どうしても、欲しいものがあった。誰かに言ったら気持ち悪がられるであろうそれを、口に出したことは1度もないけれど。本当に、ほんとうに欲しかったのだ。
「いたっ」
「大丈夫です?」
「おー。紙で指切っただけだし」
「あー、それ地味に痛いやつです!」
「言うなっての」
そんなん言われたら痛くなってくるだろ、なんて顔をしかめる出水先輩に小さく吹き出す。
「げ、なあ弓月」
「はいです?」
「絆創膏持ってねえ?」
「ばんそこです?んーっと……持ってないです!」
「まじか。女なら持っとけよなー」
からかいまじりに笑う出水先輩の指先には、小さな赤い玉が出来ていた。ほんとうに小さなそれに、ごくりと喉が鳴るのがわかる。どうしよう、弓月、
「……出水先輩、手を貸してほしいです」
「ん?なんだよ」
不思議そうな表情で手を差し出す出水先輩に、弓月の歪んだ顔を見られる前に、手を掴んで血の滲んだ指先をぱくりとくわえる。口に広がる独特の味に、どうしようもなく泣きたくなった。――ください、ください。弓月は人間になりたいのです。
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ください、ください、それ