隊長会議に出席した影浦は、隊長会議を仕切っていた東から渡された紙を見ていた。
「そしたら今日はこれで終わりだ」
「あーだりぃ」
「最後に一つ、広報部からお願いがきてる」
東はそう言うと「渡した紙の一番最後を見てくれ」と言った。
「B級以上の隊員、つまり正隊員のプロフィールブックを作ることになった。期日までに各隊の隊員のプロフィールを提出するように」
「は?」
「市民にもっとボーダーのことを知ってもらう広報活動の一環として販売するそうだ」
東の言葉に、少し困惑気味のB級隊長たち。
「東さん、これは個人情報の漏洩につながるのでは?」
「そこは無理のない範囲で答えてくれれば問題ない。それに記入してほしいのは基本的な情報くらいだからな。プライベートな質問はほとんどないから安心してくれ」
「わかりました」
二宮は東の言葉に納得し、席を立った。
「めんどくせー」
「広報の考えることも色々だな」
「こんなんやる意味あんのか。二宮も言ってたけど、個人情報大丈夫か?」
「質問の内容は後でメールが来るんだろ?それを見てからじゃないとわからないな」
影浦と荒船は話をしながら廊下を歩いている。
「今日の夕方に連絡が来るって言ってたな」
「あとでやっか」
「かげうら行こうぜ」
「こういうめんどくせーもんはとっとと終わらせるにかぎる」
二人はそれぞれ作戦室に戻り、夕方また集合することにした。
かげうらには、影浦、北添、女主人公、荒船、穂刈が集まっていた。
「これがプロフィールブックの質問事項?」
女主人公は広報部から遅れられてきたメールを確認する。
「最初は簡単なプロフィールだね」
「名前、ポジション、年齢、誕生日、身長、血液型、星座、職業、好きなもの…後は家族構成か」
「オンパレードだな、個人情報の」
「たしかに…これいいのかな?」
プロフィールの下は、ボーダー入隊の時期や異性の好みを聞くものだった。
「聞く意味あんのか?」
「興味あるのかな?」
「気になるんだろ、一般市民は」
「ゾエさんたちはいいけど、女主人公ちゃんは答えにくくない?」
「まあ…このくらいなら大丈夫かな?」
とりあえず、5人はそれぞれ情報を打ち込んでいく。
「ポジションは今のでいいんだよな?」
「そうだね」
「身長とか、覚えてねぇよ」
「雅人くん、この前身体測定したって言ってたじゃない」
「意外とでかいよな、苗字は」
「そう?」
「女主人公ちゃんは大きく見えないよねー」
「たまに言われる」
好きなもので手が止まる女主人公。
「好きなもの…って質問が大きすぎない?」
「たしかにな」
「雅人くんなんて書いたの?」
女主人公は影浦の画面をのぞき込む。
「好きなもの、寿司、焼き鳥、漫画、作戦室でダラダラ…雅人くん可愛いわね」
「うるせー」
「この見た目でうさぎ座ってのも可愛いよな」
「オレもだぞ」
次に北添にも聞いた。
「ゾエくんは?」
「えっとねー、いちご、春巻き、丼物、麻雀にしたよ!」
「ほとんど食べ物…」
「麻雀って、高校生の好きなものか?」
次は荒船。
「荒船くんはお好み焼きよね」
「お好み焼きだな」
「間違いない」
「大正解だ。お好み焼き、冷奴、アクション映画、お茶」
「お茶って!」
「お茶!」
「お茶にツッコみすぎだろ!」
次は穂刈。
「穂刈も大体想像できんだろ」
「わかるか、オレの好みが」
「えーっと、鶏肉、生野菜、筋トレ、お祭り…想像通りだねー」
「筋トレ好きな人の食事って感じだな」
「穂刈くん筋肉すごいもんね」
「触ってみるか、オレの筋肉を」
「遠慮しておくね」
最後は女主人公。
「おめーはどうなんだよ」
「えー、これはトップシークレットということで」
「これ販売されるんだぞ」
「そしたら実際の本で確認してね」
そう言って女主人公は次の質問をした。
「それじゃあ次、異性の好みは?」
”元気明るい””見た目がいい””おとなしい落ち着いてる””性格がいい”が四方向に書かれていて、当てはまる位置にチェックを入れる方式だ。
「オレはここだ」
穂刈は”元気明るい”側に寄っていて、見た目に関しては真ん中の位置にチェックを入れた。
「想像通り」
「穂刈くんは元気で明るい子が似合うね」
「ゾエさんも同じくらいかなー!」
そう言うと、北添も穂刈と同じような位置にチェックを入れる。
「二人とも見た目は特に気にしないんだね」
「うん」
「気にならないな」
次に荒船がチェックを入れる。
「え、意外ー!」
「おとなしい落ち着いてる側だとは思わなかったな、荒船が」
「前に言ってたね」
「俺はおとなしくて落ち着てるやつが好みなんだよ」
「見た目よりも性格って、本当かよ」
「性格いい方がいいに決まってんだろ」
「雅人くんはどこに入れるの?」
女主人公が聞くと、影浦は”おとなしい落ち着いてる”側の”性格がいい”にチェックを入れた。
「カゲ…」
「そうだよな、サイドエフェクトのことがあるもんな」
「こっちだろう、おまえは」
「あ!おいこら!勝手に変えんな!」
穂刈は性格がいいから見た目の一番上にチェックを入れようとする。
「まあ女主人公のこと考えたらこっちだな」
「えー、でも女主人公ちゃんは見た目もいいし性格もいいから難しくない?」
「そんなこと言っても何も出ないよ」
「好き勝手言ってんじゃねー!」
穂刈に変えられたチェックを元に戻す影浦。
「見事に分かれたね」
「穂刈とゾエは明るい方がいいっていうのは、納得だな」
「荒船くんがそっち側なのが意外なんだよー」
「雅人くんは想像通りだね」
「女主人公ちゃんはどこなの??」
北添は女主人公にも聞く。
「うーん、私は特に好みってないけどなー」
そう言いながら女主人公は画面を見る。
「でも、私もゾエくんたちと同じようなところかな」
「この辺りが無難だよねー」
「うーん、でも好みとかないからやっぱり真ん中かな」
「ど真ん中!」
記入が終わったので、それぞれ広報部に送信した。
「これ、いつ発売するのかな?」
「正隊員だけって言っても、結構人数いるから大変だよね」
「発売したらとりあえず買うか」
「もらえるんじゃないのか?オレたちは」
「そうだといいな。他のみんなの回答が気になるよね」
後日、ボーダー正隊員のプロフィールブック”BBF”が発売された。
発売されたプロフィールブックは正隊員に1冊ずつ配られた。
中身を見てみると、かなりの大ボリュームでボーダーに少しだけ詳しくなれる内容だった。
異性の好みグラフを見てみると、ど真ん中にいたのは女主人公以外にもう一人、佐鳥だけ。
「これじゃあ私も佐鳥くんみたいに男の子なら誰でもいいみたいに思われない?」
「大丈夫だよー!佐鳥くんは女の子大好きって公言してるけど、女主人公ちゃんはそんなことないし!」
「佐鳥くんと同族に思われるのはいや!」
珍しく、女主人公の大きな声がボーダー内に響いたのであった。