「あれ?かっちゃん…?」
「あ?」
呼ばれ、振り向く爆豪。
振り向くとクラスメートの名前が立っていた。
彼女の右手には男の子の手が握られている。
「…お前の…子ども…?」
「ち、違う違う!迷子!」
慌てて否定する名前。
彼女に手を引かれる男の子は、不安そうに眉を下げていた。
「あぁ?迷子だぁ?男が迷子くらいでメソメソしてんじゃねぇ!!!」
励ましなのか、喝を入れたのかよく分からない爆豪の怒鳴り声に、少年はビクリと肩を震わすとみるみるうちに大きな瞳から涙が溜まる。
今度はそれを見て、爆豪がギョッとした。
「こ、こんくらいで泣いてんじゃねぇ!!!!!」
どうしていいのか分からず、更に畳み掛ける形になってしまう爆豪。
そして、遂に少年は声を上げて泣き出してしまった。
「あーぁ、ダメじゃんかっちゃん〜、怒鳴っちゃったらビックリしちゃうよ」
怖くないよ?大丈夫だよ。と、男の子の目線に合わせてしゃがみ、あやす名前。声を掛けられ、そのまま名前に抱きつき泣きじゃくる男の子に爆豪は些かイラッとした。
何故かと言うと子どもの武器を使って、爆豪には出来ない事を自然とやってのける少年に苛立ちを感じたからだ。
しかし、背中を叩いてあやしても泣き止む様子がない。
これには名前もお手上げの様で、助けを求める様に爆豪を見上げた。
「チッ…、ちょっと待ってろ。」
軽く舌打ちをかました後、キョロキョロと辺りを見回す爆豪。
視線がある一点を捉えたと思ったらズンズンと屋台に進んでいった。
そしてまたズンズンとこちらに戻ってくる。
「ホラよ。これやるから機嫌なおせ。」
ズイと少年に向かって差し出されたのは、先ほどの屋台で売っていたりんご飴。
それを視界に入れた少年は、目を輝かせてりんご飴に食いついた。
「わぁ〜、怖いおにーちゃんありがと〜」
「ぶっ!!!的確で、ウケる…っ!」
「誰が怖いだコラァ!お前も笑ってんじゃねぇぞ!!!!」
爆豪が怒鳴り、またやっちまったとすぐにハッとするも、少年はりんご飴に釘付けの様で先ほどの様に怯えたりはしない。恐るべし、餌付け効果。
ひとまずは安心だとホッと胸を撫で下ろす名前は、立ち上がりまた少年の手を取った。
さぁ、お母さん探しの続きをと前を向いたところ、今度はズイと名前の目の前に別のりんご飴が差し出される。
「やる。」
「えっ、かっちゃん…いいの?」
「悪いも何も良いからやってんだろ。親探すんだろ。いくぞ。」
そして、そのままガニ股でズンズン人混みを歩く爆豪に慌てて名前も少年の手を引き後を追う。
ぶっきらぼうではあるが、当たり前のように付き合ってくれる彼の隠れた優しさに触れて、名前は頬が緩んだ。
「おねーちゃん。嬉しそうだね!」
少年のこの言葉は、名前には勿論、爆豪にだってしっかり届いていた。
「本当に、ありがとうございます。」
深々と頭を下げる女性は、何度も頭を下げながら少年の手を引いて人混みの中に消えていく。
あの後爆豪と二人で親を探し、無事に少年を母親の元へ送り届ける事が出来た事に二人は息を吐いて安心した。
「見付かって良かった〜」
「本当に手のかかるガキだった…」
「子どもはみんなそんなもんだよ〜、かっちゃんもお父さんになったら分かる時が来るよ〜」
余程りんご飴を貰えた事が嬉しかったのか、それを指先でクルクル回しながら笑う名前。それを横目で一瞥する爆豪。
「そんなお前も散々だったな」
「ホントだよ!せっかく可愛い浴衣で来たのに〜」
そう言うも名前の恨めしさを感じない物言いに、爆豪はフッと口元が緩んだ。
「んじゃ、こっから堪能すりゃいいわけだ」
「ん?」
「どこ回りたいんだ?」
「えっ!?かっちゃん、いいの!?」
りんご飴を渡した時と同じ言葉を返す名前に対し、爆豪は不敵に笑う。
「悪いも何も良いから言ってんだろ」