触れられれば触れられる程、身体が芯まで火照っていく。恥ずかしいことが恥ずかしいことでなくなっていく、交錯して、錯乱して、どんどんわからなくなっていく。

内側を蝕まれながらも、幸せそうに微睡むお姫様の最後など、私は知らない。

気付けば、乳首の痛みが快感にすり替わり腰から身震いしていた。どうやら、据え膳よろしく、大人しく屈する私の姿は精市の気を良くしたらしい。彼は一旦手を止めると、姿勢を低くして上下する私の左胸の膨らみにそっと頬を押し当て、まるでガラス細工でも扱うように指の腹で愛おしげに胸の曲線をなぞる。

「あぁ…つい、虐めてごめんね、名前。愛してるよ。全て俺のものだ」
「せ、精市…あっ、んっ」
「…鼓動が早いね。可愛い…叶うなら君の心臓に鎖を施したいくらい…、…ん」

彼は陶酔したような虚ろな瞳で低く囁いた。赤く腫れ上がった先端はぴんと自己主張していて、突起を口に含んだ精市は、唾液を乗せた舌で360度念入りに絡め取る。飴と鞭で扱かれた身体は、後戻りの出来ないナニかになっていく。例え鞭打たれたとしても、飴の旨味を覚えてしまえばそこにはただの期待しか残らないのだから。

下半身のむず痒さにネグリジェの下に隠れた太腿を擦り合わせながら、精市のいやらしい舌使いにか細い喘ぎ声を上げていたけれど、暫く傍観していた周助が遂に動いた。

「…名前ちゃんって、痛そうにする顔も可愛いんだね」
「ふ、ふぇ…?」
「ほら、僕、彼みたいにサディスト紛いの酷いことするの好きじゃないから。だって、ね?好きな子には、できるだけ優しくしてあげたいじゃない」

周助は言いながら私の片腕を軽々持ち上げると、半分万歳の体勢になった腋の下にちゅ、と軽く口付け、脇腹、骨盤へと形の良い唇を滑らせていく。見ている此方がぞっとするくらい完璧で不敵な微笑を浮かべ、彼は更に続けた。

「でも、痛そうな顔も可愛かったから、僕もレディファーストはやめていいかな?」
「不二、俺がレディファーストまるでしてないみたいな言い方やめてくれないかい?ん?」

口許を引き攣らせる精市がすかさず食って掛かるけれど、そんな言葉は一先ず置いておく周助は、私の脱ぎ掛けのネグリジェを爪先まで一気に引きずり下ろす。室内は決して寒くない適温だけれど、一瞬にして外気に晒された全身がぞわりと鳥肌立った。何より下着を着けていなかったものだから、下の大事な部分も彼らには丸見えで反射的に脚を閉じて隠してしまう。そんな私の小さな仕草に目を細めた周助は、意味ありげに笑いながら小首を傾げた。

「あれ?名前ちゃん、隠しちゃうの?」

円を描く手付きで優しく、固く閉じられた膝を上から撫でながら言う。どうして、あまりに自然な声色に当たり前が逆におかしい錯覚に陥ってくる。もしかして、もじもじする方が本当は恥ずかしいのかもしれないと、落ち着かない心で先程から周助の顔をまともに見られないのだ。カアァと耳まで顔を赤くしつつ、ついつい伏せ目がちに口籠った。

「だ、だって、周助…っこんなの恥ずかしいから、だ、だめ」
「そう、でもね、『こんなの』って何がかなぁ。僕が見ること?触れること?それとも…」

そうして、するりと私の尻にまで掌を滑らせると、ぐいっと尻肉を力任せに鷲掴む。

「君が、こうして感じてしまうこと…?」
「…っぁああっ…!!や、だめぇ…!ひっく…んむ、んっ、ふ…」

周助の端整な見た目からは想像し難い男の握力に、ドクンと心臓が跳ね上がったと同時に腰が浮く。一瞬、緩んだ膝の隙間を彼は見逃さなかった。空いた片方の手を素早く差し込むと、そのまま膝を掴んで左右に股を開かせ、強引にベッドに張り付ける。反動でギシリと揺れるベッド上、秘部を丸々晒して硬直したのはほんの数秒の事で、たちまち迫り来る羞恥心に生理的な涙が一気に溢れ出てきた。

