「エ、エテモンだっ!逃げろ!」


 子供たちは急いで逃げたがしかし、お腹いっぱいのアグモンだけは鈍い動きで、あろうことか転んでしまった。「アグモン!」と子供たちが振り返った瞬間、小さな檻が栞たちを捕らえた。


「あっ!」

「ゴール!ホッホ、捕まえた、捕まえたー!」

「ワ、ワナだったのか!?」
「これで捕まえて閉じこめたつもりかいな?」

「待って、テントモン!」


 様々な情報が頭に入ってくる今、栞の頭の中にはこの檻に仕掛けられたもう一つの罠にも気付いていた。しかし声をかけたのが遅かったらしく、テントモンの身体は檻に仕掛けられた電気によって感電させられた。


「あーら、そんなことをするとケガするわよ!何故って?そのネットには高圧電流が流れてるんだからね!」


 エテモンはにんまりと嬉しそうに笑った。絶望的な状況を打破するためには、アグモンだけだと太一はすぐに考える。しかしどうすればアグモンは進化できる。


「本当はアチキが直接お相手してあげたいとこだけど…あいにく今遠いところにいるの…。ほら、スターって忙しい商売だから…」


 しおらしそうに顔を斜め下に向ける姿は、子供たちの焦燥感を募らせた。檻のネットには高圧電流が流れており、出ることも不可能。外にいるのはアグモンだけだが、お腹いっぱいで動きの鈍い彼に何が出来るのやら。…せめて、エテモンの気が子供たちを捕らえたことにより済めばいいのだが。淡い期待だけが、今の彼らを支えるものだった。だが次の瞬間に、その希望すらも打ち砕かれる。


「でも心配しないでね!代わりにスペシャルゲストに登場してもらうから!…フフフ、誰だと思う?」
「知るか、そんなこと!」
「きっと驚くわよ!」


 至極嬉しそうに一回転したエテモンは、陽気に歌を歌い始めた。そして高らかに指を鳴らす。パチン、という音が、やけに響き渡るのを感じた。


「くる、」


 栞はすぐにイヴモンを抱き寄せて、眉を寄せた。幾度となく体験した恐怖に、負けまいと必死に粘っているのも窺える。


「イエイイエイイエーイ!さあいらっしゃい、グレイモン!」
「グレイモン!?」


 ドゴォと壁を突き破ってきたのは、彼らが十分に見慣れた存在だった。グレイモン。オレンジ色の巨大な身体で壁を突き破り、獰猛なキバをむき出した口は低い雄叫びを上げている。


「フフ、驚いてくれたようね!うう、なんて心憎いアチキの演出…。さっ、始めるわよ!イッツ・ショータイム!」

「クソッ!」


 太一は焦り、一瞬にして栞を視界に捕らえる。
 守らなければいけない。力を手に入れた自分が何としても。
 約束したんだ。守るって。 俺が、守るって。


「アグモン、進化だ!!」


 握り拳を、空に掲げた。
 アグモンはその声に答える。様々なデータが彼の身体に降り注ぎ、彼もグレイモンへと進化した。本来ならば、どちらがどちらだか見分けが付かない。二つの巨大な身体がぶつかり合う。しかし彼らの目には、きちんと仲間のグレイモンの姿が見えていた。


「頑張れ、グレイモン!」
「偽物なんかに負けないで!」


 しかし応援の声も空しく、動きの鈍いグレイモンは地面に叩きつけられてしまった。その隙を狙って、一気に懐に攻め込んだのは偽物のグレイモンだった。

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