僕のクイズアカデミア


「クイズ…マジック、…アカデミー…?」

なんだこれは…とわなわな震える飯田を他所に、名前はるんるん気分で財布から100円玉を取り出した。

「飯田くん、ゲームとは無縁そうだもんね」
「そ、そういう苗字くんも、意外とこういうの嗜むんだな…」

名前は、大和撫子が良く似合うおっとりした女性だ。
良く漫画なんかで出てくる、黒髪ロングそして病弱で勉強ができるタイプのヒロイン…それを現実世界に引っ張ってきたようなイメージが確かに飯田にはあったのだが、実際名前は病弱ではないし、長髪ではない。
飽くまで飯田の想像の範疇でしかなく、実際の名前とは異なっていた。
証拠に、ゲームセンターに行こうと言い出した彼女に大いに動揺を見せたのだから。

「偏見は良くないよー?ゲームセンターって言ったら不良の溜まり場だからゲームそのものも否定してたでしょ、飯田くん。」
「ぐ…」

実際名前の言う通りだ。
事の発端は、名前が息抜きに何処か遊びに行こう!と言い出したのがキッカケだった。
飯田天哉という男は、プロヒーローを務める兄を持ち、その兄に憧れを抱いて日々ヒーローになる為の努力を惜しまず生活をしてきた。
その為、ヒーローになる為に必要でない事には無頓着。言ってしまえば、世間を知らない。
故に、不良の溜まり場になりがちなゲームセンターには良い印象を抱いていないし、そこに置いてあるものもロクなものではないと考えていた。
しかし、そんな飯田の様子を意に介する事もなく、名前はコイン投入口に100円玉を入れた。

「このゲームは、飯田くんこそ楽しめると思うんだ!」

そう言って、二人がけの椅子に座る名前に釣られ、飯田も隣へ腰掛ける。
勝手が分からぬ故、居心地の悪そうな彼を横目に微笑み全ての操作を名前が行った。

「これね、オンラインで対戦できるクイズゲームなんだよー!」
「ふむ…」

八つのジャンルから出題される問題に、九つある回答形式に従って答えていくゲームなのだが、先程名前が言った通り知識が豊富な飯田こそ楽しめるゲームと言える。

「わたしは、ライフスタイルくらいしか自信あるジャンル無くて」
「これは、多く正解した方がいいものなのか?」
「そうだよー!飯田くんの知識を貸して欲しくて!」

そう言って笑う名前を前に、自分も力を出さぬ訳にはいかないとそう思う飯田であった。

「初めはわたしがやってみるから、操作するとこ見ててね」

早速第1問が始まった。
文字の羅列を目で追いながら選択肢を確認する名前。

「…これだっ」

問題文が三行目に差し掛かった辺りで、彼女は画面に指を降ろすと効果音が聞こえ、紋章のようなエフェクトが選択した答えに浮き上がる。
そして、画面端の時間表示がゼロになると同時に大きな丸が現れてピンポン!と軽快な音が鳴った。

「なるほど…」
「ね、操作は簡単でしょ?」

これなら自分にもできるだろう…と飯田は首を縦に振った。
続いて2問目の問題文が出る。

「ふむ、これではないだろうか」

早くも正解がわかったのか、飯田が選択肢に触れる。

「くっ、しまった…」

ところがそれは問題文の引っ掛けで、“ですが”と表示された途端、やってしまった、と彼の顔が引き攣る。

「こんな感じにたまに引っ掛け問題もあるから気を付けてね」
「なるほど、本格的なクイズ形式だな。中々に難易度が高いな…」

そう呟いて前のめりになる彼を、名前は微笑ましく眺めるのだった。






「やぁ、苗字くん!」
「飯田くん…、思ったよりハマったね…」

あれ以来、飯田はすっかりクイズゲームなるものの虜になってしまった。
元より根が真面目な性格故、のめり込むととことん追求する。
真面目だなんて言ってしまえば聞こえはいいが、彼は…単純であった。

「苗字くん!このゲームは楽しいな!自分の知識を試せる上に深められる!」
「あぁ…うん。喜んでいただけたようで何よりだよ…」

今や名前よりもこの店の常連になってしまったとさ。