう。
ドン、と背中に衝撃を感じて振り向くと、どうやら彼女と衝突したらしいオールマイトのお面をつけた小学生がいた。
大丈夫?と声をかけると女の子はごめんなさい、と頭を下げて人混みに紛れて行ってしまった。
「大丈夫か?危ねえからちょっと端の方行くか」
「う、うん」
彼にそう言って手を引かれ、屋台の間を抜けて裏通りへ入る。
祭りから逸れたので、薄暗くて人気がなく、名前はあれ?と呟いた。
「誰もいないね」
辺りを見回して彼女が言ったのを、切島は聞き逃さなかった。
「…それ、誘ってんのか?」
低い声で彼が囁き、赤い目は熱を持って彼女を捉えていた。
名前にそんなつもりはなかったのだが、さっきの言葉が彼のスイッチを入れてしまったらしい。
両手首を掴まれて咄嗟にギュッと目を瞑ると、唇に暖かいものが触れた。
「あま…」
「!」
名前の反応を楽しむように、彼は見せつけるように舌なめずりし、そのまま砂糖でベタついた彼女の唇も舐め上げる。
反射的に名前が少し声を漏らし、それをきっかけに舌をねじ込むと、彼女は突然の事に驚いて縮こまるように両肩を上げる。
彼の熱い舌はザラザラしているのに柔らかく、わざとらしく音を立てて舌を吸ったり絡めたり、
名前の甘い口内を堪能すると、切島はゆっくりと唇を離していく。
「なあ、名前」
互いの額を当てて、目を合わせると、彼女は恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めていた。
さっきまであんなにくっついていたのに…切島は意地悪く笑うと、追い打ちをかけるように、こう言った。
「もっかい、綿菓子買いに行かねぇ?」