Our Sweet Family



薄々、気づいてはいた。

白衣の下に着ているブラウスが百貨店でよく見るブランドのものだとか、誕生日やクリスマスにくれるプレゼントがやけに高いものだったりとか。イギリスのニュース番組のベテランアナウンサーみたいなイントネーションも。



NASAきっての天才科学者ドクター・ゼノ……恋人のゼノ・ヒューストン・ウィングフィールドの実家は太いらしい。



――結婚した兄弟の家に遊びに行ったら高級住宅街で、近くにウィングフィールド邸があるのを見た――。



ジョージアンスタイルの、あれぞ古き良きアメリカを体現した家だと同僚は自分の兄弟の結婚相手について話していた時よりもずっと語気に熱をこめて言った。その姿を見ながら、自分の中の何かがしぼんで行く。



――今度、両親に君のことを紹介したい。



ベッドに入る前、ゼノがコーヒーの入ったマグカップを渡しながら言ってくれたあの言葉。あの時は、ゼノが私との未来を真剣に考えてくれているなんて舞い上がって、重ねられた手のひらの熱を愛しく思ったけれど。



実家が、太い。

古き良きアメリカを体現した家に住んでいる、良いとこのお嬢さん。

アメリカの未来を担う稀代の天才科学者。



そんなすごい人のパートナーが私で、本当に良いんだろうか。

片やアメリカになくてはならない優秀な女性。

一方は、アジアの島国の、敗戦国の田舎から出てきた大した才もない庶民の小娘。

今まで気にしたこともなかったけれど、ここに来て大変なことに気がついてしまった。



――私がゼノに恋をするのと、ゼノが私に恋をするのとでは重みが全然違うのだ。



平々凡々な田舎の家庭で、自然に囲まれてのびのび育った。ゼノを恋人として紹介したとき、お母さんは「あらあ、自由で今時ねえ」とゼノにケーキを勧めながらのんびりと言っていたし、お父さんは「こんな別嬪さんがナマエを……?」と不思議そうにしていた。お父さんにいたっては私に対してちょっと失礼な気もするけれど、二人ともゼノとの仲を否定してくるようなことはなかった。

だから、ゼノの両親もなんとなくそんな感じかな、なんて思っていたけれど……。

そんなわけ、なくない?

考えれば考えるほど、悪い予感ばかりこみ上げてくる。

うちの親の反応が良かったのは、同性愛がどうとかをすっ飛ばせるくらいゼノが人間として魅力的だったからじゃないのか。シルバーブロンドの艶やかな髪をなびかせた華のある美人で、おまけに天才的な科学の頭脳を持っていて、それでいて流暢な日本語を穏やかな声で話すから安心感がある。

うん。やっぱりどう考えても、うちの両親が肯定的だったのはゼノ自身がケチのつけどころのない魅力的な人間だったからだ。

それに対して、私は。

特段美人でもなく、必死に努力して入ったNASAは周りになんとかついていっている状態で、社会人になって渡米してから身に着けたスピーキングは日本人なまりが大いに残っている。

どう見ても今の自分に、「この子にならうちの大事な一人娘を任せられる!」と言って貰える要素がない。ご両親が将来ゼノそっくりのかわいくて優秀な孫が欲しいとか思っていたら、こんなちんちくりんのアジア人をパートナーとして紹介されたら泡を吹いて卒倒してしまうんじゃ……。

そしてこれは偏見だけれど、太い実家って古い伝統や常識がセットだ。うちみたいなしがらみなく伸び伸びとやってきた家と違って、ゼノのお父さんとお母さんはゼノが男の人と結婚して家庭を持つことを望んでいるんじゃないだろうか。

この心配を相談したら、きっとゼノは「そんなこと気にしないで」と優しいキスで安心させてくれる。



――でも、本当にそれでいいの?



