※軍服幸村(+軍服不二)です


"そこの道ゆくお嬢さん。
こちらを、落としましたよ。"

「…え?」
「だから…あの時、薄茶色の髪をした青軍服の変な男に声を掛けられていただろ?…許せない、俺は君を許せていない…君に言い寄ったあの男が俺は心底嫌いだ。何故なら誰より君を愛してる、から…だから」

どうしてしまったんだ。言葉は存外紡ぎ難く、おかしい程に胸が騒めいている。焦りと不安で、もうずっと俺のもののはずの唇をそうなんだと確かめるように、強引に貪るしか出来ない。

「…っ頼むから、俺の傍にいてくれ…」

取り乱した己の姿を省みる余裕も失い、ただただ、君を俺だけのものにしたかった。

こんな時代だ。軍上層部から下される命は絶対で、受けるか受けないか個々の是非など問われてはいない。国への忠誠心が強い程に着実に、非道に、掌を汚していくのは軍人の常だ。日常的に携える鉛と鉄の重みに慣れ過ぎていた。真っ当と謳われる人間味を忘れかける中で、けれど、いつだって君は俺の全てだった。
午前に一仕事終え、たまの午後休暇に君が喜ぶだろうと(いや、君を喜ばせたい一心で)二人で流行りの街に赴いたのが馬鹿だったのだ。行き交う無数の雑踏の中、俺の大切な名前は、あの男と出会ってしまった。ただの一瞬の事実がどうしてこんなにも後悔甚だしく、けれど後に戻れない。

街の賑わいに紛れた名前が俺の視界から消えた数秒の間、その男は、君の落とした髪飾りを拾って手渡した。薄茶の髪色をした見知らぬ青年で、配属は不明だが確かに軍の制服を着ている。名前を呼ばれて振り向く彼女の足下に滑らかに傅き、なんとも信用ならない微笑を浮かべて俺の名前に近付いた。

「綺麗な髪飾りだね…人通りが多いから落し物には気を付けて」
「あ、ありがとうございます」
「ねぇ、ところで、今日は護衛付きなのかな。ほら彼、向こうで僕達に気付いてる。今にも僕を撃ち抜こうとしてる…くすくす、君のことが余程大事なのか。こんな人集りで発砲したら面倒になるだけなのにね?それはそれで面白いけど…また会おうね」

遠目でもわかる馴れ馴れしい青軍服の男に一触即発で殺気立ち、人混みを壁にしながら、懐に忍ばせた拳銃を硬く握り締めた瞬間だった。名前に髪飾りを渡し終えた青年は、驚くべき観察眼で俺の姿を真っ先に捉え、此方に探るような視線を送ってきたのだ。男にしては長い睫毛の下で瞬きする瞳は、良く見なくても俺と同類のそれだったから、思わず引き金にかけた人差し指を緩める。

あれは目的のために、犠牲を省みない人間の目だ。

「あの男のあの目、何か、確信をもって君に近付いたとしか思えない」
「せ、精市。きっと考え過ぎだよ。落し物を拾ってくださった、親切な方だったよ?」
「…ハッ、名前は優しいからね…」

不貞腐れた声色で答えながら、ギシリとベッドのスプリングを鳴らして彼女を組み敷く。俺は仕事着の軍服のまま、君は外行きの洋装のままシーツの上でおもむろに絡み合う。冬の夕暮れは早く、まるで荒涼たる俺の心境を体現するように、空は真夜中のように静けさと深い闇に覆われカラスの鳴き声が響き渡る。あぁ、誰にも阻まれない密閉空間で君を愛する準備は出来ているはずなのに、拭いきれない猜疑心に引きずられて気持ちが落ち着かない。

