第4話 絶望の中の光

「とりあえず、住民の避難が完了するまで、巨人の討伐に専念してくれ」
「わかりました」

ミカサ率いる後衛部隊は、巨人の討伐を進めていた。
そこにはエリアスとアーサーの姿もあった。

「俺達は前衛に合流するか」
「…そうですね」
「え?」

ミカサは2人の会話に割って入った。

「なぜですか?お二人がいたほうが、住民の避難を無事に終えることができると思うのですが」
「…うん、そうかもしれない。けどね、住民の命も大事だけど、俺にとっては兵士の命も同じくらい大事なんだ」

エリアスとアーサーは、アンカーを高い建物に刺した。

「ここはミカサや駐屯兵団に任せるよ」
「…」
「ミカサ、君がいればきっと大丈夫」

エリアスは笑顔でミカサにそう伝え、ガスを噴射させ、前衛の下へ急いだ。







ミカサは巨人と闘いながら、エリアスのことを思い出していた。
調査兵団分隊長の彼が、なぜ今回の壁外調査では留守番を任されていたのか。
そこだけがどうしても気になっていた。

「(まさか…あの人…怪我でもしているのでは…)」

ゴオオオオオオ

ミカサの周りには、巨人の死体が蒸気をあげていた。

「(…撤退の鐘はまだ…!?まだ住民の避難が完了していないの!?)」






ゴゴゴゴ
ようやく住民の避難が終わり、開閉扉が閉まり始めた。

ガチッ

「よし!施錠は完了した!!鐘を鳴らせ!」


カンカンカンカン
住民の避難が完了した合図である、鐘の音が街に鳴り響いた。
その音を聞いた兵士たちは、安堵の表情をした。

「撤退だ!ガスを補給しろ!壁を登るぞ!」
「前衛の撤退を支援してきます!!」
「な!おい!!ミカサ!」
ミカサはエレンのいる前衛に急いだ。

「(エレン…あなたがいれば、私は何でもできる…)」






「よし、大体片付いたな」
「そうですね。ここにいた者達は、壁を登ることができたので、もう大丈夫でしょう」
「訓練兵の姿がほとんどなかったな」
「…確かに少ないと思いました」
「…場所を変えよう。他にも補給室があるはずだよね」
「はい。たしかあちらに…」

エリアスとアーサーは、もう一つの補給室を目指し、移動を始めた。





ギュイイイイ

「!?」
ミカサは撤退の鐘が聞こえたはずなのにも関わらず、壁を登ろうとしない訓練兵がいる光景に疑問を持っていた。

「(なぜ壁を登ろうとしない…!?)」
訓練兵はある一点を指指し、顔を青くしていた。
ミカサは同じように、指されている方向に目を向けた。
そこには補給室があった。
しかし、補給室には巨人が群がっていた。





「くそっ!どうするんだよ!」
コニーは悪態をついた。

「どうもこうもねぇよ…俺達はガス切れで壁を登れねぇ…そんで死ぬんだろうな。あの腰抜けどものせいで」
ジャンは座り込み、頭を抱えていた。
補給室には、補給任務をする兵士がいたが、巨人が群がってしまったため、本部に籠城していた。
補給室に入ってきた巨人を倒すのだもなく、一箇所に集まり、ただただ座り込んでいたのだった。

「一か八か、あそこに群がる巨人を殺るしかねぇだろ!!俺らがここでウダウダやってても同じだ!巨人が集まる!」
コニーはなんとかガスを補給しに行けるよう、必死に考えていた。

「俺達訓練兵に…そんな決死作戦の指揮が執れると思うか?」
「…でも…」
「執れたとしても、巨人たちをどうすることもできないだろ。補給室には3〜4m級が入ってるぜ」
「…ダメかな…」
コニーとジャンは絶望した。

「はぁ…つまんねぇ人生だった。こんなことならいっそ…言っておけば…」
「やりましょうよ!!みなさん!さぁ!!立って!」
サシャは無駄に明るい声で言った。

「みんなが力を合わせれば、きっと成功しますよ!私が先陣を引き受けますから!」

しかし、サシャの言葉に賛同するものはいなかった。

「…アルミン…一緒にみんなを…」
アルミンの顔は真っ青になっていた。
アルミン以外の34班は全滅。
目の前でエレンの死を目の当たりにした彼には、何も考えられなかった。

そんなやり取りを、ライナー、ベルトルト、アニ、マルコの四人は離れた場所から聞いていた。

「ライナー…どうする?」
「まだだ…やるなら集まってからだ」
「だめだよ…どう考えても…僕らは壁を登れず全滅だ」
マルコはすでに諦めていた。



ヒュオ


「ミカサ!お前後衛のはずじゃ!?」
ミカサが現れた。

「アニ!」
「!」
「なんとなく状況は分かってる…その上で私情を挟んで申し訳ないけど、エレンの班を見かけなかった?」
ミカサは汗だくになりながら、アニに聞いた。

「私は見てないけど、壁を登れた班も…」
「そういやあっちに、同じ班のアルミンがいたぞ」
「!」
ミカサはその言葉に、アルミンを探した。
壁により掛かるように座り込んでいるアルミンの姿を見つけ、ミカサはアルミンの下へ走った。