考えれば考えるほど、良くない方に考えてしまう。勝手に心配事を見つけて、小さかったはずのそれをどんどん大きくしてしまうのは私の悪いクセだ。

……ちゃんと、分かってるのに。



「顔向けなんか、できないよ……」



今の気持ちのまま、ゼノの両親に顔を合わせるなんてできない。ゼノの親の前で、ゼノの隣にパートナーとして並んでいられるほど、自分って上等な人間じゃない。

あんなに楽しみだったはずのゼノの両親への挨拶が、どんどん憂鬱になってくる。もくもく、もくもくと窓の外の雨雲みたいに重たい灰色が渦を巻いて胸の中に広がっていく。

消さなければいけないはずの不安は、まだ全然消せそうになかった。







最近、ナマエの様子がおかしい。

認めたくはないが、率直に言って――僕を避けている。

いつもはこうしてホテルのディナーへ連れて来ると、「このお肉とってもジューシー!ソースも華やかな香りがする!高いワインが入ってるのかなあ?」と楽しそうなレポート付きで、見ているこちらが幸せになるほどおいしそうに食事をとるのに。



「ナマエ、食欲がないのかい?」

「え、あ……。ううん、」



運ばれてきた肉に一向に手を付けようとしないナマエへ声をかけると、ぼんやりと返事をしたナマエが緩慢な動作でナイフとフォークを握った。しかしやはり意識がどこか別のところに向いているらしく、握ったナイフはなかなか肉へと向かない。

食事だけじゃない。最近のナマエはずっとこうだ。ランチに誘っても「まだ仕事が……」などと理由をつけて断られる日が続いている。繁忙期ではないが、丁寧な仕事ぶりのナマエならそういうこともあるだろうと職場での違和感は見過ごしてきたが、家での彼女はもっとおかしい。熱心に見ていたはずの恋愛ドラマを見なくなった。何が面白いのかさっぱり分からないドラマだが、あれを見ているときのナマエは隣でぴとりと密着していても普段のように恥ずかしがったりしないで画面を見ていてくれるからいい。あのドラマを見なくなったせいで隣に座って膝や肩を少々くっつけただけでナマエは皿洗いが残ってるだの、アイロンがけがしたいだのと言いながらぴゅんとどこかへ消えて行ってしまう。

当然と言うべきか、この調子の彼女はベッドへ誘っても気乗りしない様子だ。

一体、何があったというのか。

ナマエと僕の仲を阻む不届者は何なのかと、様子がおかしくなる前後のことを考える。

二週間前の日曜日、両親に紹介したいと言った時のナマエはいつも通りだった。「ゼノのお父さんとお母さん、どんな人なんだろう?写真とかある?」と小さくはしゃぐナマエの愛らしさといったら……。動画を撮っていなかったことが悔やまれる。

あの時は普通だった。むしろ、彼女を正式な伴侶とするための煩雑な手続きの一つにすぎない両親との顔合わせなどという予定を喜んでくれていた。

ならば、その後か。NASAでナマエの周りの人員の配置が変わったり、新たなプロジェクトが始動したりといった変化は起きていない。邪魔な虫は随分と前にきっちりと排除してある。

職場がシロならネットの人間関係か。いや、それもシロだ。ナマエのSNSは気に入りのカフェやコスメ、ファッションをチェックする閲覧専用のものだ。特定の誰かとメッセージのやり取りはしていない。携帯のメッセージアプリも家族とたまにやり取りがあるだけで、僕意外の誰かと親密にしている気配はない。

ダイエット……にしてはきっかけが見当たらない。無駄な減量を促す有害な広告は遮断されるよう僕が設定しているし、ナマエの動画の視聴履歴にもダイエットに関わるようなものはなかった。

