【城田 はる】


そう検索をすると、ありもしない噂や誹謗中傷が溢れかえっている世界が広がる。勿論、私を応援、肯定してくれる投稿もあるのだが、マイナスな事が書かれている投稿の方が自然と目に止まってしまうのは人間の性なのだろう。


この世界に入ったばかりの頃は、何処の誰が投稿したかもわからない、たった140字未満の私そのものを否定する言葉に涙を流した日々もあった。


が、毎日毎日自分の名前を検索する日々を繰り返すうちに、顔も知らぬ誰かの言葉に涙を流す事もなくなった。慣れとは怖いものである。



「私のこと、何も知らないくせに」



会ったことすら無い私のことを、"熱心"に呟くこの人たちは、よっぽどの暇人なんだろう。そんな事を思いながら、赤ワインの入ったグラスを片手に深夜にわざわざエゴサをしている私も同類だ。



「ねぇ、見て。"城田はるキモい。二度と自担と関わるな。消えてほしい"だって」



そう言いながら、私の隣でソファに腰掛けてスマホをいじっている男に、特徴的なキャラクターがアイコンにされているアカウントの呟きを見せる。



「ずっと携帯いじってると思ったら、またエゴサかよ。つーか、そのアイコン絶対俺のファンじゃん」

「翔太くんと私、相思相愛なのにね。ファンの教育しっかりしてよ」



すっかり空になった赤ワインのボトルとグラスを片付けるためにソファから立ち上がる私に「相思相愛ってか、お前の愛が重いだけだろ」と笑いながら毒づく男。



「はぁ?ムカつく。早く寝ろ」

「てか、毎度毎度、お前の家泊まるたびソファーに寝るのキツいから、そろそろ布団かベット用意してくんね?」

「図々しいにも程がある」

「あと明日10時に起こして」



人の家をホテル代わりに使う自己中心的な男の言葉は無視して1人寝室に向かった。

戻る