何にもない日なので、私と雅人くんは隣町の観光名所に遊びに行くことにした。
「すごいね」
「たけーな」
三門市の隣町に、新しい超高層ビル、タマガタワーができた。
たしかにこれは観光名所になりそうだ。
「三門市にもこんな大きなビルないのにね」
「無駄にたけーな」
「いろんなお店が入ってて、今人気みたいだね」
「人がやばそうだな」
「もし辛くなったら言ってね」
「こういうとこに来るやつは、他人のことなんか気にしてねーだろ。さっさと行くぞ」
「うん!」
そう言うと、雅人くんは私の手を取ってタマガタワーに向かった。
「先に何か食べる?」
「だな」
時間を見るとお昼過ぎ。
私たちはフードコートのあるフロアを目指す。
フードコートはかなり広くて、色々なお店が入っていた。
「何食べようか」
「ラーメン」
そんな話をしていると、「あれ、苗字さんと影浦さんじゃん!」と声をかけられた。
振り返ると、そこには米屋くんと三輪くん、そして古寺くんがいた。
「わー偶然だね!」
「何してるんですか?」
「見りゃわかんだろ」
「デートっすね」
「そういうこと」
「邪魔してすみません。陽介、おまえは空気を読め」
「えー、いいじゃんかよ」
「三輪先輩の言う通りですよ!」
「気にしないで。3人は何してるの?」
「レポートやりにきました!」
「レポート?」
とりあえず、私たちはみんなでお昼ご飯を買って一緒に食べることにした。
三輪くんが「陽介、少しは遠慮しろ」と米屋くんに言ったけれど、「苗字さん頭いいから色々聞けんじゃん!」と返していた。
雅人くんとはまた来ればいいから、そこまで気にしないでほしい。
「お!影浦さんもラーメンっすか」
「おう。うまそーだったからな」
「オレもです!」
「それで、何のレポート?」
「学校の。オレたちの学年はレポート提出必須で、下の歴史博物館に行こうと思ってるんです」
「おれはただ巻き込まれただけなんですけどね」
「たしかに、古寺くんはレポートないよね?」
私が2年の時も六頴館ではそのような課題は出なかったはず。
「ないですよ。なぜか連れてこられました」
「奈良坂も誘ったんですけどね、断られました」
「当たり前だろ。自分のレポートなんだから、自分でやれ」
「秀次きびしいー」
「雅人くんもやった?」
「あー…やった記憶はねぇな」
「それで大丈夫なの?」
「大丈夫だから3年なんだろ」
「それもそっか」
ご飯も食べ終わり、私たちはこのまま展望室に、米屋くんたちは下の歴史博物館にそれぞれ向かうことになったので、ここでお別れだ。
「じゃ、苗字さん、影浦さん!邪魔してすみませんでした!」
「気にしないで」
エレベーターに向かうと、エレベーターの前の店員さんが「申し訳ございません。只今エレベーターが故障しております。原因を究明中ですので、今しばらくお待ちください。お急ぎの方は、非常階段をご使用ください」と言っている。
「あれ?」
「故障か?」
「エレベーターの故障っすか?」
「だから早く下に下りてればよかったのに!」
「おまえ、ここのメシうまそうに食ってただろ」
「それはそうですけど…」
「ならおまえに文句を言う資格はねぇな!」
ギギギギギ
なんだかエレベーターから異音がするみたい。
これは本格的に壊れているようだ。
と、思っているとエレベーターの扉が開き、中から小さなクモ型のトリオン兵が出てきた。
「な!」
「マジかよ」
「ありゃもしかして」
「トリオン兵!?」
三輪くんがいち早く前に出て、トリオン体に換装する。
「全員下がれ!トリガーオン!」
三輪くんが弧月でトリオン兵の弱点を斬る。
「やった!」
「秀次、まだだ!」
「なんで!?」
弱点を斬ったはずなのに、トリオン兵は再生して元の姿に戻ってしまった。
「再生してるだと…」
その場に座り込んでいる店員さんに「邪魔だ!早く行け!」と三輪くんが声をかけるので、私は「こちらに!」と言って彼女の手を取った。
「ありがとうございます」
「ここは危ないので、避難していてください」
「トリガーオン」
米屋くんと古寺くんが換装したので、私と雅人くんも換装する。
「トリガーオン」
「皆さん下がってください!僕たちはボーダーです」
古寺くんがお客さんをエレベーターから遠ざける。
「今こいつ再生しやがったな。どういうチートだよ」
「ふざけた野郎だ…」