あと考えられるのは生理によるホルモンバランスの乱れくらいだが、ナマエの生理はあと一週間ほど先のことだし、食欲はむしろ増えるはずだ。



「ごめん、やっぱり食欲、ないかも……」

「謝る必要はないさ。きっと疲れているんだよ。早く家に帰って休もう」



答えにたどりつけないままでいると、ナマエがしょんぼりと眉を下げてカトラリーを元の位置に戻した。



「でも、ここ、高いのに……」

「君の体調の方が大事だよ。元気になったらまた来ればいい」



席を立ち、華奢な肩に薄手のストールをかけてやりながら言うと、ナマエはじっと床の方を見下ろして僕と視線を合わせてくれなくなってしまった。



「ナマエ、体調が優れないなら僕の肩に寄りかかるといい。家に帰ったら久々に君の好きなドラマでも……」

「ごめんなさい……」



僕の言葉なんか聞こえていないかのように、ナマエが唐突に謝罪を口にした。



「謝ることはないよ。さあ、今日はもう帰ろう」

「違うの!ゼノ、……ごめんなさい」



悲痛な声での謝罪とともに、ナマエがポロポロと涙を零した。



「私、ゼノのお父さんとお母さんに会えない……!」



嗚咽混じりの、悲鳴をなんとか絞り出したような細い声に胸が痛くなる。



「構わないよ。両親への挨拶なんてしなくても結婚はできるからね。むしろ必要な段階をショートカットできる分、結婚の日取りを早めることだってできる」

「できない……」

「うん?」

「ゼノと結婚なんてできないよっ!」

「なんだって?」



あり得ない言葉を聞き返すと、つい声のトーンを落としてしまったせいか、ナマエがビクリと肩を震わせた。僕を見上げる涙を湛えた瞳も怯える子ウサギのようだ。宥めすかして落ち着かせてやりたいが、そんな余裕は到底持てそうにない。



「随分と体調が悪いみたいだね。今日は家に帰らずにここへ泊まろうか」

「え……ゼノ、」



何か言いたげなナマエを無視して、ウエイターにチップを握らせてホテルへチェックインさせてくれと伝える。何度か利用しているのが功を奏してか、フロントのマネージャーらしい人物がすぐさまルームキーを手にして現れた。



「お客様、お部屋へご案内いたします」

「結構だ。彼女を早く休ませたいからキーだけ貰うよ」

「ゼノ、だめ。私、ゼノと一緒には泊まれない。私、帰――」

「君が帰るのは僕のもとだ。今日君が帰る家はこのホテルだよ、いいね?」

「……」



沈黙は肯定、という訳ではなさそうだ。不服そうな顔としぶしぶといった様子の重い足取りを見れば分かる。

……気に入らない。

両親に会いたくない?それは構わない。だが、彼女は冗談でも言ってはいけないことを口にした。この前は乗り気だったはずなのに、何故。

突如芽生えてしまったナマエの愚かな考えをじっくり正してやらないといけない。植え付けた犯人がいるのなら僕とナマエの人生に一生関わりを持たぬよう排除することも必要だ。

部屋のドアを開ける間さえ惜しくて、枷のように煩わしいブラウスのボウタイとヘアバレッタを心の急くまま外していった。





「それで、どういうつもりだい?」



今日はゼノがホテルのレストランに誘ってくれた。

ゼノのご両親に顔向けなんかできない。そう意識したあの日から、もともと周りについていくのに必死だった仕事はうまく行かないことが増えてしまって、ゼノの両親どころかゼノと顔を合わせるのさえいたたまれなくなってしまった。おかしな態度を取ってしまうせいで、私なんかより何倍も忙しいゼノに余計な気を遣わせてしまっている。それがとても申し訳なくて、なんだかもう海の泡になった人魚姫みたいに跡形もなく消えてしまいたかった。

それがどうしてこんなことに。

食事中にメソメソと情けなく泣き崩れて、ゼノを困らせたのは覚えている。怒った様子のゼノに有無を言わさず手を引かれて、あれよあれよとたどり着いたホテルのベッドで、気づけばこうして組み敷かれていた。



「ひどいじゃないか、ナマエ。ここへ来て心変わりなんて」



言いながら、ゼノがブラウスのボタンをぷちり、ぷちりと外していく。

日に当たらない青白い肌が柔らかなレースのキャミソールから覗き、銀糸を紡いだようなシルバーブロンドの髪が月明かりに煌めく。

まるで女神様みたい。

やっぱり、私とゼノじゃ全然違うんだ。このまま服をすべて脱いで行ったら、ゼノは俗世の無駄な装飾を全て取り払った銀の月の化身みたいな女神様になるけれど、服を取り払われた私はそんな綺麗な何かにはなれない。女神様のゼノと違って、私はずんぐりむっくりの容れ物に肉が詰まった、ありきたりでちっぽけな人間でしかない。



「ゼノにはその方が幸せなの」



ちんちくりんの身体が恥ずかしくてダンゴ虫みたいに丸まろうとすると、ゼノに腕を掴まれて、頭上にまとめられた手首が彼女の纏っていたブラウスのタイで手早く的確に縛られていった。

ゼノの知性を感じさせる眉が不快そうに歪む。

けど、私の言ってることが正しい。

ゼノの頭脳にアメリカ中が期待している。頭脳だけじゃない。ルックスだって誰もが憧れる眩しさで、人当たりだっていいんだから、知的で美しいアメリカ女性のシンボルとしてゼノという存在そのものが皆から期待されるはずだ。

