「すみくん!諏訪さんに弟子入りしたよ!」
ノックもしないでおれの部屋のドアを開けた女主人公は、嬉しそうな顔でそう言った。
「そうなんだ」
「うん!ついでにチームにも入れてもらった!」
「は?」
へぇ、おれにあいさつもなしで女主人公をチームに入れたんですか。
まあいいけど、おれに相談もせずこんな大事なことを決めちゃうなんて、女主人公も酷いな。
しかもついでって言ってたけど、弟子入りよりチーム入りのほうが大事じゃない?
「諏訪さんってあの、ガンナーの人だよね?金髪でタバコ吸ってる」
「うん!見た目はあんな感じだけど、実際は面倒見がいいお兄ちゃんって感じだよ!」
「ふーん」
「諏訪さんのお兄ちゃん感がすごいよ!」
「ここに本物のお兄ちゃんがいるんだけど?」
「すみくんはすみくんじゃん」
「そうだけどさー」
本物のお兄ちゃんを差し置いて、そんなことを言われる諏訪さんに少しばかり嫉妬してしまう。
「他は誰がいるの?」
「堤さんと、アタッカーで笹森くんって子が入るんだって!」
諏訪さんも堤さんもガンナーだから、女主人公も入ると三人ガンナーになってしまう。
そこでアタッカーを一人入れるのか。
「本当はチーム作ろうかなって思ったんだけど、諏訪さんに女主人公にはまだ早いって言われちゃった」
「それはおれも同感」
女主人公が隊長をやっている姿は想像できないし、なにより女主人公が知らない人間とチームを組むのはおれが許さない。
諏訪さんと堤さんなら成人してるし、そのあたりの常識はありそうだから少しだけ安心。
「オペレーターは1年生のおサノちゃんなんだけど、元モデルでとってもかわいいんだよ!」
「女主人公もかわいいよ」
「ありがとう!」
次の日、ボーダー本部で諏訪隊を見つけたので声をかけることにした。
「諏訪さん」
「おー、犬飼」
「こんにちは、犬飼先輩!」
「こんにちは。ここ、座っても?」
「いいぜ」
空いている席に座らせてもらう。
「あの、女主人公は?」
「あいつはおサノと作戦室でだべってる」
「仲良いんだよ、あの二人」
「そうなんですか。そういえば諏訪さん、女主人公をチームに入れてくれてありがとうございます」
「自分の隊もちてーとか言ってっから、まずは隊員やれって思っただけだよ」
「止めてくれてありがとうございます」
「犬飼、おめーも苦労すんな」
正直、女主人公に隊長は向いていないから諏訪さんが引き留めてくれて助かった。
「おめーら本当に双子か?」
「双子ですよー」
「たしかに雰囲気は似てるよな」
「顔の造りも似てますよね」
「どんな遺伝子してやがる!無駄にキラキラしやがって!」
「そんなことあるから困っちゃいますよねー」
「少しは謙遜しろ!似てんのは顔だけだな!」
そんな話をしていると、ラウンジの入り口がざわついた。
「なんだぁ?」
ざわついている方を見ると、女主人公と小佐野ちゃんがラウンジの入り口にいた。
二人が並んで歩いている姿に周りの男子は釘付けだ。
「二人が並んでいると本当に絵になりますね」
「おサノは元モデルだからな。それに引けを取らない女主人公もすごいな」
「おれの妹ですからね!」
あーあー、デレデレしている周りの男子には目もくれず、女主人公はおれたちが座っているテーブルに向かって歩いてくる。
ここまで周りの視線に鈍感なのも考えものなんだよね。
「あ!すみくん!」
「女主人公」
「何してるのー?いるなら連絡くれればよかったのに!」
「少し諏訪さんたちとお喋りしてただけだよ」
「そっか!あ、この前話たおサノちゃん!かわいいでしょー」
「うん。二人ともかわいい」
「当然」
「おサノちゃんさすがー!」
はじゃいでいる女主人公、わが妹ながら本当にかわいいな。
「犬飼、おめーはシスコンか」
「あれ、声に出てました?」
「バッチリ」
「でもしょうがなくないですか。うちの妹、どう見てもかわいいでしょ?」
「シスコンだな」
「まあたしかにかわいいな」
「堤さんならわかってくれると思ってましたよ」
女主人公と小佐野ちゃんが隣の席に座って話をしている。
「あそこだけ空気が違いますね」
「でしょー。というか、みなさん女主人公のこと名前で呼んでるんですね」
「仕方ねーだろ。犬飼呼びじゃあどっち呼んでんのかわかんねー」
「まあいいですけど」
「こいつ妹が絡むとめんどくさいな!」
「お兄ちゃんってそんなもんですよ」
「そーかよ」
諏訪さんは、心底めんどくさいって顔をしていた。
「すみくんはどっちがいいと思う?」
隣の席に座っている女主人公が、小佐野ちゃんと見ていた雑誌をおれに見せてきた。
女主人公が見せてきたのは秋の新作ワンピース特集というページで、ワンピースを着たモデルたちが澄ました顔をしてポーズをとっていた。
「もう秋物なんだね」
「洋服は早いの!」
「女主人公にはこっちが似合いそうだよー」
「そうかな?」
「えー、女主人公は赤でしょ」
小佐野ちゃんが指さしたワンピースではない方を指さす。
女主人公は赤とか黄色とか明るい色が似合うけど、秋物ワンピースはシックな色合いが多い。
だけど、このワンピースはワインレッドがベースで、ポイントに赤色のチェックが入っているから女主人公にも似合いそうだ。
「おサノちゃんもすみくんも真逆の意見言わないでよー。余計迷っちゃう」
「女主人公はかわいいからなんでも似合うよ」
「それはすみくんの意見でしょ」
「あたしもそう思うよー」
「えー、おサノちゃん好き!」
「あたしも好き」
そう言って女主人公は小佐野ちゃんに抱きついた。
「あ!女主人公!簡単に抱きついたらダメでしょ!」
「おサノちゃんは女の子なんだからいいでしょ」
「そういう問題ないじゃないの。離れなさい」
「いぬかい先輩、嫉妬は見苦しいよ」
「はいはい」
小佐野ちゃんの言葉は無視して、おれは女主人公を小佐野ちゃんから引き離す。
「小佐野ちゃんが女主人公に惚れちゃったらどうするの」
「そんなことあると思う?」
「あると思うから言ってるの」
「もう遅いー。すでにあたしは惚れてるよ」
「おサノちゃんかわいいー!」
「冗談でもそういうこと言わないで!」
おれたちが騒いでいると、それを見ていた諏訪さんがあきれたような声で「めんどくせぇ」と言った。
「女の子同士で微笑ましいですね」
「そこに犬飼がいんのが気にいらねー」
「犬飼先輩すごいですね。あそこに入っても違和感がないです」
「それはそれでどうなんだ」
「犬飼は本当に女主人公のことが大事みたいですね」
「だな」