「アルミン!」
「!!」
アルミンは身体を震わせた。

「(ミカサ…だめだ、合わせる顔がどこにあるっていうんだ…ミカサに…なんと言えば…)」
アルミンはあの時のことを後悔していた。

「(あの時…エレンと一緒に死んどくんだった…)」
「アルミン…怪我はない?大丈夫なの?」
ミカサはアルミンの前に膝をついた。
アルミンは、黙って首を縦に振った。

「よかった…エレンはどこ?」
ミカサの言葉に、アルミンは顔を上げた。
アルミンの顔を見て、ミカサは悟った。

「僕達…訓練兵…34班…トーマス、ナック、ミリウス、ミーナ、エレン…以上5名は自分の使命を全うし…壮絶な戦死を遂げました…」

その言葉に、ミカサだけではなく他の訓練生も驚いた。

「そんな…」
「34班はほぼ全滅か…」
「俺達もまともに巨人とぶつかればそうなる…」

「ごめんミカサ…エレンは…僕の身代わりに…僕は…何もできなかった…すまない…」

ミカサはエレンの前に、静かに手を出した。

「アルミン、落ち着いて…今は感傷的になってる場合じゃない」

ミカサはブレードを持ち上げた。
「私は…強い…あなた達より…強い…すごく強い!ので、私はあそこの巨人どもを蹴散らせることができる…」

ミカサの言葉に、訓練生たちは驚いた。
一体何を言い出すのだ、という顔をした。


「勝てば生きる…戦わなければ、勝てない…」





タンッ

「ミカサ、君はすごいね」
「!!」

ミカサたち訓練生の前に、エリアスとアーサーが現れた。

「ようやく見つけたよ」
「反対側でしたね」

「…エリアス分隊長…」

突然現れた兵士に、訓練兵たちは騒ぎ出した。

「だ…誰?」
「分からない。駐屯兵団の先輩たち…ではなさそうだね」
「…てか男…?」
「…人形みたい…」
「綺麗すぎて怖い…」

好き勝手に話している訓練兵を無視して、ユウヤとアーサーは話を進めた。

「あれは…補給室に巨人が群がってるんだね」
「…そうですね。ガスが補給できず、壁が登れないという状況ですね」
「…そうか…」

エリアスは補給室を指さした。

「…1人何体かな」
「…7体くらいですか」
「いやー…きついな」
「…やるしかないですよ、エリアス分隊長」
「そうだね」

周りの訓練兵に目もくれず、エリアスとアーサーは会話を続けていた。
しかし、そこにジャンが割り込んだ。

「あの…あんたたち、誰ですか?」
「あぁ、そうか…また自己紹介をするのを忘れていたね」
「そうでしたね」

エリアスはジャンや訓練兵のみんなに聞こえるように、少し大きめの声で言った。

「調査兵団所属、エリアス・ホワイトだ」
「同じく調査兵団所属、エリアス分隊長の分隊長補佐、アーサー・ペンです」
「一日に2回も自己紹介するとはね」
「そんな日もあります」

「調査兵団!?なんで!壁外調査から戻ってきたんですか!?」
「いや、俺達はお留守番組」

ジャンは目を輝かせたが、その後のエリアスの言葉に、再び絶望した。

「この人たちは、調査兵団でも優秀な人たち…だから力を合わせれば勝てる…」
ミカサはエリアスの隣に並んだ。

「そうですよね?エリアス分隊長」
「…そうだね。戦わなければ勝てない。ここにいても負けるだけだ」

エリアスは全員を見渡した。

「出来る限りサポートするから、みんなも頑張れそうかい?」
「「「…はい…」」」
「いい返事だ」

タンタンタン

「あ、おいこらミカサ!」

ミカサはエリアスの言葉を無視して、走りだした。

「アーサー、周りの状況を見て、サポートを頼んだ」
「かしこまりました」
エリアスはミカサを追いかけた。

「オイ!俺達は仲間に1人で戦わせろと学んだか!?」
いつまでも動かない訓練兵に向かって、ジャンは叫んだ。

「お前ら!本当に腰抜けになっちまうぞ!!」

「そいつは心外だな…」
「…」
「…はぁ…」

ドオオオオ

ライナー、アニ、ベルトルト、マルコはミカサとジャンの後に続いた。

「や、やい!腰抜けー弱虫ーアホー…」

「あいつら…」
「ちくしょう…やってやるよ…!」

「「「うおおおおおおおお」」」

訓練兵が一斉に補給室を目指した。



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