ゼノの肩には皆の期待と明るい未来が乗っかっている。そんな彼女にとって、アジア人との同性愛なんてノイズにしかならない。

私がいないのが、ゼノの幸せ。ゼノのお父さんとお母さんだって、きっと内心ではそう思ってる。

私は、間違ってない。



「幸せ⋯⋯?愛する伴侶から理由も分からず拒絶されることの、何が幸福だと言うんだい?」

「……だって、そうなんだもん」



頭の中には理由がたくさん羅列しているのに、それを言葉にして伝えることがどうしてかうまくできなくて、ばかな子どもみたいな台詞が口から情けなく出て行った。

「ハア?」という心の声がありありと書かれたゼノの顔に、どうして分かってくれないの、と八つ当たりじみた気持ちが沸々と湧いてくる。

どうして。どうしてゼノは分かってくれないの。私の何倍も頭が良くて、私のことを好きって言ってくれたのに。なんで肝心なところだけ、私の気持ちを分かってくれないの。



「まったく幸福なんかじゃないね。君と永遠に共に暮らすことが僕の幸福だよ。分かるだろう?さあ、馬鹿な考えは捨てて僕と――」

「……そういうこと言ってるんじゃないもん」

「聞き分けがないな」



一生懸命に考えたことを馬鹿な考え呼ばわりされて思わず言い返すと、苛立たしそうに前髪をかき上げたゼノの右手が頬を撫で、首から鎖骨へのラインをなぞって、心臓の上へと触れた。



「同じ職場だというのに気のひとつも抜けないな。愚かな考えは誰に吹き込まれた?」

「愚かじゃない!自分でちゃんと考えてるよ……!」

「どうだか。君はすぐにドラマやCMの影響を受けるからね。無意識で衆愚の創作物の影響を受けているんじゃないか?」

「違う!本当に思ってることだもん……!」



心臓の上に置かれていたゼノの手が電流を浴びたみたいにビクリと大きく揺れ、一瞬ひどく驚いたようにダークブルーの瞳が見開かれた。



「は……。君は本心から、僕との結婚を拒否していると?」



ゼノの眉毛が苦しげに歪められ、皮肉っぽい微笑みを描こうとした唇の端がヒクリと引きつった。ゼノを傷つけてしまったことが分かって、ゼノの頬を撫でようと手が動く。



「あ、ゼノ⋯⋯、」

「答えるんだ」



白のタイに縛られたままの手をもぞもぞと動かす私に、ゼノが命令のような冷たい口調で言う。

そうだ。これが私とゼノとの正しい距離なんだ。眩しいほどの未来のために、ゼノのことを自由にしてあげないと。そこに私がいないとしても――。





「……そうだよ。私の、本心。ゼノとは、結婚できない」

「⋯⋯そうか」



クッと嗚咽を飲み込むように笑ったゼノが、いつもとは比べものにならない乱暴な手つきで私の服へ手をかけた。



「生憎、僕は君以外いないんだ。死ぬまで――いや、死んでも離すつもりはないよ」



拒まないと。

ゼノのために、ちゃんと嫌がらないと。

頭の中ではそう分かっているのに、だいすきな人の唇が降ってくるのをそのまま受け入れた。







「あれ?私⋯⋯」



気がつくと、いつものクイーンサイズのベッドの上で眠っていた。出した声がひどく掠れていて、思わず喉に手を当てる。次いで、こうなった原因をしっかりと思い出して脳みそに全身の血が集まってきたみたいに顔が熱くなってくる。



「ゼノ⋯⋯」



普段あんなに澄ました顔をして。

「科学実験以外のことには興味を持たない学生時代だったよ」なんて言って。

あんなに、えっちだったなんて――!



いや、普段スるときもえっちではあるけども。

なんかもう、とにかくすごかった。湿原の絶滅危惧種のヘビが種の存亡をかけてする最後のセックスみたいな⋯⋯。



「赤ちゃん、かぁ⋯⋯」



ゼノにあんなに熱く求められて、嬉しくないわけない。

けど、私たちが生涯のパートナーになってしまったら、ゼノのお父さんとお母さんにゼノの優秀な遺伝子を継ぐかわいい子は残してあげられなくなるのだ。

やっぱり、ちゃんとゼノとは別れるべきじゃ――。

そんなことを考えながらペタペタと真っ平らな自分のお腹に触れる。



「なるほど。様子がおかしいと思ったら子どもが欲しかったのかい?」

「ゼノ⋯⋯!」



朝陽にきらめく銀の髪をふわふわの真っ白なタオルで拭きながら、ガウンを纏ったゼノがベッドの縁へと腰をかける。



「ゼノの子どもが⋯⋯」



私のじゃなく、ゼノの子どもはいた方がゼノのご両親やアメリカや世界のためにいいんじゃないかと思う。なんて言えば伝わるのかよく分からず、モゴモゴと口籠っていくうち、なぜかゼノはパアッと表情を明るくした。



