「これヲ、『守人化』とデもいウのカナ。栞ハ、段々と守人に近ヅいテきてル」
「…人間じゃ、なくなってしまうの?」
「元来に、戻ルだけサ」
「そんな…!!」

「それが守人…それが、栞なんだよ」

「……っ、」
「空。君は、栞のことを嫌わないであげてね。さっきみたいに、瞳が赤く輝き、性格が変わってしまうかもしれない。もしかしたら、もっと何かあるかもしれない。それでも、栞と、一緒にいてあげてね」


 懇願に満ちた、わが子を思う母親のような。 空は、イヴモンが、泣いているのかと思った。しかし実際彼は瞳から雫を零れているわけでも、声が震えているわけでもなかった。 泣いているのかと思ったのは、彼の姿が、あまりにも白すぎたからだ。


「…栞は、この世界で生まれ、この世界を守るためだけに生き続ける。この世界では、彼女の死が、デジタルワールドの滅亡だ」


 凛とした声が、静寂な廊下に響き渡った。
 その言葉はあまりにも残酷で、空は、頭を鈍器で殴られたような気分になった。泣きそうな顔をした空に、イヴモンは優しく微笑みかける。まるで、ありがとうとでもいうように。


「だから、栞を守らなきゃいけないんだ。見た通りの、頼りなくて、…優しい子だから」
「…ねえイヴモン。…あなたは栞のなんなの?」

「僕は、あの子を、命にかえても守る。…まだ、それしか言えない」


 それ以上は、空は追及できなかった。本当は何もかも聞くつもりですらいたというのに、そんなふうに切なそうな顔をされたら、何もきけなくなってしまう。空は帽子をとって、髪を耳にかけた。それから飛んでいるイヴモンをそっと捕まえると、自分の顔の高さとあう位置にイヴモンを連れてくると、小さく微笑んだ。その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。


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