05

今日も学校帰りにボーダーに向かう。
女主人公に、もうすぐ着くよと連絡をしたけれど、既読になっただけで返事がこない。
おかしいな?
いつもなら、ちゃんと返事をくれるのに。
これは何かあったかな?
それとも、ソロランクでも始めたとかかな?
とりあえず、おれは急いでボーダーに向かうことにした。



「すみくん…」
「わっ!女主人公!?どうしたの?」

ボーダーについて女主人公を探しながら歩いていると、後ろから女主人公に声をかけられた。
いつもなら笑顔で名前を呼んでくる女主人公が、今日は落ち込んだ様子で元気がない。

「何かあった?」
「…わたし…嫌われるみたいなの…」
「誰に?」
「…影浦くん…」
「カゲ?」

女主人公と同じ学年で、おれたちよりも先にボーダーに入隊した影浦雅人。
彼には、自分に向けられた感情が肌に刺さるというサイドエフェクトがあるけれど、女主人公が嫌われる要素が見当たらない。
おれはカゲに嫌われているらしいけど、女主人公がカゲに対して何か言ったりすることは想像できないし、おれみたいに感情と外面が一致しないとかもない。
負の感情なんて、ないに等しいおれのかわいい妹だから、なんで女主人公が嫌われるのか、おれには理解できなかった。

「おれが聞いてこようか?」
「ううん…できるだけ自分でなんとかする…」

自分のことだからって、なんでも一人で解決しようとするのは女主人公の悪い癖だけど、ここは一旦女主人公に任せてみよう。

「とりあえず、今度ゾエくんに聞いてみる…」
「そっか。それがいいよ。一人で悩んでも解決しないときは、誰かに頼ってね。もちろん、おれに頼ってくれてもいいんだからね」
「うん…すみくんありがとう」

まあ、おれが間に入るよりゾエを通した方が穏便に解決しそうだからいいけど、今度カゲには直接文句を言っておこう。







あれから数日が経った今日、女主人公はこの前と打って変わって笑顔だった。

「すみくん!」
「女主人公…」

しかも、カゲとゾエと一緒にいる。
なんでもう和解してるの?
おれの妹は、おれ以上にコミュ力高いんじゃないのかな?
それにしても珍しい。
人混みだと、サイドエフェクトの影響を受けやすいからって作戦室からあまり出てこないカゲがいる。

「チッ…」
「こらこら、カゲ。舌打ちしないの」
「仲直りしたの?」
「うん!というか、わたしの勘違いだったみたい」
「勘違い?」
「カゲくん、わたしのふわふわした感情がむず痒いってだけで、嫌われてなかった!」
「おめーはいちいちそーいうこと言ってんじゃねー!」

カゲは女主人公に怒鳴ったけど、女主人公はまったく気にしてなさそう。

「クソ犬がいんなら俺は戻るぞ」
「クソ犬ってすみくんのこと?」
「他に誰がいんだよ!」
「えー、もっとお話ししようよ」
「おめーはお好み焼きの話しか聞いてこねーだろうが」
「だって、カゲくん家のお好み焼き食べたいんだもん」
「今度食わしてやっから」

ずいぶんと仲良くなってるなー。
数日前まで本当に仲が悪かったの?と疑っちゃうくらい、今は仲が良さそう。
多分、女主人公の裏表のない性格がカゲは気に入ったんだろうな。
おれとは真逆の女主人公だから、カゲが気に入るのもわかる。
けど、女主人公に嫌われてるって思わせるくらいの態度だったはずなのに、この短期間でよくもまあ和解したもんだ。

「こつの感情がうぜーから俺は行く」

そう言うと、カゲは席を立った。

「あーあ、行っちゃった」
「おれ、追いかけてくるね」
「ケンカしないでよー」
「大丈夫、おれはしないよ!」



おれはカゲを追いかけた。

「カゲ」
「なんだよ、ついてくんじゃねー!」
「まあまあ」

おれが呼び止めても、カゲはそのまま無視して歩いている。
これは立ち止まる気がない感じだな。

「ねえ、女主人公の何が嫌だったの?」
「あ?おめーの妹だろうが」
「それだけが理由?」
「そうだよ」

おれのことが嫌い。
だから、おれの妹である女主人公のことも嫌いって、ずいぶん単純な思考回路をしているんだな。

「今回はすぐに誤解が解けたからいいけど、女主人公のこと傷つけるのはやめてくれると嬉しいな」
「…おめーのそーいうとこが気にいらねぇ」
「おれのことが嫌いでも別にいいけど、女主人公はおれとは別の人間なんだよ。おれの妹ってだけで、女主人公と向き合うこともしないで勝手なイメージで嫌うのだけはやめてよね。女主人公が傷つく姿見たくない」

おれのことを嫌うのは好きにしてって思うけど、おれのせいで関係ない女主人公まで傷つけられるのは我慢できない。
今、おれは普通に怒ってるし、多分普通に怒った顔をしている。
女主人公のことを傷つけられて、いつもみたいに笑って話ができない。

「…」

おれの感情が刺さったのか、カゲはこっちを見た。

「…そうしてるほうが人間らしいぜ、おめー」
「え?」
「妹絡んでるほうが、よっぽど付き合いやすい。いつもちぐはぐな感情刺しやがって」

それだけ言うと、カゲはそのまま自分たちの作戦室に戻っていった。

「…女主人公が絡んだ方がいいなんて、言われたの初めてだな」

ここにいてもしょうがないから、おれはラウンジに戻った。



「あ、すみくん戻って来た!」
「おかえりー!大丈夫だった?」
「うん」
「ケンカになるんじゃないかって心配してたよ」
「すみくんとカゲくんって、そんなに仲悪いの?」
「おれは仲良くしたいんだけど、カゲの方がねー」
「えー!すみくんも人に嫌われることがあるんだね」
「犬飼ちゃんもハッキリ言うね」
「すみくんが嫌われてるイメージないんだもん」

女主人公は心底不思議そうな顔をした。

「おれは女主人公が人から嫌われるイメージができないや」
「それはたしかにー!学校でも人気だもんね犬飼ちゃん」
「そうかな?」
「学校での女主人公のこと聞きたいな」
「ゾエくんとは今年も同じクラスだねー!」
「そういえば、今度地方からスカウトされた子が何人か転校してくるみたいだよ」
「そうなの?どんな子かなー!楽しみだね!」

スカウト組の話を聞いて、楽しそうな女主人公。
カゲとのことは、もう本当に気にしてなさそうで良かった。

「女主人公、最近学校どう?」
「楽しいよ!」
「好きな人とかできた?」
「えー、全然!」
「そっか」
「犬飼ちゃん、この前嵐山さんのことを見て騒いでなかった?」
「嵐山さんは目の保養。アイドル的な感じかなー」
「なるほどねー」
「ゾエくんはマスコットって感じかな」
「ゾエさんマスコットなの?」
「もふもふかわいい」
「じゃあカゲは?」
「カゲくんは、気高い黒猫って感じ!」
「猫かー」

とりあえず、カゲは女主人公のタイプではなさそうだから安心だ。



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