「ちょっ…や、待って精市」
「待っていたらいつまでも綺麗にならないだろ…ん…」
「んん…ッ!」

泡立ったボディソープを全身に纏った私の身体を精市の掌が厭らしく弄り、犯していく。身体洗ってあげるよなんてどうにも怪しいとは思ったのだ、完璧過ぎる笑顔は時に異常な程胡散臭いわけで、けれど彼のそういうスイッチが入ってしまえばもう止まらない。精市が私の背後に座って熱い吐息を零すのを肩越しに聞きながら、目の前の壁に設置された鏡にありありと私たちの情事が映し出されるのを黙って見つめていた。というか、抗い切れぬのだ。そういう風に精市に仕込まれているし、私に対して欲情する彼を否定するのは今となっては難しい。いきなり胸の突起をきつく摘ままれてぴくんと身体を跳ねさせると、精市は興奮した様子で濡れた私の首筋にねっとりと舌を這わせ、不敵に笑う。

「嫌がらないね?流石に俺に抱かれ慣れてきたかな」
「んっ…ち、が…あんっ」
「ふふ、どんな名前も愛してるけれど…そうだな、従順なのは俺の好みだ」

す、と身体を擦り合わせるように抱き締めながら下半身に伸ばされた片手は私の茂みを探る。敏感な部分に指の腹が触れた瞬間、ゾクリと下半身から背筋に這い上がるような性の欲求に自分でも驚いて口を半開いた。精市はすかさず空いた唇の隙間からもう片方の手の中指と人差し指を滑り込ませると、唾液を指の付け根まで絡ませ指先で柔らかな舌を弄ぶ。息がしづらいし、微かに石鹸の味がする。苦しげに眉根を寄せて身を捩れば、首筋を舐める彼の舌触りが徐々に背中に回り、ちゅちゅと鈍い痛みを伴うようになったので多分、私の背中は彼のモノの印で赤く染まり始めているのだろう。

くちゅりと粘着質な音を立てて彼の指が二本、膣の奥へと探り探り侵入してくる。迫り来る快楽に生理的に逃げ場を求めて、縋るようにちゅうと咥内の指にきつく吸い付きながら目尻にじんわりと熱い涙を浮かべた。

「濡れてるね?お湯じゃないよね、これ。トロトロしてるし」
「んっ…んっ」
「それに厭らしい匂いもする…感じてるのかい?綺麗にするはずが、こんなに汚して悪い子だね…」

内壁を爪で引っ掻きながらとめどない愛液を掻き出す、私を知り尽くした巧みな指遣いにひゅう、と息を呑む。

煽るような言葉の数々にたちまち視界が涙で歪み、弾けた雫が頬を伝い落ちた。蒸気でむわりとした締め切られた室内は自分でもわかるほどに雌の匂いが立ち込めていて、羞恥心に比例した物欲しさに己の浅ましさを知る。性欲に毒された成れの果てに、精市が待つということ。

「あっ、はぁっ…あん、は…!」
「ん、…そろそろかな」

鏡に映る精市は、鏡に映る私のあられもない姿に満足げに目を細め、暫し、互いに鏡の中で見つめ合う。ぐちゅぐちゅと下半身の指の抜き差しを止めないまま精市は私の頬に一度軽くキスすると、そう呟いてから咥内と膣の両方から指を一気に引き抜いて私をバスマットの上に組み敷いた。泡に塗れた私の身体を上から一瞥し、緩やかにお湯の注ぎ出るシャワーで首元から優しく洗い流して行く。気持ち良いけど、そうじゃない。無意識に腰が浮き円を描くのを彼はにんまりとして見下ろしながら、蛇口を捻りシャワーの勢いを最大にすると、何の前触れもなく噴射口を私の秘部にぐりぐりと押し当てた。クリトリスから陰唇全体にかけて温かくも激しい水流が刺激する快感に、目の前で閃光が走るようだ。喉の奥から掠れた悲鳴を上げる。

「…ッひあああああ!!あっあっ!それだめっ、せぇいち!!」
「なんでだい、綺麗にしないと…ああ、もしかしてコレで感じてるのかい?フッ!なんて節操のない身体なんだろうね」
「ああああああ…ッ!き、もちい…ッ」
「まあ、そうしたのは俺なんだけど…そうか、気持ちいい?素直な子には美味しいご褒美が必要か…」

熱に浮かされたような声色でうっとりと精市はそう告げると、カラン!と音を立てて出しっ放しのシャワーを床に放り投げてから私の唇を強引に奪った。夢中で舌を絡ませて私の唾液を啜り上げながら、そそり立つペニスの先端を秘部の入り口に押し当てぬちゃりと愛液を馴染ませる。もっと、もっと、早く私の奥深くに。どうやら私の扇情的な瞳が内心物語っていたらしく、随分淫乱なんだね、なんて精市は余裕の無さそうな顔で吐き捨てるように笑って、ずちゅり!と一息で奥まで挿入した。

「ひあああああん!!」
「…ッ…ほんと、いつ挿れてもキツイな、名前…ッ」

腰を大きくスライドさせてカリまで引き抜き根元まで打ち付ける動作を繰り返せば、ずちゅ、ずちゅと風呂場に相応しくない水滴音と肌のぶつかり合う音がタイルの壁に反響する。精市に与えられる快楽に恍惚としながら、とろんと瞼をヒクつかせ夢見心地で彼の姿だけを視界に捉えた。美しい紺色の髪の毛の先から滴り落ちる水滴が私の頬へ、頬を伝い落ちてそしてバスマットへ。

次第にペースを増すピストンは内壁を強く抉り、いつしかバイブレーションの如く小刻みにペニスで奥ばかり突かれてガクガクと身体を揺さぶられる。

「あっあっあっ!せぇいちっあっ!はやっしゅごぉっ」
「ん…君の中、温かくてさっきから俺を離さないよ…ッ搾り取られそうだ、俺の精液全部…そんなに欲しい?」
「ん、んぅ!!」

ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ

私が必死に頷くのを確認した精市は私の背中に手を回してぎゅっと身体同士を密着させる。互いに隆起した乳首が擦れ合って溺れそうな快楽に拍車をかけた。

「いい子だ…ッ!ほら、沢山飲むんだよ…!!イけ…ッ!!」
「あっイクッ!イクぅッ…ひああああああん!!!」

一際大きく腰を引いたかと思うと下半身に杭打つように子宮の入り口まで勢い良く突き上げられ、ビクンビクンと腰を震わせて絶頂に達した。病みつきになりそうな快感の余韻に、身体を硬直させて背を仰け反らせ、幾度か痙攣を繰り返す内に精液が中に大量に放たれるを感じる。子宮口に押し当てられた鈴口からビュクビュクと注ぎ込まれる白濁に、お腹が、子宮が、とっても熱い…精市が全て出し終わる頃にはぐったりと脱力し、バスマットに身体を横たえたまま乱れた呼吸を整える。

ああもう、折角のお風呂のはずがべとべとに汚れてしまったと何となく眉を顰めていると、精市はくすりと笑って私の顔を面白そうに覗き込んできた。

「でも、身体は温まったよね」
「う、ううるさいっ」

それからもう30分くらいは、今度は健全にお風呂を楽しんだらしい。


end.