第2話 104期訓練兵

「100年前の平和の代償は、惨劇によって支払われた」

104期解散式の夜。

「当時の危機意識では、突然の『超大型巨人』の出現に対応できるはずもなかった…」


100年前に突如出現した、人間を捕食する巨人という生態に対抗し、
人類は50mを超える強固な壁を3重に作った。
外側からマリア、ローゼ、シーナ。
巨人の存在しない安全な領域を作ることに成功した。

しかし、845年。

外壁を超える超大型巨人が突如出現し、壁を破壊した。
多くの巨人が外壁の中に流れ込み、人類は先端の壁、ウォール・マリアを放棄した。
2割の人口と3分の1の領土を失い、活動領域は2重の壁まで後退した。



「今この瞬間にも、あの『超大型巨人』が壁を破壊しに来たとしても不思議ではない」

104期の訓練兵は広場に集まって、上官の話を聞いていた。

「その時こそ、諸君らはその職務として『生産者』に代わり、自らの命を捧げて、巨人という脅威に立ち向かってゆくのだ!」



「心臓を捧げよ!!」

「「「ハッ!!!」」」

ドンッ

新兵は右手を左胸の前に出し、敬礼をした。

「本日、諸君らは『訓練兵』を卒業する…その中で最も訓練成績の良かった上位10名を発表する。呼ばれたものは前へ」

上官が名前を読み上げた。


「首席、ミカサ・アッカーマン、2番、ライナー・ブラウン、3番、ベルトルト・フーバー、4番、アニ・レオンハート、5番、エレン・イェーガー、6番、ジャン・キルシュタイン、7番、マルコ・ボット、8番、コニー・スプリンガー、9番、サシャ・ブラウス、10番、クリスタ・レンズ、以上10名−」








解散式が終わり、エレンとジャンは、意見の対立で喧嘩になった。
その喧嘩の仲裁に入ったミカサに担がれ、エレンは兵舎の外に出た。


ドサッ

「うおっ!!…いってーな!!」
「熱くなるとすぐ衝動的に行動する…」

ミカサは呆れながらそう言った。

「お前…配属兵科の希望は?」

エレンはミカサに問う。

「私は調査兵団にする」

ミカサはエレンの隣に座った。

「…お前は首席だろうが…憲兵団に行けよ。それも歴代の中で逸材だとよ…きっと破格の待遇を受けられるぞ」

ミカサの返答を聞き、エレンは別の提案をした。

「あなたが憲兵団に行くのなら私も憲兵団に行こう。あなたが駐屯兵団に行くのなら、私もそうしよう」

ミカサは淡々と答えた。

「エレンは私と一緒にいないと早死する」

最後の言葉だけは、しっかりとエレンの目を見て答えた。
そんな姿にエレンはため息をついた。

「頼んでねぇだろ、そんなことは!いつまでこんなこと続けるつもりだ!?」
「人生が続く限り…一度死んだ私を再び生き返らせた恩は忘れない」


エレンとミカサが話し込んでいるところに、アルミンもやって来た。


「二人とも、今日はもうお開きだって。寮に戻るよ」
「あぁ…なぁアルミン。お前は…兵団希望どうするんだ?」
「…」

スッ…
アルミンはエレンの隣に座った。
エレンにそう聞かれ、決心した顔で答えた。

「僕は調査兵団に入る!」

「!!」

その言葉にエレンは驚いた。

「本気で言ってんのか?お前は−」
「あぁわかってるよ…僕は人より体力がない。卒業模擬戦闘試験を合格できたのも奇跡だ…」

エレンはアルミンの言葉に続けた。

「お前は座学はトップなんだから、技巧に進めって教官も言ってたじゃねぇか!」
「…」
「長所を捨てて、非効率な選択をするのは勇敢って言わねぇぞ」

エレンの言葉にアルミンは力強く言い返した。

「…死んでも足手まといにはならないよ!」

「…」













104期の解散式の夜は無事終わり、次の日を迎えた。

エレンや他の訓練兵は、固定砲整備の作業を行っていた。



「はぁ…!?調査兵団にするって?」

エレンはコニーの言葉に驚いた。
コニーは憲兵団に入るために、上位10番を狙っていたのだからだ。
昨日のエレンとジャンのやり取りを聞き、コニーの気持ちが変わっていった。

昨日のエレンの偽りのない言葉は、104期生をやる気にしたのだ。


「あのぅ、みなさん…上官の食糧庫からお肉盗ってきました」

サシャがジャケットの中に隠し持っていた肉を見せた。

「…!!」

その行動にそこにいた訓練兵は全員凍りついた。

「サシャ…お前独房に打ち込まれたいのか…?」
「お前…本当にバカなんだな」
「バカってこえぇ…」

サシャは好き勝手に言っている同期を見て、こう言った。

「大丈夫ですよ。土地を奪還すればまた…牛もヒツジも増えますから」
「え?」
「なるほど」

エレンはサシャの言葉の意味がよくわからなかったが、トーマスには分かった。

「ウォール・マリアを奪還する前祝いに、頂こうってわけか!食ったからには腹括るしかないもんな!!」
「?」
「…トーマス…」

「…俺もその肉食う!!」
「わ…私も食べるから!取っといてよ…!!」

エレンは同期の姿に驚いた。
自分だけが、巨人を駆逐して、外の世界を知りたいと思っていると感じていたからだ。

「何突っ立ってんだエレン、作業に戻んねぇとバレちまうぞ!」
「お昼はまだ先だよ!」

エレンは拳を握りしめた。


「(あれから−5年経った…勝てる…人類の反撃はこれからだ!)」







ドンッ





ビュワ!!

