「オマエなんか怖くないぞ!!さあ、俺にかかってこい!!」
「まあカッコつけちゃって…」


 鋭いグレイモンの瞳が、太一を一瞥する。太一の頭上に、エテモンのあきれたような声が降りかかった。敵からしたら、このような馬鹿な者もそうそう見るものではない。サングラスに隠れた瞳を読み取ることはできないが、おそらく最後の一手を考え込んでいるのだろう。少しの間考え込んでいたエテモンは、ねっとりとした奇妙な笑みを向けた。


「いいわ。じゃあお望み通り…アンタからやっつけてあげるわ!」
「っ、八神くん…!」


 グレイモンの視線が、完璧に太一を射抜いた。太一は冷や汗が背中を伝うのを感じたが、おびえている暇などなかった。すぐに口を結び、きっとグレイモンを見上げた。
 危険をいち早く感じ取った空は、傍らでグレイモンを見ているピヨモンを見た。


「ピヨモン!!太一を助けて!!」
「お前もだ、ガブモン!」
「「分かった!」」

「ピヨモン進化!―――バードラモン!!」
「ガブモン進化!―――ガルルモン!!」


 進化を遂げた二匹は急いでグレイモンに向かった。もちろん、太一に無茶をさせないためだ。ガルルモンは太一を後ろへ下げようと、足で彼の体を押しやるが、太一は叫び続けた。


「俺はお前を信じてる!!進化するんだ!! …頼むよ、グレイモンっ!」


―――…解き放て、その力を。
(何も難しいことではない)
―――…お前の力は、闇の力。
(ちからを かいほう せよ)


 ドクン、と栞の心臓が大きく揺れる。目の前が、赤く染まった気がした。今までと違ったデータが頭に降り注ぎ、パンクしそうなほどの情報量が複雑に絡み合っている。
 どす黒いオレンジ色の光が、太一の紋章に反応した。

 栞は、闇が自分を支配していくのを、ただただ感じていた。


17/07/26 訂正
10/04/09 - 10/11/27 訂正


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