※リクエスト頂いたネタです


私の通う立海大附属中学校は、その名の通り街を介してその先に水平線まで海を眺望出来る自慢の立地をしている。校舎からは木々を隔てて見えない場所にベンチが幾つか置かれていて、少し小高い位置から生徒達が海を一望しながらくつろげるような小粋なスポットも用意されている。しかしながら、比較的休憩時間の長いはずの昼休みでさえ足を運ぶには気後れする程に校舎から遠過ぎるという理由、そもそも校舎からその場所が見えないので知名度も意外と低いという理由で、生徒達の利用頻度は限りなくゼロに近い。学校から定期的なメンテナンスが入るため錆びれたり汚れたりはしていないし、取り残されてしまった折角の絶景が勿体無いと思う。まさに知る人ぞ知る秘密の花園といったところか。

「…暑い…」

真っ赤な夕焼けの空が目に眩しい、そんな夏の日のだった。そう呟いて、芝生の上に置いた温いペットボトルをおもむろに手に取りこくりと水を口に含む。

全国制覇に向けて厳しい鍛錬を怠らない立海大男子テニス部は今日も気迫を纏って放課後の練習に明け暮れる。滲み出る汗が程良く筋肉質な全身をびっしょりと濡らし、肌をギラギラと光らせてコート上に滴り落ちる。絶対王者が自ら課した絶対勝利の掟は、草試合でさえ敗北を決して許さない。私はコートから少し離れた木陰で一人体育座りをして、ぼんやりと彼らの練習風景を見学していた。

…そうだった…普段からは想像つかないものの彼らは根っからの体育会系の人達だったのだ…クラスメイトでありテニス部部長の幸村精市にたまには一緒に帰りたいと誘われたので(本当は毎日私と帰りたいらしいのだけれど、自分の部活のせいで私を遅くまで待たせるのは嫌みたい)こくりと頷いて帰り支度をして、それからずっとテニス部の練習を此処で見守っている。正レギュラー陣は精市関係で見知った顔ぶれの面子だ。見ていて飽きないし、いつもと違った一面を垣間見たようで少しドキドキする。激しく動かす身体、あ、精市ヘアバンドを取って額の汗をぐいぐいと腕で拭ってる。テニスに真っ正面から向き合う逞しい肉体、筋肉とか、乱れた息を飲み込む喉仏とか…性別の壁をひしひしと感じさせる。私は精市に、力では絶対に敵わないのだ。そしていつも学校で背後霊の如く私を追いかけ回している人と同一人物とはまるで思えない(真顔)。正レギュラー陣は相変わらずの女生徒からの高い人気を博しているようで、コートフェンスをぐるりと一周囲んだ大勢の女の子達が今も黄色い声援を彼らに送っている。それにしても、暑いなぁ。夕暮れ時とはいえ風も一切無く蒸し返すような嫌な暑さだ。じわりと制服のブラウスに汗が滲み、太腿につぅと汗が伝う感触が気持ち悪い。

「はぅ…」

もじもじと足を擦り合わせて、ぱたぱたと手で胸元を仰いだ。はぁ、身体が、熱いな…なんて困り顔で頬を赤らめていたら、コートの中で精市が思いっきり丸井くんと切原くんにボールをぶつけた挙句いきなり二人を地面に突っ伏させた。い、いきなり何怒ってるのかな精市…真田くんが慌てて止めに入ってるけど。不思議に思って目をぱちくりさせていると、ガシャンとフェンスの扉を勢い良く開けた精市が物凄く不機嫌な様子で早足に此方へ向かってくる。そうして芝生に手を突いて思わず後退りする私の前に彼はあっという間に立ちはだかると、肩に羽織ったジャージをふわりと揺らしながら強めの口調でこう言った。

「来て。」
「ふぇっ!?えっ、あ、せぇいち、練習は」
「休憩。とにかくおいで、言いたいことがある」

次いで、がしっと腕を掴まれ強引に立ち上がらされた。部活の途中で力のコントロールが効かないのだろうか、いつもより数段強い力で乱暴に身体を引かれて驚く。普段から彼が私に触れる時に手加減してくれていた事を今更知り、そうして今の加減の無さに戸惑いながらも慌てて傍に置いた鞄を手に取った。無理矢理手を引っ張られながらよろよろと精市の後に続く。ううん、続かざる得ない。

「あの、手、痛いっ…」
「うるさい」

え、ええ…!?

