1話

「うん!今日も上手に出来た!」

毎朝、和菓子作りに励む美少女!わたしは近重 優弥。
食専・調理学部に通う生徒の一人だ。
わたしは和食、特に和菓子を得意の分野とし、毎朝菓子をせっせと作りそして其れをを朝食にする。
今日の献立は桜餅と柏餅。
皿の上に綺麗に盛り付けられた其れらは、高級和菓子店に並ぶ物と大差ない。
わたしはテーブルに腰掛け、手を顔の前に合わせる。さて、至福の時を…と餅を口元までもっていったところで、視界の端に壁掛け時計の針がチラついた。

「わあぁああ!また遅刻や!!」

菓子作りに没頭しすぎて一限逃すのは最早当たり前となっていた。
今日も例外では、ない。
今日のメニューはどちらも手のかかるものではないが、いろいろ拘ってしまったばかりにギリギリの時間になってしまった。
40秒で支度を済ませ柏餅を手に桜餅を口に勢いよく家を跳び出る。

「流石はわたし!今日も上出来だわ!」

桜餅を頬張りながら全力疾走する様は異様とも言えよう
道行く人々が何事かとこちらを見る。
桜餅を完食して次は右手にある柏餅に手を付けようと柏を引き剥がしながら走っていると、前方不注意で人にぶつかってしまった。

「あだだだ…。すみません柏餅に夢中で前見てませんでした。」

背中に激突したようで、目の前の男は腰を摩ってわたしを睨み付けていた。
なんとも目付きの悪いその男は着物を肩から羽織るようにしているが、その下にはわたしが通う学校の制服と同じものを身に付けているではないか。

「気ぃつけぇや、柏娘。」

そうとだけ吐き捨て去って行ってしまった男は、所謂ヤンキー…いや表現が古い。不良っぽい人だった。
あんな人同じ学年では見たことない。と言うことは先輩か…
…それにしてもだな…

「…なんであの人カニ咥えとん…」

−−−−−−−−−−−−−−−−

今朝そんな事があった為案の定一限に間に合わず(この際あのカニ男の所為にしようそうしよう)調理室にこっそり侵入する羽目になった。

「お前また遅刻かよ…」
「しー!うるさい森崎!榊先生にバレるじゃん」
「いや…どう足掻いてもバレるだろ…」
「全てはわたしが作った和菓子が美味いのが悪いのだよ。わたしって罪な女だわー…「ほぅ、遅刻をして尚且つ私語とは…随分余裕だな近重」

やばい…我が背後から禍々しいオーラを感じる…
振り返れば鬼のような形相、赤黒いオーラを纏う榊先生がいた。

「い、いやだなあ榊先生。違いますよぉ」
「…減点だ。」
「そんな殺生な〜!」

災難だ…、いや、厄日だ…
本当に減点する教師があるか。
ただでさえ和食以外はあまり成績良くないのに…
和食はいいんだぞ、ヘルシーで太りにくいんだ。
洋食はカロリー高いんだぞ。太るんだぞ。
…ちくちょう。

「ねー、森崎ー…そういえばさぁ、今日の朝変な人見たんだけどさー…」
「なんだよ。まさかそいつの所為で遅刻したって言うんじゃないだろーな」
「それもあるんだけどー…、うちと同じ制服着てたんだよー」
「へー」
「カニ咥えてた」
「!?!?!?お前それ雲居先輩じゃね!?!?!?」
「え、そんな有名な人なん…」

雲居…、くもい?
どっかで聞いた覚えがあるような…
頭を捻っていると青ーい顔した森崎がずいっと

「お前まさか雲居先輩に何かしたか!?」
「何かしたっていうかラブコメみたいに登校中ぶつかった…」
「お前…それ…、殺されるぞ!?」
「なんで!?」

どうやら森崎が言うにはカニ先輩は筋金入りの不良だそうで、彼に関わって生きて帰った者は居ないそうだ。なんだそのホラーは、マジやめろし。
現に今わたし生きてるし。

「でも、キレると怖いのはうちの学年にもいるじゃん。」
「守屋の事だろ!それとはまた別だっての!」
「えー…、よくわからないんだけど」
「いや、マジお前と関わるととばっちりくらいそうだわ寄るな!」
「は?ふざけんな森崎の分際で!」

腹立ったので、ごちんと脳天に拳骨をかましのしてやった。
しかし、何なんだ。そんなにヤバいのあの人。
まぁ、確かに怖い雰囲気の人だったけどそんな風に見えなかったというか…
というか世の中の不良って必ずグレる理由というものがあってだな。
決め付けは良くないんじゃないだろうか
…しかし、雲居…、聞き覚えがあるのは何故だろう。


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