キッチンに立ってううんと唸っていると、朝のジョギング後のシャワーを終えた竜胆がぽたぽたと水滴を垂らしながら近づいてきた。「どした?」と首を傾げる竜胆の首に掛かったタオルを持って、わしゃりと髪を拭きながら「あのね、」と見上げる。
「蘭ちゃん、朝ごはんが食べたいんだって」
「は?いつも食わねーのに?」
「うん、今日は食べたい気分だって言って、二度寝してる」
「だりぃ、てか起きんのかよ」
「だからね、昼食も兼ねられるもの作ろうかなって考えてたところ」
「あーね」
金色と水色の、ソフトクリームみたいな髪を水滴が垂れない程度に乾かして、タオルから手を離す。蘭ちゃんより少しだけ暗い色の瞳が、私を見下ろしていた。ううむ、今日もかっこいい。
裸の上半身にタオルだけかけて、緩いスウェットを穿いている竜胆が冷蔵庫を開いたところを、隣から覗き込む。ぎゅっと抱きついて、刺青が広がる腕に額を押しつける。お願いしなくても手伝ってくれそうな竜胆が、やっぱり好き。
「ね、竜胆」
「んー?」
「手伝ってくれる?」
「もち。ついでに俺もルイちゃんの朝メシ食いてぇし!」
「え、じゃあ竜胆のために作っちゃお。蘭ちゃんがついでだよ」
「うわ好き」
「私も好き〜」
蘭ちゃんは、竜胆と比べるとちょっぴり気分屋。普段は寝汚くて起きないから朝ごはんなんて食べないのに、突然食べたくなってお願いしてきたり。ご飯だけじゃなくて、なにか準備しといてって言われて準備したものを、言ったっけ?なんて忘れたりもする。
そのたびに私と竜胆は、蘭ちゃんの機嫌が悪くならないように頑張って考えているのに。なんて思うけれど、私たちは蘭ちゃんのことを嫌いにはなれなくて。だっていつだって、私たちを守ってきたのは蘭ちゃんだから。竜胆だって嫌いだ、なんて言うけど口だけ。
朝ごはんが食べたいなんて、ちょっとしたワガママも叶えようかなって思うくらいには、横暴で気分屋な蘭ちゃんのことが好き。竜胆はきっと、口が裂けても言わないと思うけど。きゅ、と口角を上げる。
それはそれとして。蘭ちゃんが満足いくような朝ごはんについて、私たちはこのあと頭を悩ませることになる。昨日の晩ごはんが和食だったから、和食はやめたほうがいいかな?
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悩む