ヒュンヒュン
バシッ
前を進むミカサを追うように、ジャンやサシャは進んでいった。
「おい、ミカサ!落ち着け」
ミカサの横を進むエリアスは、声をかけた。
このままでは、どう考えてもガスが切れる。
先ほど後衛で戦っていた時のような冷静さが、今のミカサには感じられなかった。
「…」
ミカサはエリアスに問いに、何も答えなかった。
「おい!」
「(ガスを蒸かしすぎだ!あれじゃすぐに無くなる…いつもみたいに冷静じゃない…)」
アルミンもミカサの異変に気づいていた。
プシュ…
ガスが切れて、ミカサは落下していった。
「…!!」
「ミカサ!!」
「くっ…!!」
エリアスはミカサが落ちたことを確認した。
しかし、アルミンがすぐにミカサの後を追ったことを確認し、一旦止まった。
「アルミン!」
コニーはアルミンの後に続こうとした。
「俺も行く!」
ジャンが同じように方向を変えようとしていたため、コニーは叫んだ。
「ジャン!お前はみんなを先導しろ!巨人がいるんだ!お前の力が必要だろ!俺が行く!」
「…ちっ」
ジャンはコニーに言われ、補給室に急いだ。
「エリアス分隊長」
「あ、アーサー、良かった。追いついたね」
「はい、あの…アッカーマンは?」
「ガス切れで落ちていったよ」
「え!?」
「…でもあの子はきっと大丈夫だ…」
「…そうですね」
「補給室に急ごう」
「はい!」
ビュオオオオオオ
「(ダメだ…)」
ジャンは絶望したいた。
補給室だけではなく、周りにも巨人が群がっていた。
「(本部に近づくには…犠牲を覚悟しない限りは…無理だ…)」
「ジャンだっけ?」
「…エリアス分隊長…」
エリアスとアーサーがジャンのそばに立った。
「ここから先は…嫌でも仲間が死ぬ光景を見ることになると思う…」
「…あなたが助けてくれればいいじゃないですか!」
「…限度があるんだ…ごめんね…」
「ちっ…」
「うわああああああ」
「!?」
ジャンは叫び声のする方を見た。
「うっ…!!」
ガス切れで、1人の兵士が地上で顔を青くしていた。
「まずい!!あいつガス切れだ!!」
近くにいた巨人どもが一斉に群がっていった。
それに気づいた他の訓練兵が助けに入ろうと、彼の下に急いだ。
「よせ!!もう無理だ!!」
ヒュンヒュンヒュンヒュン
「!!」
エリアスは巨人の背中にアンカーを刺し、一気に巨人との距離を詰めた。
バシッ!
一匹倒し、すぐに左の壁にアンカーを差し替え、空中で一回転をし巨人のうなじを削ぎ落した。
「つ…強い…」
「行け!!」
エリアスはジャンにそう言った。
「…い…今だ!!巨人が少しでもあそこに集中しているスキに、本部に突っ込め!!」
ジャンは我に返り、全員に聞こえるように叫んだ。
「今しかない…」
ドオオオオ
「どのみち…ガスがなくなれば終わりだ!全員で突っ込め!!」
「エリアス分隊長!!」
「大丈夫だ、まだいける」
「し…しかし…」
「訓練兵のみんなは、無事本部に辿り着けそうかな」
「…ここにいる三人以外は…多分大丈夫だと思います…」
「…すまない…」
「怪我のせいで、普段の反応が取れていないのですから、仕方ないと思います」
「…それでも…助けたかった…」
エリアスとアーサーは、会話をしながらも近づいている巨人に注意を向けていた。
「俺達もそろそろ行くか…」
「はい…傷は大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ」
エリアスは顔をしかめながら答えた。
バシュッ
エリアスとアーサーはアンカーを刺し、ガスを蒸かして本部を目指した。
「まだガス大丈夫?」
「はい、全然余ってます」
「じゃぁ余裕だね」
エリアスたちは、器用に巨人の隙間をくぐり抜けながら進んでいった。
しかしエリアスの身体には相当な負担がかかっていた。
エリアスは全身から汗が吹き出していた。
「…エリアス分隊長…」
そんなエリアスの姿を見て、アーサーは顔をしかめた。
バッ!!
