※2014年秋のアニくじネタです。


命は脈打つ鼓動、心臓はハート、ハートは赤く気高く燃えているか?

人の目を惹く、欲深き赤色で君の命までも俺が早々に頂く。そう、俺こそはハートの女王。ハートの女王は全てを譲らない。肩から爪先まですっぽり背を覆う長いマントを華麗に翻し、右手に持つ身の丈より長い杖の先をコンクリートの床にカツン打ち付けながらやれやれと溜息をついた。

「正確に言えば女王ではなく王様だけれどね。俺は男だし…」
「くす、王様?それは某氷の世界の彼の話で、幸村はむしろ魔王って感じがするよ。あ、しますよ?魔王様」
「…うるさいな変質カメラマン…君って本当に悪趣味だ、不二」

さてさて、唐突だが聞いて欲しい。トランプのハートのクイーンってあるだろう。あれは一説(旧約聖書)によれば、男の首を切り落として自軍を勝利へ導いた女性ユディトの象徴であるそうだ。なんとも果敢で、容赦無いことか。そしてこの俺幸村精市は今、何故だかそれモチーフの赤く派手派手しい衣装に全身を包みとある寂れた一室に佇んでいる。

目の前には見知らぬ女が床に蹲っていて震えていた。誰だこいつ。数回の瞬きの後に視線をその先へ向けてみれば大変不愉快なことに、自前の一眼レフカメラを手にした青学の不二周助がにこにこと微笑しているではないか。何故こいつが此処に、そもそも何処の誰かが用意したかもわからないこの随分とご都合主義な展開に苛立ちを隠すつもりなどさらさら無い。チッと周囲に聞こえるように大きく舌打ちした俺は眉間に深く皺を寄せ、呑気に笑っている学ラン姿の不二に問い掛けた。

「つまりなんだい。この豚を虐げれば俺は帰れるのかい」

くいっと顎で目の前の女を示しながら気怠い声色でそう告げると、不二は少し困ったように眉尻を下げて小さく頷く。

「そうみたいだね…で、僕は幸村に虐げられてるその子を写真に収めればいいと。なんだか少し可哀想だけれど」
「は?可哀想?俺は全くそうは思わないけれどね。この豚、それを望んで自らここに来たんだろうし。ねぇ?お前、どうなんだい?」

言いながら試しに杖の尖った先端で女の身体をぐりぐりと嬲ってみると「アヒィ」なんてだらしのない声を出すものだから、ただでさえ宜しくない俺の機嫌は余計に損なわれるばかりだ。よく見ればこの女、黒の布で目隠しされているし口にはボールギャグ(拷問器具)がベルトで固定されている。両手首も荒縄できつく括られていて、あーあ、俺に叩かれる準備万端というわけ……冷めた目付きで転がる女を見下ろしていると、ふと不二がカメラを構えて俺のことを一、二枚写真に撮る。パシャパシャとシャッターを切る音が閉め切られた室内に軽快に響いた。

「幸村のそういう怖い顔も、しっかり撮っておかないと」
「あ、そう。…どうでもいいけど不二、君は今からこの豚を撮ることに対して嫌悪感とかそういったものは持ち合わせないのかい。俺はね、吐き気がするよ」
「うん。そうだね…いいんじゃない?嫌悪感というより、僕は…なんだか、笑っちゃうよねぇ?くすくす」

俺の問いに妖笑しながら不二はカメラレンズを女に向け直しパシャリと一枚、再びシャッターを切った。そうしてくすりと含み笑って、一旦カメラボディから顔を離した彼の表情はそれはそれは穏やかでない。心底面白いモノでも観察するように嬉々とした、それでいて何処か冷めきった瞳の色はやけに悍ましく攻撃的じゃないか。どこの誰とも知れぬ豚の醜態さえ己の一興として吸収して、愉しんで、消化してしまうというなら、節操のないただの変態だろこいつ…やはり気に食えない男だと、ヒクリと口端を引き攣らせる。

パシャリ。

「そうやって僕を変態と軽蔑する君の貴重なワンショット、ゲット☆」
「…嫌がらせかい。いい度胸してるよね…今すぐ壊してやってもいいんだよ、その大事そうなカメラ」
「あれっ、そうしたら写真が撮れなくなって、指令が果たせずに幸村も僕も永久に帰れなくなっちゃうね。くす」

ああ口の減らない男だと、カメラを叩き割ろうとメキメキと力を入れていた左拳から力を抜く。

「後で覚えてろよ不二……」

しん、と辺りが静まり返った。此処で口論を始めたところで打開策など始めから一つに決まっている。不本意ではあるが、不二と一緒にこの女が満足いくまで蹂躙してやればそれで済む話であればと、俺は女のすぐ傍にしゃがみ込むと顎を掴んでおもむろに此方を向かせた。ヒューッヒューッとボールギャグの通気孔から聞こえる呼吸音は上下する女の肩の動きと同期している。

「で、何かな…お前は俺のことが好きなの?だからここまで来たのかい?」
「…ッ」
「へぇ」

コクコクと必死に首を縦に振る女の息は荒い。ボールギャグが一層女の呼吸を妨げているのだろう。顔の大半が隠れている女の顔を一瞥してから適当に身体を床に放ると、なかなかに俺に忠誠深い様子の雌豚を高みより毅然として見つめた。

まぁ、少しくらいなら遊んでやろうじゃないか。

革靴の底で胸のあたりを抉るように踏み躙ってやると案の定女は涎を垂らして悦んだので、突き刺すような冷たい視線で女を射抜く。

「お前を虜にしていいのはこの世でたった一人…この俺だけであるという自覚を持てよ、クズ」
「ンッンッ…!!」
「いい子だ、よく来たね。お望み通り、いたぶってやろうじゃないか」

既に興奮しきっている女は身体をビクンビクンと痙攣させながら、ああ、足りない頭でその先の楽園でも夢見てるのだろう?浅はかなお前に似合いの夢を見させてやろう。

それが例え枯れ果てた楽園だとしても。それでもお前は、俺についてくるのかい?


end.
−−−−
とにかく罵って頂きたくてノリで書きました…←
読みたいって方もしいれば雌豚仕様で本番も書いてもいいかなとは思ってます