仄かに紅く、妖しく光る瞳から目を逸らすことができない。どこか霧がかったようにはっきりとしないまま、目の前で薄らと微笑む彼を見つめていると、その薄い唇がゆっくりと動く。
「うみ、」
名前を呼ばれて、その声に操られるように腕を差し出す。勘右衛門は海の手をとり、口許へと手首を寄せる。勘右衛門の赤い舌が、海の白い手首を濡らす。その艶やかな光景に目が離せないでいると、手首に舌を這わせている勘右衛門と目があった。――どくり、身体中の血が沸騰しているような、そんな感覚に襲われる。身体中が、焼けるようにあつい。まともな思考なんて出来る筈もなく、震える膝では身体を支えきれず、彼のほうへと身体を預けてしまう。勘右衛門は微かに笑みを浮かべ、その鋭く尖った牙を、華奢な手首へと突き刺した。
「……っあ、かんちゃ、ん、」
熱に浮かされているような、平衡感覚を失うような。なんとも言えない感覚が海を襲う。手首に開いた傷から流れ出る血を、勘右衛門が啜り、舐め取っていく。口内に含みきれない血が、床に斑点を作った。
どれくらい、そうしていただろうか。勘右衛門が海の手首からそっと口を離した。貧血と、身体中を襲ったあのなんとも言えない感覚のせいで揺れる頭。重い瞼を抉じ開けながら勘右衛門を見上げれば、勘右衛門はその視線に気づきゆるりと笑みを浮かべる。
その瞬間酷い眠気に襲われて、ただでさえ重かった瞼が自然と閉じてゆく。狭くなっていく視界で最後に見たのは、勘右衛門のどこか悲しげな笑み。
「かん、ちゃ……っ、」
「……ごめんね、海。ごちそうさま」
私は、そんな言葉なんて望んでないのに。いつもこうして言葉を奪うなんて、ひどいよ。伝わらない気持ちに、閉じられた瞼から一筋、涙が流れた。