▽風公
隠しきれない手脚の震えに、怯えを滲ませた双眸。いつだって逃げ出したいのを我慢して、目を逸らしたいのを我慢して、やっと立っているような女だった。あいつに慕われていることは理解している、そこに恋慕が混ざっていることも、とうに。突き放せないのは絆されたのか、それとも。
▽二碧
遠い昔に祭で見た、綿菓子のような奴だと思った。掴みにくくて、やっと掴めたと思ったらすぐ溶けて、消えていく。その割に甘ったるい味が、喉の奥にしっかりと残っているような。「…下がってろ」目元を片手で隠し、視界を遮る。その甘さも嫌いではないから、群がる害虫くらいは駆除してやってもいい。
▽諏訪赤
柔らかな繭に包まれている赤坂の、その繭が崩れるとき、酷く無防備な顔をすることを知っている。そりゃそうだ、誰だって神にはなれやしないのに。背負いきれない重責を、自分を切り捨ててまで進み続ける赤坂に、誰も言ってはやらなかったのか。「もう休んでもいいだろ、なあ、」
▽冬みど
エメラルドを溶かしたような瞳が、まあるく弧を描く瞬間が好きだ。ぽってりと熟れた唇が、に、と笑みを象る瞬間も堪らない。力強くトリガーを振るう姿も、敵をまっすぐに射抜く視線も。それから、俺だけが知っている柔らかな手つきも、声色も。「やっぱり、べっぴんさんだよなあ」
▽真田さんと和花
淡い花の香りがする女だった。出来ないことを嘆くよりも、出来ることを探した女の、その手の柔らかさを知っている。その微笑みの、甘やかさを知っている。勝手にも、手の届くところにいてくれれば大丈夫だと、慢心していた。「馬鹿な、女だ」優しさが彼女を殺すなど、誰が想像できた。
▽伊月さんと和花
伊月さん、と呼ぶ甘やかな声が好きだった。近くにはいなくてもインカム越しに聞こえる声、視覚を通してのアシストにどんな時でも安心することができた。つい半べそをかいていれば、大丈夫ですよ、と。差し出された温かく、柔らかなてのひらが無残に奪われた。「守って、あげたかったのに、なあ」
▽清美ちゃんと赤坂さん
力任せに振り下ろされた弧月を受け止めるべく身構えた一寸の後、鈍い音と共に衝撃が腕へと走り、踏み締めた両脚が耐えきれずにたたらを踏む。目前へと構えた弧月が嫌な音を立てるのを感じ、半ば強引にその場から飛び退けば、弧月の中央に薄く皹が入っているのが確認できた。使えないこともないけれど、これ以上戦闘が長引けば、不利になるのは確実にこちらである。普段の様子とはかけ離れた、無邪気ともとれる笑みを浮かべた千羽さんを真っ直ぐに見据える。「これだからパワータイプは嫌なんですよ、!」目眩しにアステロイドを打ちながら、短く地を蹴る。狙うはあなたの首ひとつ。
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140字まとめ2