「ピッコロモン…、私は」
「守人は守人だッピ。そして狩人は狩人だッピ。他の誰でもないッピ」
「…でも、私。まだ10歳だし、お兄ちゃんだっていなくなったときはまだ中学生だったよ。でもあの姿は…どう考えても中学生には見えなかった。それに!」
次から次へとあふれ出る疑問は止まらない。時空を超えた出会いは邂逅。もしかしたらアレは試練のために作り出された幻かもしれない。傍には誰もおらず自分しか見ていないのだから、自分の願望なのかもしれない。困惑する栞に、ピッコロモンはただ、真っ直ぐ彼女を見つめた。
「私たちが秩序である守人を違えることはないッピ。姿形は変わっても、守人の中にある光や闇は変えられないッピ」
「…私の、中にある?」
「今は分からなくても、時が流れれば自然と分かることだッピ。守人。これからつらいことが待ち受けているかもしれないッピ。それでもきみは、…デジタルワールドを守ることだけを考えてほしいッピ。たとえ誰か傷ついてしまったとしても、きみは、守るべきものを違えてはいけないッピ」
ピッコロモンの言葉は、栞には難しかったから、曖昧に溶け込むしかなかった。小さく首を傾げれば、ピッコロモンはまた大きな瞳をくるんと輝かせた。
「言いたいことはそれだけだッピ。これ以上きみに構うと、嫉妬深いイヴモンに怒られてしまうッピ」
「え…?」
「フゥン、よク分かっテるじゃナイ」
ひょこりとバッグの中から顔を出したイヴモンは、その眉がぐっと寄っていた。そんな顔あまり見たことのない栞は、ぱちぱちと数回瞬きをして、それから小さな笑みを浮かべた。
―――…私は守人だよ。すべてを、守るのが役目。
―――…お前の体が耐え切れるわけがない。いずれ、身を持って知ることになる。あいつらは、ただお前の力がほしいだけなんだ。
―――…それでも、それでも。守りたいと願うのは、いけないこと?
―――…っ!…俺、は。
―――…守るよ。私は、そのために、産み落とされた。そして、そのために、生きているんだから。
―――…そんなのッ、そんなのただの理屈だ!
―――…でも。
―――…お前が犠牲になって終わる世界を誰が望むんだ!アイツだって…やり方には同意できないが、お前を守る一身で!
―――…分かってる。優しい人は、怖いね。優しい人は、 美しいね。
―――…お前は、なぜ。
―――…私の役目を違うことはできない。私は守るもの。だから、すべてを許すの。
太陽が傾きを見せたころ、日が落ち、あたりが赤く染まる。最初は文句をダラダラ述べていた子供たちだったが、今ではにっこりと笑顔を浮かべ、ピッコロモンには敬意さえ示していた。その様子に笑みが浮かんだのは、おそらくはイヴモン一人だけだろう。
「本当にありがとうございました!」
太一が頭を下げて丁寧に礼を述べると、他の子供たちも習って頭を下げた。
「お世話になりました!」
「うむ。きみたちの修業はこれで終わったわけではないッピ。人生、すべて修業だッピ!負けずに頑張るッピ!」
「はいっ!」
元気よく返事をして、彼らは踵を返した。大変ではあったが、学んだことはそれ以上であったと彼ら自身よく理解したのだ。
「ピッコロモン」
「元気でガンバるッピ。それから気を付けるッピよ」
「…うん。ありがとう。ピッコロモンも、元気で」
「分かってるッピ」
最後に彼の体をふわりと包みこみ、栞は太一たちのあとを追った。彼らは一歩進んだところで、こちらを向いている。待っていてくれたのがよく分かった。笑みを浮かべ、彼らのもとへと追いつくと、空が腰に両手をあてて微笑んでいた。
「遅かったじゃない」
「ちょっと、最後のあいさつ。もういいよ、ごめんね」
「ああ、じゃあ行くか!」
「また砂漠の中歩くのね…」
「あの階段よりは数倍楽だよ」
彼らの笑い声が、森を抜け、砂漠の方へと消えていった。ピッコロモンは一人、そんな背中を見つめ、小さく呟いた。
「…この世界を救えるのは、君たちしかいないッピ。頑張れ、選ばれし子供たち、そして…再び平和の礎を…守人…」
17/07/26 訂正
10/05/27
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