「はい。確か、加古先輩ですよね?六頴館の3年生」
「知っていてくれて嬉しいわ。あなたの話は二宮くんから聞いているの」
「二宮さんから」
「えぇ。同じシューターとして、仲良くしましょう。よろしくね」
「よろしくお願いします」
ロビーのソファーに座っていると、3年生の先輩の加古先輩から話しかけられた。
前に少しだけ話をした二宮さんも、同じ先輩だけど二人ともオーラがあってまぶしい。
「二宮くんたら、こんな可愛い子と知り合いだったのを隠してたのよ。ずるいわ」
「いえいえ、加古先輩もとてもお綺麗で。二宮さんとは仲が良いんですね」
「そうなの。とっても仲良しよ!」
「適当なことを言うな」
後ろから声がするので振り向くと、そこには二宮さんが眉間にしわを寄せて立っていた。
「あら二宮くんじゃない」
「おい苗字。こいつのいうことは適当だから真に受けるな」
おぉ。
圧倒的オーラの二人が揃ってしまった。
同じ高校生とは思えない、セレブなオーラでちょっと萎縮してしまう。
「同じ学校、同じシューター、それに女の子ってだけで運命を感じるわ」
「聞き流せ」
「でも、私も女性の知り合いが少ないので嬉しいです。周りに女性の隊員がいないので、ぜひ仲良くしてください」
「まぁ嬉しい。二宮くんももう少し素直になりなさいよ」
「余計なお世話だ。苗字、何かあれば聞け。俺でも出水でもいい」
「ありがとうございます」
そう言うと、二宮さんはC級ランク戦室のロビーを出ていった。
「わたしと二宮くんは同じチームなの」
「そうなんですね。確かに隊服が同じでしたね」
「そう。でもツンツンしちゃって素直じゃないのよね。最近の男の子ってみんなそうなのかしら?」
「うーん。どうなんでしょう」
加古先輩は私の顔をジーっと見つめていた。
「あ…あの、何か?」
「ん?苗字ちゃんは本当に可愛いわね。学校でもボーターでも噂になっていたから、気になっていたのよね」
「ありがとうございます。加古先輩には、ぜひシューターとしての心得などをお聞きできれば嬉しいです」
「もちろん。でも苗字ちゃん、堅いわ。もう少しラクに話してね!」
「わかりました」
そんな話をしていると、ソロランク戦をしに行った雅人くんと荒船くんが戻ってきた。
「あ?誰だこいつ」
「カゲ!先輩だぞ」
「あなたが噂の影浦くんね。まさに狂犬って感じの見た目ね」
「うるせー」
雅人くんはどんな噂になっているのだろうか。
敵意を向けてくる人たちすべてに威嚇をしているから、狂犬と言われても仕方がないけど、もう少し考えて行動をするように言わないとダメみたい。
「確か、六頴館の先輩だよな?」
「そうだよ。加古先輩」
「加古望よ。よろしくね。そしたらわたしは防衛任務があるから行くわ。またね苗字ちゃん」
「はい。ありがとうございました」
加古先輩が席を立つと、雅人くんと荒船くんがソファーに座った。
「お疲れ様。他のみんなはまだやってるの?」
「あぁ。今は犬飼とゾエが10本やってる」
「穂刈と当真はスナイパーだから、そっち行ってる」
「そっか。スナイパーは訓練場が別だっけ」
アタッカーとシューター、ガンナーはC級のブースでソロランク戦ができるけれど、スナイパーは別。
訓練場も別のところにあって、何をしているのか具体的なことは知らないから今度穂刈くんたちに聞いてみよう。
「女主人公はランク戦やらねーのか?」
「うーん。そうね。雅人くんとやると、ポイントをごっそり取られちゃうからな」
「なら俺とやるか?」
「アタッカー同士でやったほうがいいんじゃないの?」
「いいだろ、別に。俺も勉強になるし」
「じゃぁやろっか?」
「おう!」
私も体を動かさないとな、と思い承諾すると、雅人くんが何か言いたそうに見てきた。
「雅人くん?」
「あ?」
「どうしたの?」
「別になんでもねーよ。さっさと行け!」
手であっちいけ、というジェスチャーをされてしまったので、何も言わずに荒船くんと二人でブースに向かった。
「なんだったんだろう?」
「気づいてないのか?カゲはおまえとランク戦やりたかったんだろ」
「え?そうなの?」
「自分の誘いは断るのに、俺の誘いに乗ったから拗ねてるんだろ」
荒船くんの言葉に、まさかと思った。
振り返って雅人くんの様子をうかがうと、確かに拗ねているような顔をしている。
「うちの子可愛すぎません?」
「どこの子か知らないが、可愛いところはあるな」
クスクス、と笑うと荒船くんが顔をそらした。
「何?」
「至近距離で笑うな」
「なんという理不尽」
「レアな笑顔を真正面からうけたら死ぬ」
「私の笑顔は凶器かな?」
「同じようなもんだろ」
「ひどい」
空いているブースに入ると、通信をつないだ。
『とりあえず5本?10本?』
「そうね。とりあえず5本でいいかな」
『早く終わらさねーとな』
「ご機嫌斜めくんがいるからね」
『よし!終わったら今日はみんなでかげうらだな』
「いいね。久しぶりにお好み焼き食べよ」
荒船くんとの5本勝負は、3-2で私の勝ち。
まだまだ訓練生には負けられないけど、どんどん強くなってる荒船くんに焦る。
「荒船くん、どんどん強くなるね。今ポイントどのくらい?」
「今は3500くらいだな。あと少しでBに上がるぜ」
「ひゃー早いね」
「まぁもともとのスタートが少し高かったからな」
ブースを出て荒船くんと合流すると、ちょうどゾエくんと犬飼くんがいた。
「二人ともお疲れー!二人のソロランク戦見てたよ!苗字ちゃん、今度おれともランク戦しようよ」
「また今度ね」
「疲れたねーゾエさんお腹すいちゃった」
「ちょうどかげうらに行こうって話してたんだ」
「いいね!ゾエさん今ならお好み焼き何枚でも食べられるよ!」
「かげうらって?」
「雅人くんの家、実家がお好み焼き屋さんなんだ」
「そうなんだ。おれも一緒に行きたい!」
「カゲの家のお好み焼きは最高にうまいから楽しみにしてろよ」
「荒船くんが自慢げなのウケるね」
みんなでロビーに戻ると、雅人くんが気づいた。
「おせーぞおめーら!いつまでやってんだ!」
「ごめんごめん」
「今日はみんなでカゲん家行こうぜ」
「あ?」
「みんなかげうらの気分なんだって」
「仕方ねーな。うめぇお好み焼き食わしてやるよ!」
いつの間にか機嫌が直っていてよかった。
荒船くんと一緒に前を歩く雅人くんの横顔が、楽しそうで何よりです。