香弥と動くとき、わたしの役割は基本的にスナイパーになる。学校の近くにゲートを開けて現れたトリオン兵、バムスターに逃げたくなる気持ちを抑えて、数十メートル離れた狙撃位置に着く。視界の先では、香弥がスコーピオンを手にバムスターの相手をしていた。予定通りに進んでいるようで安心する。

「いくよ、香弥」
「いつでもどうぞっ」

集中力を高める。雑音が消えて、無音の世界に包まれる。体の大きなバムスターの動きを捉えることは容易く、次の動きを予測しながら照準を合わせていく。呼吸音すら煩わしくて息を止めれば、タイミングよく予定されていた場所にバムスターが誘い込まれた。

「……っ」

銃口から勢いよく放たれた弾丸が、バムスターの足を撃ち抜く。続けて二発目、三発目と撃ちこめば、バムスターはその巨体を地面に沈める。周囲は開けているから、建物や住人への被害はほとんどない。

「香弥!」
「はい、任せてください!」

力強さを含む香弥の声に小さく笑みを零しながら、バムスターに止めを刺そうとしている香弥のところへ向かう。まだ完全に倒していないから油断は禁物なのだけれど、こんなバムスター1匹、香弥なら大丈夫だと信じてるから。


「お疲れ、香弥」
「公ちゃん!公ちゃんもお疲れさまです」

怪我はないですか、と首を傾げている香弥に癒される。狙撃するためとはいえあれだけ離れていたし、香弥が動きを抑えてくれていたおかげでわたしへの攻撃なんてほとんどなかったのだから、わたしが怪我をする可能性なんてゼロに等しいのに。

「大丈夫。香弥は?」
「わたしはほら、トリオン体ですから」
「……あ」

トリオン体になっていたことを忘れていた。でも、怪我はないかと言い出したのは香弥で、わたしは釣られただけだから、なんて。言い訳するように口をもごもごとさせていたわたしを、香弥が微笑ましそうに見ていたなんて、視線をあちこちに漂わせていたわたしは気づかなかった。

「そろそろ戻りましょうか、公ちゃん。もうすぐ他の隊が来るでしょうから」
「ん。次の授業、なに?」
「公ちゃんの好きな、英語ですよ」
「!たのしみ」

良かったですね、と微笑む香弥に頷きながら実体へと戻る。少し離れたところから聞こえるチャイムの音に、香弥の手を引いてわたしは歩き出した。





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愛しき僕らの日常