蘭に連れ出されて、横浜の街をぶらりと歩く。目的はなにも聞かされていないけれど、デートをするような仲でもないし、ふたりとも暇なときは家に引きこもっていたいと思っている質だから、なにか仕事があるんだろうなーと思う。

「まだ歩くの?」
「んー、もうちょいだな」

30分くらいは歩き回ったと思う。ちょっと疲れたから帰りにケーキでも奢ってもらおうかな、なんて考えているとぐっと腰を抱かれる。蘭は長身だから「なに?」と言いながら見上げると、冷たい瞳と視線が重なった。なんで怒ってるの。

蘭の長い髪が、頬に触れて擽ったい。やたらと整っている顔が近づいてくる。他所から見たらキスをしていると勘違いされそうな距離で、耳許に薄い唇が触れた。そこで話すのやめてほしい。

「俺らの右後ろ、金髪でミニスカのオンナ」

文句を言ったところでやめる蘭でもないから、はいはい、と頷いてケータイを出す。インカメにして、ふたりの写真を撮っていると見せかけて蘭が示す人物を探す。金髪はひとりしかいなかったから、すぐに分かった。

「あ、見たことある」
「だれ」
「先月くらいに、蘭たちに喧嘩売ったひとのカノジョだよ、川崎の」
「なんか最近つけられてンだよなー、片付けてくんね?」
「ケーキ2個ね」
「竜胆に言っとくわ」
「蘭が買えし」
「ルイとデートついでに買わせたらよくね。どうせ1個はルイのだろ」

しっかりと女の子が写っている状態で写真を撮る。頼んだって言いながら、無駄にリップ音を鳴らすのやめてくれる?寄り添ったままの胸元に、頭をごんとぶつける。ちょっと呻いてて笑った。

せっかく顔も声も良いのに、囁かれるのはいつも物騒な内容ばかり。たまにはもっと良いこと、言ってくれたらいいのに。なんて、私たちらしくないよね。




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囁く