@WT/冬みど
「痛い?」「ぜーんぜん、何年経ってると思ってンの」普段は隠している右頬に触れる、かさついた手のひらに擦り寄る。傷跡があっても損なわれないと言ったのはあんたなんだから、そんな顔すんなっての。「ほら、こっち」頬に触れる手を掴んで引き寄せる。空いた手で背を抱いて、冬島さんを見上げた。

AWT/太刀川さんと赤坂さん
もっと、もっと戦えるはずなのに、いつしか活動限界が早くなっていて。トリオンを測っていなくても分かる、わたしの限界はここなんだって。「赤坂さぁ、」太刀川くんの首許に弧月を突きつける。その指先から罅が広がってトリオン体が保てない。唇を噛む。「…いわないで」弱いわたしなんて、要らない。

BWT/迅さんと赤坂さん
迅くんが暗躍をする未来にわたしはいるけれど、その隣にはいない。酷使し続けたトリオン器官はみんなよりも早く成長が止まった。「ねえ、迅くん」「なぁに」「この未来は、見えていましたか?」なんて、ずるい質問。迅くんの答えも知っているのに。「うん、見えてたよ」だって、あなたが一番望んでた。

CWT/小南と赤坂さん
「許さないから!」あの頃よりも伸びた髪が揺れて、でも変わらない瞳からぼろりと涙が溢れ出た。桐絵ちゃんに打たれた頬が、じんと痛む。「…ごめんなさい」「ずっと、追いかけてたの」腕を引かれて、抱き締められる。もう背丈があまり変わらないと実感して、力が抜けた。大きくなったね、桐絵ちゃん。

DWT/千羽さんと赤坂さん
「やあ、羽由ちゃん」戦闘時ばかり、ころりと表情が変わる千羽さん。いつだってあなたは、わたしに優しくはなかったけれど、それがとても嬉しかったんです。「最後にお相手、いただけますか?」あなたから学んだもの、わたしができること。すべてあなたに還して、一足先に散りたいと思うのです。

EWT/諏訪赤
諏訪さんが連れ去られそうになって、和花ちゃんは戻ってきて。ふたつの情報を同時に聞いた時、情けないけれどお手洗いに籠ることになった。碌に食べていないから胃液しか出なくて、喉が痛くて涙は出るし、目眩がする。おかしいね。わたしって、どうやって走り続けていたの。もう、立てない気がする。

FWT/諏訪赤
妹みたいなあの子に連れられて、諏訪さんの前に立つ。内戦で聞いていたキューブ型でもなくて、いつも通りの姿。指先を包むように握られて、伝わる体温に涙が出た。みんなが動揺しているから、止めなくちゃいけないのに。「心配かけて、悪かった」あなたはこんな時でも、わたしを年下の女の子と扱うの。

GWT/和花ちゃんと赤坂さん
まだ検査が残っているからと、ベッドに座る和花ちゃんの膝に頬を乗せる。「床、汚れるよ」ううん、と首を振る。4年前と変わらない、温かい手のひらが頭に触れる。いまも好きでいてくれていることを知って、胸が痛くなる。わたし、あなたを助けられなかったんです。ねえ、和花ちゃん。「怒ってないの」

HWT/加古さんと赤坂さん
「美味しい?」と聞くと必ず頷いてくれるあの子が、本当はとても弱いことを知っていた。お茶碗よりも小さな小皿に掬った炒飯を、それでもお腹いっぱいと笑う羽由は可愛いのにどこか歪で。「望ちゃん?」口端についた米粒を拭う。照れたようにはにかむ、あなたをもっと知りたい。「また、作るわね」

IWT/諏訪赤
諏訪さんに加わった点数を指先でなぞる。わたしはもう遠征には行けなくて、行けたとしても『行かない』を選ぶけれど。「きっとあなたは、彼らのために行くのでしょうね」未成年ばかりの隊員を思う。わたしのような人間にすら優しいあなたが、遠征に行く彼らを見送る姿が想像できなかった。




表紙 / top


81〜90