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「愛想笑いも出来ないの?」

「何その目」

「感情がないの?じゃあ痛くないよね?」

「本当に気持ち悪い」

「人形みたいだね、アンタ」



いつも行く自販機のぐんぐんヨーグルが売り切れで、誰がこんな所の自販機使うんだって場所にある所まで足を運んだら、いわゆるイジメと言うやつに遭遇してしまった。

しかも、いじめられているのはクラスメイトの女子だった。名前は、忘れたけど。なんだっけな、確か、てっかめん、とか呼ばれてたような。とにかく一切、主張とかしないやつ。


助けるべきなんだと思った。

けど、俺が何もしなかったのは、足を踏み出した時に目が合ったその女子が、来るなと俺を睨み付けたからだった。


初めてだった、アイツに、何か意志を持って伝えられたことが。だから何も出来なかった。

俺はバレないように方向転換して、校舎に戻った。結局ぐんぐんヨーグルは買えなかったが、なんか、走ってもないのに心臓が速い気がする。




「あーそれは恋じゃね?」

「こい?」

「そう、好きってやつ。」

「……え」

「そーかそーか、影山にもそう言う人が出来たかぁ」

「え、いや、あの」

「まあでもいじめは良くないよなぁ」

「はい。あの、それはそうなんスけど…え、恋してんスか、俺。」

「ちげーの?」



分からないことは誰かに聞こう。

そう思って菅原さんに聞いてみたら、なんか話が予想外の方向にどんどん進んで行った。恋とか、どう言うことだ。全然意味わかんねぇ。いや、意味はわかるけど、意味わかんねぇ。



「混乱してる影山おもしれー」

「おい、あんまり影山いじめんなよ」

「いじめてねぇよ、な!影山!」

「ハイ…いじめはもっと、嫌な感じでした」

「ん?」

「烏野でイジメとか初めて聞くべ」

「1年こえー…」

「何でお前がビビってんだよ」



菅原さんに、だけのつもりが気付けば3年生全員揃ってた。

まあ別に、聞かれて困る話でも、ねぇけど。



「まあとにかく、本人と話してみるのが1番じゃね?」

「な、何をですか…?」

「とりあえず、助けて欲しいかどうか?」

「でも…関わるなって」

「言われたわけじゃないだろ?」

「それはそうですけど」

「じゃあ一旦聞いてみるべ!」



バシッと背中を叩かれた。なかなかいてぇ。
けど気合い入った。やっぱりわかんねーことは、先輩に聞いてみるべきだ。



「菅原さんあざす」

「おうおう良いってことよ!」

「あ、なあ、その1年の子って、弓道部じゃないか?」

「さぁ…同じクラスですけど、あんま知らねっス。…あ、てっかまき?、とか呼ばれてたような」

「鉄火巻?寿司屋なのか?」

「…ああ!鉄仮面、じゃないか?」

「それっス」

「じゃあやっぱり弓道部の鈴木玲香さんじゃないかな」



鈴木玲香…そうだ。
確かなんかそんな名前だった様な気がする。

弓道部なのか。弓道って、弓のやつだよな?見たことねーけど…つか、なんで澤村さんが知ってるんだ?



「鈴木玲香…なんか聞いたことあるな」

「中学の後輩なんだが…出場した大会全て皆中だったらしい」

「かいちゅう…?むし、?」

「放った矢が全部、的に中ることだよ」

「? そんなにすげーことなんスか」

「んー…俺らで言うとなんだ?全部サービスエースってとこか?」

「近いかもな」

「…すげェ」



でも、そんなすげー奴が、なんであんな風にいじめられるんだ。

つい眉を顰めると、顔こえーよって笑われた。



「でもなんか…影山に似てるかもな」

「…? 顔似てますか?」

「違うよ」



澤村さんは呆れた様に笑ってそれ以上何も言ってくれなかったけど、とりあえず話してみようってそう思った。