訳の分からないモノ


はいはーい!堀川国広です。
今回は僕の番なんですね?それじゃあ、僕が体験した話を語らせてもらおうかな。これは、主さんが実家へ帰省する際に護衛として着いて行った時の話です。

うちの主さんは毎年必ず夏の一週間、実家で過ごすのを楽しみに頑張っていたんです。その一週間は刀剣男士を二人護衛につけることが条件の一つだったので、その年は僕と兼さんがついていくことになったんです。
兼さんは初めての護衛だったんですけど、僕は過去にも何度か経験があったので主さんのご両親とも顔見知りで、仲良くしてもらっていました。その日もお母さんのお手伝いをしたり、お父さんの晩酌のお付き合いをしたりで、僕が布団に入ったのは現世の時間で深夜2時過ぎだったと思います。
明日に備えて眠ろう、そう思った時でした。どこからか線香の匂いが漂ってきたと思ったら、主さんの家からすぐ近くにある神社の辺りからかな?
うぁーんうぁーん!ていう猫の発情期の唸り声が聞こえてきたんです。
ずっと唸ってるんで、「なんだろう?」と思いつつ、とりあえず下に飲み物飲みに行こうと電気はつけずに階段を降りました。
その階段の窓から神社が見えるので、(直線距離25m位)まだ唸ってる猫が見えるかも知れないと思って、ふと神社の方を見てみたのが間違いでした。
唯一社にある灯りに照らされて、四つん這いの生き物がいるのが見えたんです。
それは、明らかに猫でも犬でもなかった。
全身が青白いおかっぱの女の子が四つん這いで、猫のように唸っていたんです。
これはまずい!見ちゃいけない!と思いつつも、身体が動かなくて、ただそれを見ていました。
あれと目があったらどうなってしまうんだと思いつつも、身体が動かない。
と思っていたら、パッと階段の電気が付いて。
振り返るとそこにいたのは、主さんのお母さんでした。
「堀川くん?何やってんの?」
僕は「いや、何でもないです」と言ったんですが、明らかに様子がおかしい事を察したのか、
「神社のあれ、この時期この時間になるといつもいるから気にしちゃだめだよ」
と言って寝室に戻っていきました。
この時期?僕は何度かここに来ていましたが、あれを見たのも、声を聞いたのも初めてでした。
悶々としつつも、飲み物を飲み、布団に戻りました。でも、どうもあの女の子に見覚えがある気がして。何かひっかかる…。
僕は一晩中考えていましたが、とうとう思い出せず、納得は出来ないままそのまま眠りました。

次の日、やっぱり気になって主さんのお母さんに夜の事を聞いてみたら、
「いつか忘れたけど、10年くらい前、●●さん家の隣の・・・」
そこまで聞いて、昨夜の女の子が誰なのか分かりました。
10年くらい前、神社のすぐ近くに空き家があったんです。
当時、まだ子供だった主さんと神社で友達と遊んでいると、ゴムボールを持ったおかっぱの女の子がいつの間にか立っていました。
一緒に遊ぼうとしたんですけど、その子の言うことが、お兄ちゃんが木にぶつかって目が見えなくなっちゃったんだよ!とか、他にも訳のわからない支離滅裂な事を言い、学校などにも行ってないようで、不気味なのですぐ離れようとしました。
ですが、「私の家、そこなの。ちょっと来て!」とこの前まで空き家だったはずの家を差し、主さんも行きたい行きたいとせがむので行ってみると、縁側に座る数十匹の猫とお婆さん。
その他に人がいる気配はありませんでした。
主さんは動物があまり好きではないこともあり、すぐに立ち去ったんですけど、数日後、その家は空き家になっていたとお母さんから聞きました。その年はそれから特に変わったこともなく、そのまま本丸に帰って、その後の帰省中の話を聞いても女の子の話も空き家の話も聞いたことがなかったので、そのことはすっかり忘れていたんですが。
神社で見たのは、あの日の女の子でした。
彼女は一体、あそこで何をしているのだろう。
結局何も分からないまま、その年の帰省も終わりの日を迎えて主さんと兼さんと本丸に帰りました。

後日談なんですが、主さんが実家と連絡通信しているときに僕もお母さんとお話させてもらう機会があったので、何となくあの女の子の話を聞いてみたんです。するとお母さん曰く、「悪さはしないみたいだけど、近寄ったり見たりしない方が良い」とのことでした。
ちなみに主さんのご家族は霊感はありません。ですがお父さんには見えても聞こえてもないようです。
主さんには姿どころか声も聞こえないようで、僕とお母さんの会話を聞いてものすごく怖がっていました。
なぜ僕が今年から見えだしたのかは分かりませんが、10年前のあの少女とお婆さんの事自体も、主さんは覚えていないようでした。
ちなみに、主さんの妹さんはその子の事を覚えてて(しかも当時おもちゃで頭を叩いた)やはり毎年見えるそうです。

僕と一緒に着いていった兼さんは一週間の間にそんな経験は一度もしていないそうで、僕の話を聞いて一言「訳のわからないモノは怖いよなァ 」とだけ言っていました。

オチもありませんが、これが僕の体験した話です。