一人だと寂しいなぁとか、よく言う子いるじゃない?あれ聞く度に大丈夫、あなたは一人じゃないよって心の中で返してる。だってほら、あなたの右足元に一人、肩に一人、胴回りに一人。三人もいるじゃないって。軽くハーレムじゃん。しかも胴回りにくっついてるのは相当あなたの事が好きみたい。離さない、絶対離さない、離れないってあなたの事を見上げてるし。
「ねぇ本当まじでやめて名前がいうとシャレになんない」
「シャレじゃないし、本当のことだし」
「それはそれで嫌だわー。つか突然話し出したと思ったらそれかよ」
本日は晴天なり。青空の下お昼ご飯をみんなで食べるのは最早習慣になりつつある。みんなっていっても原君と古橋君と山崎君なんだけど。
パンをかじりながらそういえばと思い出した事を世間話程度の気持ちで話したらドン引きされた、失礼な奴だ。何か面白い話ないのって聞いてきたのは原君なのに。
「どこが面白かったんだ?そもそもそんなものは見えない、居るわけがない」
「古橋君は本当に認めないよね、いるってば」
「いない」
「いる」
「いない」
「いる」
「いない」
「じゃあ今古橋君の隣に座ってるのは何なわけ?」
「!?い、いないと言っている。そんな陽動作戦は猫も食わないぞ」
「犬ね」
めっちゃ動揺してるじゃん。古橋君は肩をびくりと弾ませながら気を取り直したようにお弁当を開き頬張った。
「見えてるくせにー」
「見えない」
「じやあ何で右向いて食べてるの?」
「………そういう気分なんだ」
「ぶは!その言い訳は流石に苦しいっしょ!」
お腹を抱えて笑う原君をこれでもかというくらいハイライトの入らない目で睨む古橋君にはある種の恐怖を覚える。ちなみに右側は壁だ。
「でもよ、こんな晴天の真っ昼間から幽霊って出るもんなのか?」
黙々と食べていた山崎君か徐に口を開く。どうやら彼の中では幽霊=夜という認識があるのだろう。そんなことは断じてないのだけど、そもそも見えない人にはあまり関係ないのかもしれない。
「いるよー。ていうか常にそこにいるし。この屋上にだって割とちらほら」
「まじかよ!やべーじゃん!」
先程まで何食わぬ顔をしていたのに、今現在も普通に屋上にいる事を知った途端あわあわとしだした山崎君に思わず笑いが漏れる。まぁ特に山崎君はやっかいなタイプだし、危機感がるのは良い事です。自覚あるのかないのかはさて置き。
「大丈夫だよ」
「何が!?だってうようよしてんだろ!?」
「私が睨みきかせてるのに寄ってくるわけないじゃん」
「おー、名前カッコイイー!」
ヒュー!と原君が何やら囃し立てているがこれは本当のことだ。正直屋上にいるモノは山崎君が気になって気になって仕方ないです!ってくらいそわそわしながらちらちらと山崎君を見てる。山崎君が優しい心の持ち主ってことがありありと分かるんだけどこういうのは御免被りたいだろう。
「大丈夫、守ってあげるから」
「え…(ドキッ)」
「ザキまじでキモいから顔赤らめんのやめてくんない?まじでキモいから」
「あっ、赤くなんかなってねぇだろ!」
「なってるな、真っ赤だ真っ赤」
「古橋はさっきから壁しか見てねぇだろが!!」
山崎君のツッコミはいつでも冴え渡っている。確かに古橋君はもうずっと壁の方を見ているけど、正確には壁の方を向いているのであって目線はやや下だ。何故かって壁から思い切り顔だしてる方がいるからね。やっぱり見えてるだろ古橋君。
「まぁ何にせよ、自分でどうにも出来ないんじゃ助けてもらうしかないっしょ」
「どうせなら一緒に住んでほしい」
「それは花宮が許さないんじゃねぇか?」
「ていうか何も見えないしいないなら私いらなくない?」
「確かにー!」
「いや俺は単純に苗字と住みたいだけだ他意はない本当にない本当だ」
「古橋必死すぎww」
結論
一人で屋上にくるのはやめよう。