濡れた瞳からはらはらと零れ落ちる熱い水滴が、頬を伝い、真っさらなシーツに染み入る。そんな私の姿にハッとして息を呑んだ周助が、咄嗟に私の唇に口付けた。不安を取り除くように角度を変えて何度も愛され、上塗りされていく優しい温もりに安堵する。ちゅ、と軽めのリップ音を立てて離れた唇と唇の間に名残惜しい銀の糸を引きながら、彼は心配そうに此方を見つめては、端整な顔を歪めて傷心気味に口にした。

「ん、驚かせてごめんね。…お願いだから、泣かないで…心から愛しているよ、名前ちゃん。泣かないで」
「ん、ん、しゅうすけ」
「ごめんね。どうか、優しくさせて」

乱れた私の髪を慰めに撫でながら、透き通る声で紡ぐ姿は正しく王子様そのもので、涙も忘れてキラキラの世界に見惚れてしまう。目尻に残った涙の跡を親指で一拭いされれば、きっと王子様の素敵な魔法に掛けられるんだ。……それから彼の掌が太腿の内側をやんわりと摩り始めるけれど、羞じらいこそあれど、少しずつ、自らはしたなく脚を開いていく。そこに性器の露出を阻むものは何も無い。やがて私の身体を弄る彼の手が私の一番敏感な部分に触れる頃、前戯もまだ十分でないそこはびっしょりと愛液で湿っていた。

周助はスーツの前ボタンを外し、下のワイシャツの襟元を緩めながらふっと微笑する。試しに人差し指の先でつぅと下から上に膣口をなぞると、滴る蜜が彼の指に纏わりつき質量を持って乗っかった。微かな刺激に物足りぬ、感じ易い下半身がその先を望み出して緩々と円を描き始め、浮かされるような熱に絹肌がじっとり汗を掻いてくる。あぁ、早くもっとソコに触れて欲しい。

未だ、腕を組んで此方の様子をふてぶてしく伺う精市に向けて、周助は指先にべっとり付着した蜜を見せながら言った。

「見て、幸村。名前ちゃん僕に濡れてるよ」
「は?…だから喧嘩売ってるのかい…?名前は俺に濡れてるだけだから。ていうかそろそろ退いてくれないかな、不二」
「えぇ?いやだ」
「嫌だって君ね…、最初に、するならボクは二人でもいいとかなんとか言ってなかった?ねぇ」

またもや不毛な争いを始めてバチバチと火花を散らす二人は、どうやっても私のことを譲れないらしい。私は、二人のことが好きなのに…いけないことかもしれないけれど…それに火照る身体は、先程から彼等二人のことをずっと待っているのだ。そんな想いで思い切って口を開いたけれど、予想以上に身体が解されていたらしく呂律が上手く回らない上に、変な吐息交じりになってしまった。

「あっ、ん…二人とも、けんかしないでぇ…わたし、二人とも大好きだから……っん、だから、…はぅ」
『……!』
「おねが……っふぁああん!」

言い掛けた瞬間、ぐちゅり!と卑猥な音を立てて周助の中指と人差し指、薬指の三本が膣奥に挿入され、今度は精市にぐっと唇を塞がれる。精市は私の顎に手を遣り固定すると、薄っすらと鋭い瞳を開きながら舌を忍ばせ深く口付けてきた。

彼は私のほんの一瞬も見逃さないつもりなのか、着ている黒スーツのボタンを上から徐に外す間も彼が目の前の少女から目を逸らすことはない。それが何処となく、一方的で圧倒的監視下に置かれているような主従関係を思わせるから、飼われる側の背筋にゾクリと興奮がはしる。下の方では周助がぐちゅぐちゅと指でピストンを続け、内壁を擦られる快感に声を上げたいけれど精市の口付けがそれを許さない。


end.