安寧を求めるように目の前の色白い頬の輪郭をなぞり、目尻を親指で撫でながら、ふと目を細めて呟いたのはまるで自分への戒めのような台詞だった。

「その優しさが仇とならないよう、俺が君を守らなければ…、…」
「…ん…!」
「他は全て敵だ…君だけを愛してる」

息つく間もない程に濃密な口付けを施しつつ、吐息交じりにそう囁いた。同時に、内心では自嘲する。君を守るだなんて体良くそんな気持ちでは済まされないことを知っていた。それは一線を画する、いや、範疇を超えた、まさしく君を"愛する"欲そのものなのだ。こんな劣情に背筋を震わせたのは恐れからか興奮からか、後者なら最悪だとごくりと乾いた喉を鳴らす。
そして潤すように、君の口内の唾を舌で絡め取って飲み込んだ。暖かくしている室内で早々と名前の衣類を脱がせた俺は己も着崩し胸元を開いて、露わになった柔らかな乳房を掌の中で優しく揉みしだく。次第に力が抜けて行く彼女を俯瞰するのは楽しい。時折その小さな口からか細い声が上がる度に、名前を奪おうとする全てに対し優越感を得、ぎらつく雄の瞳で見下ろした。早く君の中に入りたい。

乳首を口に含んで咥内で転がすとびくりと名前の身体が震えた。顔を赤くする彼女を上目に観察しながら甘噛みしたり、乳輪に沿って舌を這わすと君の表情が蕩け始める。晴れやかな日差しの下で笑った顔も大好きだけど、薄暗闇の中で油断し切った可愛い顔も大好きだ。

はぁ、と熱い吐息を柔肌に吹きかけ、胸から下半身にかけてゆっくりと唇を滑らせていく。薄っすら浮き出る肋骨を指先で撫でながら、へそを辿り、更にその先へ向かう俺の動きに気付いたのか、名前は慌てて恥ずかしそうに両足を閉じるから、俺は一度顔を上げると確信犯的にほくそ笑んで彼女に問い掛ける。

「…名前?どうしたんだい?」
「やっ…こ、これ以上は」
「これ以上…?これ以上って何かな」

片手で太腿を掴むと、軽く力を入れて足を開かせちゅ、と内股に口付けた。

「君のこのドロドロに濡れてる可愛いところを舐めさせて欲しいんだけど、そういうこと?」
「…っ…せ、精市いじわるです…!」
「いじわるにしてるからね」

低く笑って更に開脚させると、足の間に身体を割り込ませて君の動きを封じる。桃色の割れ目から重みのある透明の液体が流れ出、尻へと伝う様を眺めながら体勢を低くする途中、名前はいやいやするように足の爪先をぱたぱたと動かしていた。拒み切れていないか弱い動きに愛おしさを増しながら、太腿に少しだけ指を食い込ませて固定し中心に顔を埋める。そうして愛液を舐めとる程度に陰唇を舌先で舐め上げると、名前はびくりと大きく腰を震わせて大人しくなった。

膣肉に唇を押し当てて食んだりクリトリスを鼻先で弄ったり、暫く目に見える部分を執拗に愛撫していると、奥からどんどん甘い蜜が溢れ出てくる。舐められるのが余程気持ちいいのか、立てていた膝を完全にベッドにつけて脱力している彼女は、舌がいいところを責める度に切なげな嬌声を上げていた。唾液をたっぷり舌に絡ませて入り口の浅い部分をちろちろと舌先で擽ぐると、一際高い声で鳴く。

「はあぁあんっ…!」

じゅぷ…

舌先を尖らせてずぷずぷと名前の奥に入り込み、縦横無尽に動かして膣壁を蹂躙する。まるで触手のように這い出たそれに犯される感覚は日常生活では決して味わうことのできない体験で、限界まで伸ばされて奥を探り続ける舌先の柔らかな感触と、入り口で密着してひたすら吸い付いてくる唇に彼女は涙を浮かべよがっていた。腰を浮かせ、俺の舌の動きに合わせながら腰を緩やかに振り奥へ奥へと導く。小刻みな舌先の動きで膣肉をぬるぬると擦り上げ中をほぐし侵食していく。

「あっひぁっ、せ、精市、ひ、きもひぃ…っあうっ」
「淫乱だね…あぁ…名前、最高に可愛い、んっ…!」
「おっあっ、ひあぁぁあ…!!」

呂律の回らない幼な声で喘ぐ名前に目を細め、ぐっとより深くまで舌を差し込んだ瞬間、ビクンビクンと全身を痙攣させて彼女は頂点に達した。

絶頂の余韻でぐったりと倒れ込む名前の上でおもむろに身体を起こすと、もう俺の肉棒ははち切れんばかりに膨張していた。ズボンから取り出し太く血管の浮き出た赤黒いそれを軽く右手で扱きながら、汗に濡れた名前の前髪を掻き上げ、壊れ物でも扱うかのようにそっと額に口付ける。長い睫毛の先に涙の水滴が付いているのを軽く指で拭ってやりながら、今すぐ君に挿入したい高まりを微々たる理性で抑えつつ、出来る限り優しく声を掛けた。

