「…で、どういうことなのかな。僕にちゃんと説明してみて」

蒸せるような暑さに目眩を覚えた放課後の視聴覚室、閉じ込められたその空間は一切の風を通さず締め切られた密室であった。立っているだけで噴き出る汗が制服をしっとりと濡らし、湿り気を帯びた空気を吸う息苦しさに浅い呼吸を繰り返す。あぁ、けれど乾いた喉をごくりと鳴らしたのは決して暑さのせいだけではない。

壁に片手を突き、私の身体を自分の身体と挟み撃ちにするのは不二周助くん。端正な顔立ちに気張らない笑顔で迫る彼は前髪をさらりと揺らし、そうして隙間から覗く切れ長の瞳で私を捉えて離さない。一見して穏便なその笑みとは裏腹に、譲らない意思がだだ漏れのポーカーフェイスは非常に厄介だ。見えない何かに今にも心が押し潰されそうでヒゥっとか細い息を呑む。

くすりと微笑して私の顔を更にじっくりと覗き込んだ。至近距離、もう不二くんのことしか見えないよ。

「どうしたの?言ってごらん?今日僕のことを無視して他の男と話していたよね…その理由を。言えるよね」
「む…無視…してな…っ」
「え?くす、そうなの?ごめんね。でも僕はまだ納得がいかないんだけど…それじゃ、どうしようか?」

ニンマリと目を細めながら困ったように言う彼の表情は全然困っていない。どうしようか、なんて譲歩ぶった言葉はとんでもない。これから私のことをどこまでも問い詰めて責め立てて許さないだろう、さざ波立たない水面下でメラメラと静かに燃え盛る炎は此方から丸見えなのだ。思わず後退るも、踵が壁にコツリと当たるだけに終わった。逃げ場も無く言葉も無い私の様子を手中で転がして愉しむように、不二くんは挑発的に私の股の間に片膝を食い込ませて、ぐりぐりと急所を刺激する。

「あっ…!や、不二くぅ」
「じゃ、どうするの?口で謝っても許さないよ」

この状況では皮肉過ぎる笑みで彼はにこりとして続ける。

「名前。これはもう、僕が満足するまで名前ががんばるしかないと思うんだけど、違うかな?ほら…さっさと濡らしてくれる?僕、けっこう怒ってるんだよ」
「んっ、んッ…!」
「お仕置きしてあげるから、ちゃんと言うこと聞くんだよ…いい子にしていてね…」

宥めるように優しく、細く長く色白な指でそっと私の髪を撫でながら耳元で低く囁いた。

ふわりと香るシャンプーの清潔な匂いと頬に掠めた柔らかな栗色の髪に彼の性別を疑うけれど歴とした男だ。しかも、かなりネジの外れた類のサディストだ。耳朶に吹きかけられた熱い吐息にビクリと身体を強張らせると、彼は私の肩に両手を添えて緊張を解すような手付きで撫で回しながら、そのまま壁に私の身体をゆっくりと押し付けていった。

流れるように唇を唇に重ね、ねっとりと貪っていく。

「んっ…ん、はぁあ…」

くちゅり、と小さな音を立てて彼の舌先が固く塞がれた唇の隙間にぬるりと割り込んでいった。そうして全部入れば咥内で私の舌を器用に絡み取り舐めたり吸い付いたり急がない愛撫を繰り返す。まるで彼色に染まる、といえば聞こえはいいだろうか。そんな魅惑の口付けに思考が侵されて脳がピリピリと痺れる頃になれば、ちゅぱ、とワザとらしく音を立てて唇が解放された。

目の前で唾液に濡れた唇を手の甲で拭いながら、不二くんは不敵に口角を上げて言う。

「…よくできました。」
「はぁ、はぁっ…はぁ」
「ふふ、暑いね、ここ。制服、脱いでもいいんだよ。名前」

ちゅ、と頬に口付けながらセーラー服のリボンの端をくいっと摘んだ彼が悪意のない笑顔でそう勧めてくるものだから、私は熱さにすっかりやられた頭でぼんやりと不二くんを見上げた。すると目下、無防備であどけない顔を惜しげも無く曝す私を見た彼が一瞬表情を消す。それから薄い喉仏を動かして息を呑んだ気がしたけれど勘違いだったのだろうか。気付けばいつもの悠々とした笑みでスカートの中に手を差し込む美青年がいて、気怠い身体を背後の壁に預けながら情事の成り行きを見守る。

「…はぁっ…ん」

滑り込んだ手が下半身をじっくり弄り始めると、ふと不二くんが私の胸元のリボンをするりと解いた。

あぁ、密閉された空間に立ち込める熱気は私の思考を着実に奪っていく。

「……っ…はぁん」

どうしよう、気持ちいい。

脚の付け根から太腿までを丁寧に行き来する掌の熱に浮かされるばかりで、ふと悩ましげな吐息を一つつけば、可愛いね、と一言呟きながら唇に軽く口付けられた。…不二くんの前では、エッチな子になっても許されるんだ…ふるりと興奮に目覚める私を彼は満足そうに眺めると、セーラー服のジッパーを摘まみ下に引きながら、一方で下着越しに秘肉をつついてきた。

「気持ちいい?僕が脱がせてあげるね。嬉しいでしょ」
「ん、あっ、不二く」
「いい子だね。名前…今日はいっぱい濡らそうね」

愛液で重い下着ごと膣に埋め込むようにぐっと人差し指で中を抉らると、快感にぶるぶると足が震えて自身の体重を支えるのがやっとだ。


end.