日当たり不調な窓際の特等席に私を座らせて、湧さんが楽しそうに発明品を説明してくれる。私がソファーの肘掛に頬杖をついても、首の角度が怪しくなっていっても、大きなあくびをしたって、視線が合うと湧さんはニコッと笑みを浮かべる。
「湧さん、楽しそう」
思っていたことが、自然と口からこぼれ落ちた。それほど大きな声ではなかったのだが、二人きりの室内ではきちんと湧さんに届いたようだ。それまでの説明を止めて、私のことをじっと見つめる。
「あなたが、俺のお話をきいてくれるので」
「私より、時任さんの方が熱心に聞いてくれそうですけれど……。そんなに発明品とか機械の知識もなくて、説明してくれるのが申し訳ないです」
「もしかして、その、……ガジェットとかお好きではなかったのですか」
私が好きなこと前提で話をしていたことに驚きつつ、でも思い返して見れば納得出来ることばかりであり、何が湧さんを勘違いさせてしまったのか疑問が浮かぶ。湧さんは手にしていた掃除機型の発明品をそっと床に置いて、困り顔で私の隣に腰掛ける。
「俺、勘違いしてましたね」
目に見えて落ち込まれると、少し困る。機嫌を直して欲しくて、湧さんの顔を覗き込む。
「湧さん」
「……はい」
「機械のことは分からないけど、湧さんが楽しそうにしているところを見るのは好きです」
困り顔のまま、今度は顔が真っ赤に染まる。
「名前サン、ええと」
「湧さんの居るラボに来ると、ホッとするんです。時任さんの見張りもないし、大葉くんがうるさくないし、湧さんはニコニコしてお茶を入れてくれて、私はフニャフニャになっちゃいます」
「フニャフニャ、……ネコサンみたいですね」
「ニャン」
「えっ、名前サン……?」
「湧さん、今日はいろんな表情をしますね」
「それは名前サンのせいですよお……」
ついからかい過ぎてしまい、湧さんに顔を逸らされる。こちらから見える頬が煤で汚れていたので、ポケットからティッシュをとりだして拭いてあげると、面白いぐらいに湧さんが反応する。
「俺のこと、からかわないでください……。名前サン、そうやって俺に優しくすると、あとで痛い目にあいますよ」
「どんな?」
「どんなって、……例えば、お、俺が名前さんのことを、……好きになっちゃう、とか……」
「まだ好きにはなってくれないんですか」
「ええっ……!? あの、そういう言い方、まるで」
まるで、の続きを待つ私は、今すごくずるい顔をしているのだろう。