「…名前、気持ちよかった?大丈夫かい?」
「はぁ…はぁ…うん…精市」

話づらそうに息を整えながらも、此方に微笑む彼女と目が合った。

「大好き…」
「…っ…俺も愛してるよ。君が考える以上に、笑えるほど、愛してる…」

胸を締め付けられる思いだった。君の瞳はどこまでも澄んでいて、青空のように綺麗だ。愛故に愛す、そんな瞳だ。そこに嫉妬や我儘の邪(よこしま)さをすぐ抱えてしまう俺とは根本的に違うのだと、紡ぐ言葉は躊躇われるけど、傍に居たいと願ってしまう。

「名前…」

くらりと熱い吐息を一つ、達したばかりの膣口に、先走りの汁が滲んだ亀頭をあてがう。

生温い愛液が絡んでくちゅりと鳴る水滴音に思わず不敵な笑みを浮かべながら、君の両の膝裏を抱えて前のめりの姿勢になった。ドクンドクンと脈打つペニスを睾丸から先端にかけて膣口に擦り付け、どろりと透明の蜜を纏わせた様はなかなかに醜怪で君に直視させたくない。充分に塗りたくると、ぐ、と腰に力を込めて入り口から、ゆっくりと膣肉を抉り名前の中へ挿入していく。膣壁が肉棒を圧迫して窮屈な程気持ち良く、激しく前後運動したい衝動に駆られそうになりながら、彼女の負担にならないように慎重に奥へと進む。処女を奪ってから何度セックスしても初々しい反応を見せてくれる名前は、ぎゅっと硬く目を瞑り緊張に身体を強張らせるものだから、その度に俺は身体の至るところに口付けて宥めるのだ。

「痛くないかい?力を抜いて…」
「んっ、は、お、おっきぃ…」
「…っ、もうすぐ一番奥に届くからね…いい子だ」

無自覚に煽られて余計に下半身に血が集中する。子宮口に亀頭が当たり最奥へ辿り着くと、快楽を求めて緩やかに動き始めた。膣の中の柔らかなヒダに肉塊を擦り付けている内に、次第に快感が止められなくなってくる。じわりと己の額に滲む汗を鬱陶しいと片手で雑に拭いながら、目下、シーツをぐっと握り締めて衝撃に耐える名前をより近くに感じたいと更に深く君に覆い被さった。下半身の運動を止めずに時折、揺れる乳房の中心を噛み付くようにむしゃぶれば、中が締まり俺の射精を大胆に促してくる。

じゅぷじゅぷ…!

「はっ、あぁん!あっ、らめ、そこはぁ…っ!」
「そこは?何?ふふっ…、はぁっ…」

愛液と精液の混じった生々しい匂いと音が立ち込める中、呼吸を乱しながら身体を揺らして激しく快楽を貪り合う。官能的な彼女の姿に興奮して、睾丸が震え、今にも頂点に上り詰めそうだ。名前の腰が大きく震え絶頂に達するその瞬間を逃さず、獲物を狩る目でぺろりと舌舐めずりする。そして射精寸前のペニスを思い切り奥に突っ込み、子宮口を抉りながら一滴残らず中に精液を吐き出した。びくんびくんと雄々しくそそり立つそれが打ち震える。

「あっあっ、はあぁああんっ!!」
「…っくぁ…!」

互いに身体を強張らせ、恍惚と快美を共有した後、ほぐれた膣口からずぷりと肉棒を引き抜くと悍ましい量の穢れた白濁が滴り落ちた。

迎え入れた名前は力尽きたのか、既に深い眠りに落ちている。四肢を投げ出し安心しきって横たわる君を起こさないよう、物音立てずに身体を起こした。

再び静寂を取り戻した部屋の中で一人、俺は暫くの間、君の寝顔をただただ、見つめていた。


end.