いつも結い上げている髪は下ろして、私では出来ないような編み込みと一緒に可愛く結われている。紅鳶の髪を飾るのは柔らかな色合いで作られた花の飾り。
うんと丁寧にお化粧をして、みんなから合格点を貰ってから門に向かった。
小松田さんから手渡された入門表に名前を書く。私が書いた欄の上にも、くのたまの名前が何人か並んでいる。
「気をつけて、いってらっしゃい!」
「いってきます」
笑顔で送ってもらえるのが嬉しくて、自然と笑顔になる。門を通って外に出れば、すらりと差し出された手のひら。隣に視線をやると、結い上げた髪はいつもと変わらないのに随分と顔の印象が変わった望ちゃんがいた。
「わ、素敵!麗人って感じだね、望ちゃん」
「ありがとう。……髪型、いつもと違うんだね」
「ふふ、そうなの。みんながね、頑張ってくれて」
「ああ……、なるほどね、海さんによく似合ってる」
なんて、自然なめ言葉。片手を掬い取って、そのまま手を繋いで歩き出す望ちゃんに、私も足を動かす。
まだ学園を出たばかりなのに、役に入ってるなぁ。
今日の実技は2人1組で行動をして、片方は男装。
兄妹、恋人、夫婦。くじで引いた関係を装って、指定されたものを町に買いに行くこと。その際に、店主や周りの人間からその関係性を当てられたら合格というもの。
私たちが引いたのは、恋人だった。
「町についたらどこに行こうか」
「うーん……私たちならやっぱり髪飾りとか、紅とか、身につけられるものかなぁ」
「私はあまりその手の店に詳しくないけれど、海さん
は?」
「私もあんまり、かな。気の良い店主さんがいるお店、探さないとだね」
「客商売をしているなら、声をかけてくれるひとも多そうだね」
「そうだね!……ふふ、それにしても望ちゃん、似合ってるね」
そう?と首を傾げる望ちゃんを眺める。女性らしさを消すようにきりっと整えられた眉に、涼しげな日許。
体格も厚みを出すように変えられていて、男装だと分かっていても見惚れてしまう。
「……あ、だからみんな、あんなに頑張ってくれたのかなぁ」
「うん?なにが?」
「私が準備している間に望ちゃんの姿、みんなも見てたんだよね?」
「そうだね」
「望ちゃんの隣を歩いても大丈夫なように頑張ってくれたのかなぁ、と思って」
納得したと頷いている私の隣で、望ちゃんがおかしそうに肩を竦ませる。
「違うよ。海さんの隣を歩いても大丈夫なように、私のこれも整えられたんだから」
可愛いよ、と小さく笑って前を向く望ちゃんに、繋いでいないほうの手で胸を抑える。心臓がびっくりしている。男装って、すごいんだぁ......。
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花化粧の乙女たち