「!?」
突如下から巨人が現れ、エリアスの身体を掴んだ。
「ぐ!!!」
エリアスは痛みに悶えた。
「エリアス分隊長!!」
「くそっ…」
エリアスは思い切り右腕を持ち上げて、巨人の指を切り落とした。
アーサーは、エリアスを掴んでいる巨人の後ろに回り込み、うなじを切り落とした。
ドサッ
「つっ…」
エリアスは巨人と一緒に倒れたが、巨人の腕から抜けだした。
「エリアス分隊長!!大丈夫ですか!」
「あ…あぁ…」
じわっ
アーサーはエリアスの身体を支えようと腰に手を回したが、ぬるっとした液体が手に付き、アーサーは自分の手のひらを見た。
そこには大量の血痕がついていた。
「!!」
エリアスの脇腹を見ると、前回の傷口が完全に開いており、真っ白なシャツが真っ赤に色を変えていた。
「エリアス分隊長!」
「…あぁ…大丈夫だ…それよりも…早く本部に行こう…みんなが心配だ…」
かすれた声でエリアスは答えた。
「…くそ!」
アーサーは自分の無力さを嘆いだ。
「…アーサー…今はそんな…ことをしている…場合じゃない…俺は…大丈夫だ」
「エリアス分隊長…」
エリアスは近くに倒れていた訓練兵の死体に近づいた。
「…守ってやれなく、ごめんね…」
アーサーはエリアスの隣に並んだ。
エリアスはしゃがむと、訓練兵の固定ベルトに手をかけた。
「どうしました?」
「…左腕に力が入らない…。アーサー、固定ベルトを使って、俺の左手にブレードを縛り付けてくれないか」
「…ですが…」
「両腕使えないのは、いざという時に困る。頼む…」
「…」
アーサーは何も言わずにエリアスに横に座り、訓練兵の死体から固定ベルトを外した。
外した固定ベルトを、エリアスの左手にブレードに固定させた。
「…ありがとう」
「…俺は…エリアス分隊長に…どこまでもついていきますから」
「…死ぬなよ」
「…はい…」
エリアスは立ち上がった。
「エリアス分隊長。とりあえず、簡単に傷口を止血します」
「…準備がいいな…」
「当たり前です」
アーサーはエリアスのシャツをめくり上げ、開いている傷口を止血した。
「行くぞ…」
「…はい」
ガシャン
「ミカサ…!?」
「危ねえ…もう空だ…やったぞギリギリ着いた!」
ジャンやライナー、そしてミカサたちも無事に本部に辿り着いた。
「お…お前…生きてるじゃねぇか!」
「やったぞアルミン!お前の作戦成功だ!」
コニーはアルミンの背中をバシバシ叩いた。
「みんな!あの巨人は巨人を殺しまくる奇行種だ!」
コニーは外にいる15m級の巨人を指さした。
「しかも俺達には興味がねぇんだってよ!あいつを利用して、俺達はここまで辿り着いた!」
コニーは興奮気味に言った。
それに反応したのはジャンだった。
「巨人に助けてもらった…だと?そんな夢見てぇな話が…」
「夢じゃない…!あの巨人により長く暴れてもらう…それが現実的に、私達が生き残るための最善策」
ミカサは当たりを見回した。
「…エリアス分隊長は?」
「あぁ…さっき襲われていた訓練兵を助けるために、戦っていた」
ジャンが答えた。
「…大丈夫なの?」
「は?あの人、すげぇ強かった。一瞬で巨人を2体殺してた。大丈夫だろ」
「…そう…。壁外調査に行かなかったと言っていたから、怪我でもしてるのではと思ったけど…」
「…確かにおかしいな…分隊長なら普通行くよな…」
ガシャン!
「せ…セーフ…」
ドサッ
「!!」
エリアスとアーサーが窓を突き破って、本部に辿り着いた。
アーサーはうまく受け身を取ったが、エリアスは怪我のせいでうまく受け身を取ることができなかった。
「エリアス分隊長!!」
アーサーはエリアスに駆け寄った。
「つっ〜…あー、くそ…」
「エリアス分隊長!」
ミカサとアルミンは、エリアスに駆け寄った。
「大丈夫ですか?!」
「…君…は…」
「アルミン・アルレルトです。エリアス分隊長、シャツが…」
アルミンはエリアスの血だらけのシャツを見て驚いた。
「…大した怪我じゃない…大丈夫だ。君たちが無事にたどり着いて、よかった…」
エリアスはゆっくりと立ち上がった。
「やはり…怪我を…」
「…ミカサ…大丈夫だ。そんな顔をするな」
エリアスはミカサの頭をゆっくりなでた。
「しかし…」
「さて、ここまで辿り着いたな。後は…この中にいる巨人だけだ…」
エリアスは顔を歪ませながらも、笑顔で答えた。