ぴり、とした刺すような気配。いつもは上手に隠しているのに、今日は何かあったのだろうか。無言で近づいてくる勘ちゃんに、少し不安になる。無表情の勘ちゃんを怖いと思うことはないけれど、どうすればいいのかわからないのだ。

「勘ちゃん?どうしたの……?」

手を伸ばせば届くような距離。俯き気味に立ち止まった勘ちゃんの手に、そっと触れる。勘ちゃんの手は、驚くほどに熱かった。下から覗き込むようにして勘ちゃんの顔を見ると、少しだけ申し訳なさそうな顔をして、

「ごめんね、」

と、口を動かした。なんのことかと尋ねようとしたけれど、次の瞬間には私は勘ちゃんの腕の中にいた。頭を掻き抱くように引き寄せて、半ば強引に唇を奪われる。小さく開いた唇から入ってきた熱に口内を蹂躙されて、背に甘い痺れが走る。飲み切れなかった唾液が、顎を伝った。

「ん、んん…っ」

息苦しさに、涙がにじむ。常とは異なる黒色の衣をぎゅっと握って耐えていると、音を立てて唇が離れていく。親指で目尻に溜まった涙を拭われて、少しだけはっきりとした視界で目に入ったのは、熱を孕んだ勘ちゃんの瞳。いくらか開いた体の隙間に、私に逃げ道を与えてくれていることがわかって、どくりと胸が疼く。こんなときだって、勘ちゃんは私のことを優先する。本当は自分も苦しいのに。

「ね、だいじょうぶだよ」

隙間を埋めるように、強く抱きつく。このまま私の想いが伝わればいいのに、なんて思いながら。おずおずと背に回された腕が愛しい。
任務を終えた勘ちゃんがこうなることは滅多にないけれど、今回が初めてのことではない。だから、この後私がどうなるのかも薄らと理解していた。私を傷つけてしまうかもしれないと勘ちゃんは恐れているようだけれど、私だって鍛えているのだから心配しなくていいのに。ゆっくりと体の力を抜いた私を支えるように、腕の力が強まった。

「ずっと一緒にいて、」
「…貴方が望むのなら、喜んで」

嬉しそうに笑う勘ちゃんに、自然と頬が緩む。私、勘ちゃんになら食べられたって構わないんだよ。なんて言ったら、貴方は悲しむのかな。解けていく帯を見ながら、そっと目を閉じた。