ブワアアア


「熱ッ…!?」


一瞬の出来事だった。

何もなかった壁外に、突如超大型巨人が姿を現したのだった。
壁上にいた訓練兵たちは、超大型巨人の熱風に押され壁上から落下していった。


「うわあああああ!」

「!?みんな!!」

エレンが叫んだ。

「立体機動に移れ!!」

エレンの言葉に、訓練兵たちはすぐさまアンカーを壁に刺した。
壁の上で嫌な音が聞こえ、エレンは上を見上げた。
超大型巨人が5年前と同じように、壁に手をついて脚を振りぬいて、5年前と同じように、壁を破壊した。

その時、エレンの頭には5年前の光景が蘇った。
エレンの母親が、巨人に捕食された日を思い出した。

「一匹…残らず…!!」

「壁が壊された…」
「まただ…まだ…巨人が入ってくる…ちくしょう…やっぱり人類は巨人に…」
「サシャ!!サムエルを任せた!」

コニーが青い顔をして呟いているところに、エレンが叫んだ。

「固定砲整備4班!戦闘用意!!」
「「「!?」」」
エレンの言葉にコニーやトーマスが顔を上げた。

「目標!目の前!!超大型巨人!!」

ビクッ
「…!!」

「これはチャンスだ!絶対逃すな!!壁を壊せるのは、超大型だけだ!」

エレンは壁を登りながら叫んだ。

「こいつさえ仕留めれば…!!!」

ダダダダダッ

スタッ

「…!!」

エレンは壁の上に到達し、目の前の超大型巨人を睨みつけた。

「…よう…5年ぶりだな…」







その後、エレンは懸命に超大型巨人を仕留めようとしたが、固定砲を壊された後、超大型巨人は姿を消した。
しかし、この行動から、エレンは超大型巨人に知性があると気づいた。




カンカンカンカン

街の鐘が鳴り続いた。
壁を壊され、巨人が侵入したサインであった。
兵士は住民を避難と、壁の修復および巨人との戦闘を余儀なくされた。
しかし、現在最も実戦経験の豊富な調査兵団は壁外調査のため出払っていたため、駐屯兵団と訓練兵によって、今回の作戦が遂行されることになった。

訓練兵が集められ、作戦の説明が行われた。

「各班ごと通路に分かれ、駐屯兵団の式の下、補給支援・情報伝達・巨人の掃討などを行ってもらう」

上官による説明が始まった。
訓練兵は顔を青くしていた。


「なお…承知しているであろうが、敵前逃亡は死罪に値する。みな、心して心臓を捧げよ。解散!!」

「「「ハッ!!!」」」



前衛にいた駐屯兵団はほぼ壊滅的な状況であった。
訓練兵であるエレンたち34班も、前衛に駆り出されるほど巨人が侵入していた。
通常種ではない奇行種が侵入しているせいか、思うように巨人を倒すことができないでいるのだ。


「奇行種だ!!避けろ!!!」

エレンやアルミンは、奇行種が突っ込んでいたところをなんとか避ける事ができたが、トーマスが食われてしまった。

「うっ…!?うっ…!!くそ…」
「ト…トーマス!!」

ゴクン

巨人はトーマスを飲み込んだ。
その姿を見て、エレンは巨人の後を追った。

「待ちやがれ!!」

しかし下にも巨人が待ち構えていて、エレンは左足を噛みちぎられてしまった。

「そんな…エレンが…」
「足が…」
「お…おい…止まってる場合か!!」

アルミンは膝をついた。
他の訓練生たちは、どんどん巨人に食われていった。
アルミンはその光景を眺めていた。

「(なんで僕は…仲間が食われてる光景を…眺めているんだ…どうして僕の体は…動かないんだ…)」

アルミンはその場に座り込んでいた。
そこにやってきた巨人に、ジャケットを摘まれて口の中に運ばれた。
その瞬間アルミンは我に返り、叫び声をあげた。

「うああああああ!!」

アルミンの声に気づいたエレンが、身体を引き釣りながら、巨人の口元に辿り着いた。
エレンがアルミンの腕を引っ張り出した。

しかし、その代わりにエレンが飲み込まれてしまった。

「エレン!!うわああああああ!!」



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