体育祭01

「会長ー」
「なんだ?」
「ちょっと相談」
「荒船が俺に相談なんて、めずらしいな」

荒船は生徒会長である蔵内のもとを訪ねていた。

「今年もまた体育祭があるだろ」
「そうだな。もう来週だな」
「…借り人・物競争に出るやつは借りられないってルールにならないか?」
「ならないな」
「…そこをなんとか!」
「そんな簡単にルール変更はできないだろ」

蔵内の言葉に、荒船はわかりやすく落ち込んだ様子を見せた。

「どうしたんだ?」
「…女主人公を俺以外のやつに借りられたくない…」
「そんなことか?大丈夫だろう、苗字もちゃんと自分で断る」
「…押しに弱いからなー」
「だとしても、苗字なら大丈夫だろ。今年は苗字も出るのか?」
「じゃんけんに負けてた」
「それは楽しみだな」

予鈴が鳴ったので二人の会話はそこで終わった。
二人は生徒会室を出ると、教室に向かう。

「荒船は苗字のことが好きなんだな」
「死ぬほど好きだな」
「すごいな。おまえと苗字のことを知ってるやつは、苗字を借りようとは思わないんじゃないか」
「だといいんだけどな」

教室の前で二人は別れる。
荒船が教室に入ると、女主人公が読んでいた本を机に起き、顔を上げた。

「おかえり」
「おう」
「どこに行ってたの?」
「生徒会室」
「生徒会室?何しに行ってたの?」
「会長に相談してた」
「荒船くんが、めずらしいね」
「会長にも同じこと言われたわ」
「それで、解決した?」
「…微妙」
「そうなの?」
「まあ…大丈夫だと思う」
「それならいいけど」







「えっと、今年の部活対抗リレーは普通のバトンを運ぶのではなく、人を運ぶことになりました」

学級委員長の言葉に荒船は驚いた。

「ルール変わってやがる!」
「本当ね」

「それぞれ部活のマネージャー、マネージャーがいない部活は誰か一人選んでください。その人をおんぶして走ることになります。リレーに出る人数は5人。出る人が決まったら、それぞれ部長が紙に書いて提出してください」

荒船以外の人間も驚いているが、ルール変更は荒船が一番驚いていた。

「ルールは簡単に変えられないって言ってたくせに…」
「?」

荒船がなぜこんなに驚いているのか女主人公には理解ができなかった。



今年もボーダーは部活として認められたので、部活対抗リレーに出る。
ということで本日の昼休み、早速ボーダーのメンバーは空き教室に集合して、部活対抗リレーに誰が出るか、誰がバトンをするかの話し合いをすることにした。

現在、六頴館に在籍している隊員は全部で18人。

「今年は多いね」
「たしかにな」
「じゃあ会長が仕切って進めてー!」
「俺か?わかった」

犬飼に指名された蔵内が話を始める。

「そしたら今日、みんなもクラスで聞いたと思うが、部活対抗リレーに誰が出るか、バトンをするのは誰かを決めよう」
「了解です」

「リレーは脚が速い人が出ればいいじゃん」
「そうだな。やっぱり荒船さんですね」
「おまえもだろ」

歌川に名指しされた荒船は、そのまま歌川を名指しし返した。

「この二人は確定でいいでしょ」

菊地原の言葉に全員がうなずき、満場一致で二人は確定した。

「あと3人か」
「一条くんも脚が速そうだよね」
「いいですよ!あとはどうする?」
「運動能力でいくと、辻くんと犬飼先輩かな」
「おれはいいけど、辻ちゃんもそれでいい?」
「はい」

「そしたらリレーに出るのは、荒船、犬飼、辻、歌川、一条の5人だな」

リレーに出るメンバーはサクッと決まったので、蔵内は提出用の紙に名前を書いていく。

「あとはバトン役か」
「バドンは背の低い女子か、体重の軽い女子でいいでしょ」
「女性に体重を聞くのは…」
「苗字先輩、どうせ軽いんでしょ?」
「菊地原くん、少しは質問するのを躊躇しなさい」

菊地原のどストレートな質問に女主人公は少しあきれて答えた。

「私、身長があるからそんなに軽くないよ」
「苗字先輩って何センチですか?」
「162センチだよ」
「私と同じですね!」

話が脱線していく女子を「そういうのはあとでな」と言って蔵内は話を戻す。

「おれは苗字ちゃんでもいいけど」
「えー…私重いよ?」
「背が低いのは染井と氷見と三上か?」
「そうですね」
「わたしはバトン役、遠慮します」

染井はキッパリと否定した。

「決まんないじゃん。お腹空いたんだけど」
「きくっちーはツンツンなんだから」
「うるさいなー。もう苗字先輩でいいじゃん」

「女主人公はだめだ」

菊地原の言葉を、女主人公ではなく荒船がキッパリと否定する。

「なんで荒船くんが答えるの」
「おまえが俺以外の男に背負われてる姿を見んのが嫌なんだよ」
「まったくもう」
「お二人さん、そういうのは二人の時にやってね」

女主人公と荒船のやり取りを聞いて、犬飼はあきれながらそう言った。

「いやー、見せつけてくれますなー!」
「苗字先輩と荒船さんラブラブですね」
「仲が良くて微笑ましいです」

「もー、決まんないじゃん。それなら荒船さん案だしてよ」

菊地原にそう言われた荒船は、辻の前に立つ。

「え?」
「おい辻。おまえ、氷見じゃないとおんぶできないよな?」
「あ…まあ…はい、そうですね」
「氷見で決まりだ」
「圧がすごい…」

蔵内は氷見に「いいか?」と聞いた。

「わかりました。私は大丈夫です」

と答えたが、女主人公の方を見て「苗字先輩はいいんですか?」と聞いた。

「何が?」
「荒船さんが私のことおんぶすることになるんですけど、大丈夫ですか?」
「うん、全然大丈夫だよ」
「わかりました。それなら大丈夫です」

「よし。じゃあバトン役は氷見で提出しておくな」
「みんなおつかれー!」
「もう戻ってもいい?お腹空いた」
「大丈夫だよ」

それぞれ自分たちの教室に戻って行く。

「荒船くん、私たちも教室に戻ろう」
「おう…」

女主人公の言葉を聞いて、地味にショックを受けている荒船がいることに、犬飼だけはなんとなく気づいていた。



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