ちらほらと下校する生徒達の間を縫って歩く立海ジャージ姿の精市はとにかく目立つのだ、何人もの女の子がキャーなんて嬉しそうに精市に振り返るけれど依然彼の厳しい表情が和らぐことは無い。そうこうしている内に私達はいつの間にか人気の無い場所に辿り着いていた。そう、此処は夕焼けに輝く海が自分の手中に収まる、秘密の花園。

精市にベンチに荒々しく押し倒された拍子に手に持つ鞄がドサリと地面に放り出され土埃が舞う。只でさえ狭いスペースに追い打ちを掛けるかの如く片膝を突かれて、身動きが全く取れない上に先の衝撃で痛む背中に私は眉を顰めた。

「ッ…!」
「お前さ、なんて格好で俺たちの練習見学してるワケ?」

前屈みになった精市の顔がどんどん近付き、視界が彼の瞳によって阻まれた。

「…っ…ふ…」

ちゅ、と軽いリップ音を立てて、柔らかな感触が角度を変えて何度も私の唇を甘く啄ばまれる。私を手っ取り早く宥めるにはこれは最高だ、そうなるように精市とのセックスで徹底的に教え込まれている。どうしよう、みるみる身体が、弛緩していく…唇を解放された途端ふいっと反射的に精市から顔を背けると、彼は目下羞恥心に震える私を蔑むような瞳で一瞥した。そうして吐き捨てるように言う。

「下着見えてたよ。可愛い白のレースだね、うちのレギュラー陣に見せ付けて楽しいの?」
「なっ…ち、ちが、離…!」
「お前のド変態っぷりには凄くイライラさせられるよ…汗で濡れてるようだったけど、それって違う汗なんじゃないのかい?淫乱だものね?俺の可愛い名前チャンは…」

そう耳元で低く囁きながら私の制服のブラウスを上から一つずつ外して行くからひぅ、とか細く息を吸ってを顔を青褪めた。下着?さっきの体育座りの時の…!既に練習で汗に塗れた彼の肌が私の頬に擦れてしっとりと表面を濡らす。鼻につく汗の匂い、ジャージに、ユニフォームに染み付いた精市の泥臭い匂いにくらりとする。

「…ッ…」

精市はいつも清潔でいい匂いがするけれど、今日に限ってはそんな事はない。彼自身の匂い、雄の、鼻につくような匂い…そんなものまで興奮剤となるように彼により徹底的に仕込まれた自分に自己嫌悪するし、今は、雰囲気に呑まれてはいけないと失いかけた理性をきゅうと拳を握り締めた。何時、誰が私達を見つけてしまうのか…否、もしかしたら既に見えないところから誰かに見られているかもしれない。血の気の引くようなシチュエーションに身を捩るけれど、狭いベンチの上では互いの身体を擦り合わせるだけに留まった。精市は私の乳房を下着越しに無遠慮に揉みしだきながら、冷ややかな嘲笑を形の良い口元に浮かべる。

「誘ってるのかい?悪い子だね」
「やっ…こ、こんなとこで」
「はぁ、今すぐお仕置きしなければいけないな。他の男共にパンツ見せ付けた挙句、俺の事まで誘って外でも構わず興奮して…お前みたいな節操のない淫乱はどうしてくれようか…」
「せ、せぇいち…んっ」
「挿れられたいんだろ?いつもみたいに…」

めちゃくちゃに、ココに。なんて呟いてスカートの中に手を滑り込ませる。ごつごつとした汗に湿った手が太腿を這う感触にゾクリと鳥肌立ち、ああ、その瞬間、脳裏に蘇るのは精市との激しいセックス。雌の欲求を十二分に満たす死ぬほどの快楽。彼に組み敷かれたら、その後は従順に…後に待つ咽び泣くほどの快感を知ってしまえば欲しくて欲しくて堪らなくなる。

つぷ、と彼の指が下着をずらして膣に侵入するのを、擦り切れんばかりの理性と身体を蝕む性欲の狭間で受け入れた。


end.