04

女主人公が諏訪隊に入って、B級ランク戦に出るようになってから、今まで以上に目立つようになってきた。
かわいいから仕方ないんだけど、おれの知らないところで女主人公の噂話をしているやつがいるのはちょっと気になる。
純粋にかわいいと思ってるだけならいいけど、下心があるならおれが排除しないと。

「すみくん、今日知らない人から渡されたの」
「すぐに捨てて」
「捨てたら可哀想じゃない?」
「だってこれ手作りっぽくない?何が入ってるかわからないから捨てなさい」
「それもそうだね」

おれは女主人公の持っていた、かわいくラッピングされたお菓子を見てそう言った。
こんな何が入ってるかわからない手作りのお菓子を女主人公に渡すなんて、たとえ女でもどうかしてる。
受け取る女主人公も女主人公だけど、多分相手に邪な気持ちがあるとかまったく考えずに、純粋に受け取ったんだろうな。
裏表のない性格で、誰からも愛される女主人公は、こうやって好意を持たれることが多いけど、たまに、とんでもない男がいるから、お兄ちゃんは心配なんです。

「手紙ももらったよ」
「読まずに捨てよう」
「手紙も?」
「手紙も」

きっと、ろくなことが書いてない。

「すみくんが言うなら捨てるね」
「おれが捨てておくね」

おれは女主人公からお菓子と手紙を預かった。

「…おまえ過保護すぎんだろ」

そんなおれたちのやり取りを見ていた荒船くんが、ボソッとそう言った。

「仕方ないよ、女主人公はかわいいから」
「すみくん過保護ー」
「女主人公がかわいいのがいけないんだよ」







女主人公は防衛任務の時間になったので、諏訪隊と合流して外に出た。
ラウンジにはおれと荒船くんの二人。

「おまえ、やりすぎだろ」
「そうかな?」
「あれじゃあ自分で危機感持つの、難しくなるだろ」
「そうなんだよね」
「わかっててやってんのかよ」
「わかってても過保護になっちゃうんだよ!なんてったっておれのかわいい妹だからね!」

おれの返答に、心底あきれてます、という顔をする荒船くん。
失礼だなーと思っていると、後ろに座っている男から女主人公の名前が出たのでおれは聞き耳を立てた。


「やー、やっぱり犬飼さんはかわいいな」
「たしかに!小佐野さんと二人でいると、まじで目の保養になるよな!」
「付き合いてー!」
「今度声かけてみようぜ」
「相手にされるか?」
「おまえは無理だろ!」
「うるせー!」
「押しに弱そうじゃん、犬飼さん。ワンチャンあるって!」
「悪い顔してんなー」


なんて会話をしているんだ、この男たちは。

「おい、犬飼…」

おれは荒船くんの呼びかけを無視して席を立つ。
そして、後ろの席に移動して、話している男たちのテーブルの横に立つ。

「犬飼さんと付き合いてー!」
「な!…っておい!」
「ん?」
「犬飼先輩!」

「やあ」

おれはにっこりと笑った。

「あ…あの…」
「すみません…」
「なんで謝るの?」
「いえ…」
「たしかに女主人公はかわいいよねー。押しにも弱いしおれも心配してるんだ」
「…」
「でも、きみにワンチャンはないかな。そういう話、するのは勝手だけど女主人公の耳に入らないようにしてくれる?純粋な女主人公が穢れるから」
「…」
「わかったら返事」
「は…はい…」
「すみませんでした…」

反省している様子なので、この辺にしておいてあげよう。
でも顔は覚えたから、次に何か女主人公のことで変な話をしていたら徹底的にわからせてあげる。
おれは満足したので席に戻る。

「…おまええげつねーな」
「そう?大事な妹のことを、あんな風に話されてたら許せないよ」
「目がマジだった。笑ってない」
「えーあんなにやさしく言ったのに?」
「あれでやさしいのかよ」
「まだ顔を作る余裕があったじゃん」
「たしかにな」

おれの言葉にちょっと荒船くんが引いてる。
けど本当のことなんだから仕方ない。

「女主人公もめんどくせー兄貴を持ったな」
「ひどい!女主人公のことが大事だから守ってるの!」
「守るってレベルじゃねーだろ」

誰になんと言われようと、おれはこのまま女主人公を守り続けるけどね。

「女主人公に彼氏ができたらどうすんだよ」
「なんてこと言うの!やめてよ!女主人公に彼氏はまだ早い!」
「まだって…もう高2だろうが」
「蝶よ花よと育てた女主人公を、どこの馬の骨ともわからない男に奪われるなんて許せない!」
「おまえが育てたわけじゃないだろ」

おれも育てたようなもんだ。
女主人公は犬飼家の末っ子として生まれて(双子だけど、おれよりもあとに生まれたから末っ子ポジション)、両親と二人の姉、そしておれに大事に大事に育てられた。
みんな、末っ子が一番かわいいから、それはそれは大切に大切にしてきた。

「おれたちが認める男じゃないと、女主人公は渡せないね」
「どんな男ならいいんだよ」
「とりあえず、女主人公はイケメン好きだからおれよりイケメンじゃないと認めない」
「一気にハードル上がったな。一応おまえもイケメン枠なんだから、それ忘れるなよ」
「一応ってなにさ!おれはイケメンなの!」

そう考えると、ボーダーにはおれと同じくらいイケメンが結構いる。
今、目の前に座っている荒船くんだって、顔は少し怖いけどイケメンだと思う。
そして、女主人公がずっと言っている嵐山さん。
女主人公は王道のさわやかイケメンが好きだから、まさに嵐山さんは女主人公の好みのど真ん中だ。
ボーダーNo.1イケメンの烏丸くんや奈良坂くん、同じチームの二宮さんや辻ちゃんだってよく見るとイケメンだと思う。

「もしかして…ボーダー辞めさせたほうがいい?」
「どうしてそうなった」
「女主人公の好みのイケメンが見つかっちゃう」
「そうかよ」
「女主人公に好きって言われて好きにならない人間はいないもん!」
「おまえな…というか、女主人公はちゃんと人を好きになったことあるのか?」

荒船くんにそう聞かれて少し考える。
たしかに、女主人公はアイドルや舞台俳優にキャーキャーしてるけど、実際に同級生や先輩、後輩を好きになったという話は聞いたことがない。
まあ、おれがフラグを折りまくってるからかもしれないけど。

「…いないかも」
「まだ恋愛自体したことないなら、彼氏なんてとうぶんできないだろ」
「そうだけど、万が一があるじゃん!」
「しらねーよ」
「ちなみに荒船くんは?」
「は?」
「おれの妹、かわいいでしょ?」
「…どう答えても嫌な予感しかしない質問してくんな」
「答えられないってどういうこと!」
「おまえ、まじで女主人公が絡むとめんどくせぇな!」

おれの妹は世界一かわいいに決まってるじゃん!



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