ゆらゆらと。ときに激しく、ときに穏やかな波の揺れを感じながら、寝転がっているエーちゃんの上に乗っかる。ぐえ、なんて潰れたような声を出しながらも、エーちゃんはメルを振り払わない。胸に耳を当てると聞こえる、穏やかな鼓動が心地いい。
「ふん、ふふん」
「機嫌が良さそうだな、メル」
「まあねぇ」
耳を打つ穏やかな声が、だいすき。いつもは力強くて元気なエーちゃんの声も、メルとふたりだけのときは少しだけ違う。メルだけの、声。そのことに、元から良かった機嫌もさらに良くなる。なんなら、頬も緩みっぱなし。
「もうすぐ、新しい町だねぇ。なにがあるかなぁ」
「さぁな、あ、一緒に回るだろ?」
「うん、もちろんだよぉ」
ぐりぐりとすり寄ると、目を細めたエーちゃんの手が伸びてくる。他の人にされたら思いきり振り払うけれど、エーちゃんなら、別にいい。
予想通り、メルの長い前髪をあげて露になった顔。メルの顔は傷だらけで醜いのに、エーちゃんはこうやってたまに見たがるのだから、変わっている。しかもメルを見て、きれいだ、かわいいなんて言うの。
「ん、やっぱり綺麗だ」
にっと笑ったエーちゃんが顔を顔を寄せて、メルの鼻先にくちづける。小さく音を立てて離れていくエーちゃんの顔を見つめていれば、エーちゃんはメルの顔を見て思い切り吹き出した。伝わる振動に思わずむっとして睨めば、目に涙を浮かべながら笑っていた。
「なんだ、照れてるのか!」
「……エーちゃんのばぁか」
「わりぃって」
ぷくっと頬を膨らませてエーちゃんの上から降りようとすれば、エーちゃんは笑いながら腕を引っ張る。そのままもう一度、倒れこんだメルを受けとめる。ごろりと転がるものだから、メルまでおかしくなってきて、部屋にはふたり分の笑い声が響いた。ずっとずっと、ふたりで旅ができたらいいな。
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