「ヤマトくんのは友情の紋章」
「友情…」
「僕のは?」


 空はその問いに、優しく微笑んだ。


「タケルくんのは、希望の紋章よ」
「へえ!希望の紋章かー!」
「光子郎くんは知識の紋章。丈先輩のは誠実の紋章。ミミちゃんは、純真の紋章。栞は、――全ての、原点だって、聞こえた」
「原点?でも栞は紋章を持ってないぜ」


 未だ俯く空の横顔からは、ぼんやりとしか表情を読み取れなかった。そう、栞は紋章を持ってなどいない。原点と言っても、無い物では紋章は量ることなどできはしない。イヴモンに視線を送るが、彼はゆるゆると首を横に振った。つまりは知らないということだ。栞のことを何でも知っているイヴモンですら知らないことなのだ。他の誰も知る余地があるまい。
 再び空に視線を移すと、彼女は、一段と顔色を曇らせた。


「そして、私は、」


 言葉を区切り、前を見つめた。


「愛情の、紋章」


 今までの紋章全てが彼等にぴったりと思わせるものだった。そして、それは空も同様だ。彼女ほど愛に満ち溢れた存在はいない。太一は自然に笑顔になった。


「へえ、愛情だなんて空らしいじゃん!」
「そんなことない!!」


 鋭い瞳は太一へと向けられ、彼女は静かだった語調を荒げた。


「そんなの全然私らしくなんかない!!」
「だ、だってよ…」


 急な空の変貌に驚かざるを得ない太一は、少ししどろもどろになった。


「空はいつもみんなのこと考えて…」
「みんなのことなんてどうでもいいの!ほんとの…っ、ほんとの私のことなんか何にも知らないくせに、勝手に決め付けないでよっ!!」


 そこまで言い切り、空は我に返った。すぐに俯いて、「ごめんなさい…」小さく謝罪した。
 太一は目を丸くさせた。いつも直ぐに仲間のためを思って行動でき、明朗活発で、優しい空。愛情という紋章が存在するとして、空ほどその紋章が似合う人間もいない。第三者からの目から見て、よく分かる。そんな彼女は、自分のことを否定した。泣きたくなるくらい悲しい声は、更に自分を追い詰めるかのように言葉を放った。

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