「わからないが、こつもネイバーなのは間違いない。全て排除する」
三輪くんはそういうと、トリオン兵と向き合う。
「古寺!客が邪魔だ!階段から下のフロアに逃がせ!」
「了解!みなさん、階段から逃げてください」
三輪くんの指示通り、古寺くんはお客さんを下のフロアに逃がすよう、非常階段に近づいた。
「私も手伝う」
「ありがとうございます」
非常階段を開けようしたら、開ける前に扉が開いて中から人が現れた。
「助けてくれ!」
「どうしたんですか?」
「下にでかいのがいる!」
私は非常階段をのぞき込むと「げ!」と思うくらいミニサイズのクモ型トリオン兵がこちらに向かってきていた。
「古寺くん!」
とっさに古寺くんを呼ぶ。
古寺くんがトリオン兵に向かって狙撃したので、私もアステロイドを撃ち込んだ。
ただ、あまりのクモ感に気持ち悪くなりそうだった。
「三輪先輩!下からミニサイズのクモが大群であがってきてます」
「女主人公!おめー大丈夫か?」
「…ギリギリ…」
これは虫じゃなくて、トリオン兵、トリオン兵だから虫じゃない…と言い聞かせる。
なんで虫みたいな形のトリオン兵が多いの。
「とりあえず、非常階段を封鎖しよう」
「そうですね!」
米屋くんと雅人くんが、大きなクモ型と戦っている。
二人で何回か攻撃をして、ようやく一体倒すことができた。
「…なんで再生するんだろう…」
「膨大なトリオンが必要なはずですね」
「どんなからくりだよ!」
そんな話をしていると、三輪くんと米屋くんに、三輪隊の月見さんからの通信が入った。
『三輪くん、聞こえてるわね?無事でよかったわ。奈良坂くんもきてる』
「おせーよ奈良坂!」
『これでも全速力で来たんだ』
『西棟も東棟も、トリオン兵が外壁を守るようにくっついているの』
「こっちは63人ほど一般人が取り残されている。ただ、それ以上に少なくとも40人近い人間が攫われている」
三輪くんがそう伝えると、月見さん携帯電話の反応を調べた。
『東棟の展望室にいるみたい』
「そこから狙撃できるか?」
『試してみる』
奈良坂くんは外からトリオン兵に向かって狙撃したけれど、やっぱり外のトリオン兵も再生したみたい。
『再生した』
「やっぱりか」
「分が悪すぎますよ!おれたちここじゃあベイルアウトも使えないのに」
「本当ね」
「この再生にかかる膨大なトリオンはいったいどこからきているんだ…」
私たちが話をしていると、鬼怒田さんから通信がつながった。
『話は聞かせてもらった。再生するのは、人質になった人間から直接トリオンを吸い取って使っているからだろう。最新のトリオン兵には、吸い取ってトリオンをそのまま使うことができるようだ。トリオン兵たちのエネルギーとして使われていると予測される』
「そうなんですね…」
「だとしたら、どーすりゃいいんだ」
鬼怒田さんの話を聞いて、少し考える素振りを見せる三輪くん。
「…俺と陽介は東棟の展望室に向かいます。多分、そこに人質になった人間と、ここのボスがいるはずです」
「お、やるか!」
「苗字さんと影浦さん、古寺はここを死守してください」
「おめーら二人で大丈夫か?」
「はい。ここも何があるかわからないんで」
「何かあれば呼べ」
「ありがとうございます」
「二人とも気を付けてね」
「苗字さんもね!」
そう言うと、二人はエレベーターから下に下がって行った。
「非常階段も破られる可能性があるからな」
「そうだね。二人がボスを倒し終わるまで、私たちはここで戦おう」
「はい!」
階段から上がってきたトリオン兵と戦いながら、三輪くんたちがなんとかしてくれるのを待った。
幸い、そんなに時間はかからずボスを倒してくれたので、私たちは無事に地上に下りることができた。
下に下りると月見さんと奈良坂くん、そして当真くんも来ていた。
「カゲに苗字ちゃん」
「当真くん」
「俺のおかげで助かったろ」
「おせーよ」
当真くんが持ってきてくれた風刃のおかげで、再生するトリオン兵のボスを倒すことできたので、たしかに当真くんのおかげだ。
「にしても災難だったな。せっかくのデートだったんだろ」
「本当。この前出かけたときも、イレギュラーゲートに巻き込まれちゃったし」
「だな」
この場は本部の人たちに任せて、私たちはそのまま解散になった。
次こそはゆっくりお出かけしたいな。