奮闘記A
爆豪 勝己は、現在頭を抱えている。
「バクゴーカツキ〜、アタシ、ねこまんまが食べたい〜」
「なんで、ねこまんまだぁあああ!普通、魚とかだろうがああああ!!」
「なにをう!!ねこまんまは、画期的な猫飯にゃぞ!!」
「味噌汁に飯って、普通猫が食っちゃいけねぇもんだぞコラアアアア!!!」
顔を真っ赤にして激怒する爆豪。しかし、キレる所はそこではない。
完全に茶々と名乗ったこの猫のペースに嵌る爆豪。
それもそのはず、力尽くで追い出そうとしても軽やかな身のこなしで躱されてしまう上、自分の部屋で大規模な爆破は行えない。
何より、彼の前で我が物顔で寛ぐ猫女は、どうやら身寄りがないようで締め出す事も叶わない。
そう、根はいい奴なのだ…彼は。少々、怒りっぽいだけである。
「何かオンガエシ思い付いたかにゃ?」
「あ?」
「早く追い出したいなら、オンガエシ考えるにゃ」
今、現在心の底から願うことは、目の前にいる猫女がこの家から出ていく事なのだが…、当の本人はそんなの知った事か状態で別の“オンガエシ”の方法をせがむではないか。
強情なこの猫と関わって爆豪が知った事は、彼女の気の済むまで付き合ってやるしかない…という事。
爆豪は、身に覚えのない恩を返される事自体に違和感を感じていたのだが、いくら言っても相手が聞かない。お手上げ状態だった。
自室に猫を残し、キッチンに立つ爆豪は、律儀にも言われたものを用意していた。
(なんで、俺がこんな事してんだよ…)
お椀に装われたご飯の上に、味噌汁を掛ける。オマケに、削り節を振りかけてやったそれを手に自室へ戻った。
匂いに釣られて飛び付く茶々に一喝入れて座らせ、お椀とスプーンを与えるとはぐはぐ音を立てて食べだした。
「静かに食え行儀が悪い。」
「?…バクゴーカツキ、これ、味が薄いにゃ」
「あぁ?飯出して貰えるだけ有難いと思えクソ猫!!!」
「クソネコじゃなくて、茶々だにゃ!」
茶々は、頭が弱いのかはたまたマイペースなだけか、たまに爆豪と会話が噛み合わない時がある。
またそれが、爆豪のペースを面白いくらいに崩していった。
「ふぁ〜、おにゃかいっぱい」
そして、腹を満たすと、爆豪のベッドを占拠。
あっという間に、寝息を立てだした。
爆豪は、心底理解出来ないでいた。
まず、目の前でスヤスヤと寝息を立てる猫女の存在と、どうしてかそれを無理にでも追い出す気になれない自分を。
これは、立派な不法侵入だ。通報すれば一発でこの家から出て行かせる事が可能だ。
にも関わらず、通報する気にはなれないでいた。
(わけわかんねぇ…)
そして、爆豪の生活に茶々という存在が侵食していったのだ。
「バクゴーカツキ、今日もガッコー行くのかにゃ?」
「テメェは、変な事せずにじっとしてろ」
いいな!?と、念を押して学校へ行く。
茶々は、爆豪の部屋の窓から彼が学校へ行くのを確認すると、窓を開けて部屋を飛び出した。
そして、屋根から屋根へと飛び移り、彼が通う学校…雄英高校へ辿り着く。
「バクゴーカツキ何も言ってくれにゃいから、自分で調べるしかにゃい!」
そう彼女は、爆豪の通う学校に忍び込み、彼を良く知る友人などから情報を集めようと考えた。
「しかし、高い塀だにゃあ…」
どうやって侵入しようかと、辺りを見回す。
近くに高い木々が生えているのを確認すると、軽やかに跳ねて木から木へと飛び移る。
そうやって雄英の塀より高い木の枝に着地すると、そのまま塀を飛び越え学園内に侵入した。
「広いにゃぁ…」
授業が既に始まっているので、廊下には生徒一人見当たらない。
だだっ広い廊下をキョロキョロ見回しながら、探索する。
「確か、1-Aって言ってたかにゃ…」
爆豪からチラッと聞いた、クラス。
記憶を頼りに部屋を回り探していると、お目当ての教室を見付ける。
ガラリとその大きな扉を開けるも、今は外で授業を受けているのか誰も居ない。
「誰か帰ってくるのを待つかにゃ」
適当な椅子を引いて、席に腰掛けた。
教室の中から空を眺める。
ポカポカ暖かい日差しが眠気を誘った。
茶々は、そのまま机に突っ伏して目を閉じ、そのまま夢の中へ…
そして、どれくらい経っただろうか、廊下の外から微かに人の声が聞こえ、その音で目を覚ます。
頭から生えた耳をぴょこぴょこ動かし、より多くの音を捉えようと試みる。
何人かの声の中、爆豪の声を聞き付けてバッと顔を上げた。
「…あ?」
ガラッと乱暴に扉が開かれる。
教室に一番に入ってきたのはどうやら爆豪のようだった。
教室に、一人クラスの人間とは違う人物が席に座っているのを見て、爆豪は暫しフリーズする。
爆豪の後ろから切島が、入らないのか?と教室を覗き込もうとした瞬間、爆豪は停止していた思考をフル回転させて状況を理解。
そして、次に思った事は、この茶々という存在がクラスの面々にバレると色々と面倒だ…という結論。
が、しかし、後ろの切島が教室を覗いてしまった事により時すでに遅し。
「あれっ?女の子?」
「バクゴーカツキ!と、そのお友達かにゃ?」
「知り合い?」
後ろの切島が、不思議そうに爆豪を見る。
シラを切り通したい所ではあるが、かなり無理があるこの状況。
更に目の前の猫女は、空気を読むなんて事はしない。
「アタシ、バクゴーカツキにイノチを助けられた者なんですにゃっ!」
笑顔で高らかに宣言。
爆豪は、終わった…と、頭を抱えたのだった。