「なんだ、そうか。ああ⋯⋯!」



感極まった風のゼノに優しく抱きしめられ、宇宙猫顔になる。



「ええと、ゼノ⋯⋯?」

「僕の子を産みたいと、それで悩んでくれていたんだね⋯⋯!」



⋯⋯?

半分合っていて、半分とても合っていないような⋯⋯?

というか大事な問題がある。



「ゼノ、あのね。女の子同士だと赤ちゃんできないんだよ」

「ああ、これまでの科学ではね。だが、僕から取り出した卵子を体外受精させ、培養した胚を君の子宮に戻せば――君が僕の子どもを産むことは可能だよ」



確かに⋯⋯?

でも、――でも。



「普通に、家柄とか、才能とか、そういうのが釣り合う人と結婚して、そういう人と子どもを作った方がいいんじゃないの?」

「なぜ?」



あまりにもまっさらな瞳でそう聞かれ、やっぱりゼノと私は決定的に違うんだと思い知った。

ルックスも才能も家柄も持っているゼノに、そうじゃない人の気持ちなんて分からない。



「だって、ゼノと私じゃこんなに違う⋯⋯!私はゼノみたいに美人でも、天才でもない!ゼノのお父さんやお母さんをがっかりさせたくないよ⋯⋯!」



勝手に出てきた涙を隠そうとうつむきながら言うと、ゼノが安心させるように肩を抱く手を強くした。



「僕はあまり他人に興味を持たない人間でね。それは両親相手でも変わらない。僕たちが結ばれることを父や母がどう思うかは興味がないよ」

「ゼノの両親だけじゃないっ⋯⋯。アメリカ中がゼノに期待してる⋯⋯!ゼノの未来の足をひっぱりたくないよ⋯⋯」

「なるほど。僕のためにか。ナマエ、そう考えてくれる君なら大丈夫だよ。家柄や外見で僕と番おうとやってくるペニスつきたちはそんなことを考えず、平気で足を引っ張ってくるからね」



何か嫌なことを思い出したのか、ゼノが苦々しく眉をしかめた。何て言えばいいか分からずに彼女の横顔を見つめていると、男の人たちに文句を言っていた今までの顔がウソみたいに、ゼノが穏やかに微笑んだ。



「愛しているよ、ナマエ。僕の未来を考えてくれるなら、この先も僕と一緒にいてくれ。ペニスつきの衆愚から、ナイトのように僕を守ってほしいな」



けちょんけちょんに言われて男の人たちがちょっとかわいそう。

けれど、愛する人に一番に選んで貰えたのが嬉しくて、肩を抱いている手へおそるおそる自分の両手を重ねた。



「本当に⋯⋯私でいいの?」

「もちろん。抱く前も言っただろう?僕は君しかいないんだ。君以外考えられない」

「私も。ゼノを、あ、愛してる⋯⋯」



あらためてアイラブユーって言うと、日本人の私にはやっぱりちょっと恥ずかしい。縮こまりながら尻すぼみに言うと、ゼノは赤くなっていると指摘するみたいに耳へチュッと軽いキスをした。



「シャイなところも初々しくて可愛いね。昨晩はやりすぎて済まなかった。仕切り直させてくれ。とびきりやさしくする」

「うん!」

「君が僕の子どもを望んでくれていることも分かったしね」

「うん⋯⋯?」



それは、ちょっと違うかも。

とは思ったけれど、ゼノがあまりに幸せそうに、花のようにほほ笑んでいるので何かを言うのはやめておとなしくキスを受ける。

それに、今はゼノの勘違いだけど、ゼノの赤ちゃんなら産みたいと思い始めている自分がいる。

未来のことなんて、私にはもちろん、天才のゼノにだって分からないけれど、私たちならきっと大丈夫。

そんな愛と信頼をこめて、さっき言葉にできなかった分を乗せて私もゼノの唇へキスをした








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