08

11月。
文化祭の時期がやってきた。

私たちのクラスは展示をすることになり、難なく終わりそうで良かった。
防衛任務で準備に参加することができない日も出てくるから、わりと簡単な内容で安心した。

「そういえば、カゲたちは何やるんだろうな?」

荒船くんとお昼を食べていると、雅人くんたちの高校の話が出た。

「たしかに。聞いてないけど、教えてくれないってことは恥ずかしいのかな?」
「あっちは確か俺たちよりも一週間早い日程だったよな?見に行くか」
「私も誘おうと思ってたところよ」

そんな話をしていると、隣に座っていたクラスメイトの女の子たちが話しかけてきた。

「二人って、仲良いよね?中学の同級生?」
「いいえ。私の幼なじみの飲食店によく来る常連さんで、昔から知ってたの」
「そうなんだ!苗字さんって幼なじみいるんだね?」
「えぇ」
「いつも二人でいるから付き合ってるのかなって思ってたよ」
「ちげーよ。こいつの幼なじみからボディーガード役を頼まれてんだよ」
「過保護〜!」
「でもわかる。こんな綺麗な幼なじみがいたら、過保護にもなっちゃうよね」
「あはは」

と笑って誤魔化しておいた。






『ぜってーくんな』

雅人くんに連絡をしたら、案の定来るなの一言。
来るなと言われたら余計行きたくなるのが人間。
ということで、雅人くんの言葉を無視して三門第一に遊びに行くことにした。


文化祭当日、荒船くんと駅で待ち合わせをしていると携帯が鳴った。

『悪い。少し遅れる』

昨日の夜、気になる映画を一気見したらしく、寝坊をした荒船くん。
「大丈夫だよ」と返信を返した。

どのくらいかかりそうかな、と思いながら携帯を見ていると、影ができたので顔を上げた。

「苗字か!」
「あ、嵐山さん」

そこには、ボーダーでも人気の高い嵐山さんがいた。

「こんにちは。よく私の名前をご存知で」
「あぁ!この前加古さんから話を聞いていたからな」
「そうだったんですね」

嵐山さんは、確か三門第一の2年生だったはず。
文化祭真っただ中なのに、なぜ駅にいるのだろうか。


「嵐山さんはなぜ駅に?」
「文化祭で使う予定のコップが足りなくなって買いに行っていたんだ」
「なるほど」
「苗字は一人でどうした?」
「それが、同じボーダーの荒船くんと一緒に文化祭に遊びに行こうとして待ち合わせをしていたんですが、荒船くんが寝坊で」
「そうなのか。それなら俺と一緒に学校まで行くか?」
「そ、それはご迷惑なのでは?」
「全然、むしろここに苗字を一人で置いておくほうが心配だ」

と、嵐山さんは周りを軽く見渡した。
確かに人が多く、視線を感じていたので正直助かった。
この視線の多さは、嵐山さんが来てからさらに増えた気はするけど。

「そしたら荒船くんに連絡を入れておきます」
「あぁ。学校で落ち合えばいい」

荒船くんには、嵐山さんと合流して一緒に行くことになったことと、雅人くんのクラスで待っていることを連絡した。

「お待たせしました」
「そしたら行こうか。目的はどこなんだ?」
「えっと、幼なじみの影浦雅人のクラスです」
「了解だ」

嵐山さんのスマートさに惚れ惚れしながら、あとを追った。
学校が近づくにつれ、嵐山さんに声をかける人の多さに驚いた。

「おう嵐山!今日はパシリか?」
「嵐山くーん!あとでクラスに遊びに行くね!」

と、同時に誤解する人も多かった。

「あの嵐山が女連れ!?」
「え、誰あの子!嵐山くんの彼女!?」
「見たい見たい!な、めちゃ可愛い!」
「美男美女じゃん。許す!」
「嵐山さーん!彼女いないって信じてたのに!」

色々な憶測が飛び交っていて、訂正するのがめんどくさいくらい。
でも嵐山さんの名誉に関わることなので、周りの人に声をかけようとすると

「違う違う。この子は彼女じゃない」
「でも嵐山くんが女の子を連れてるって、初めてだよね!?」
「だから、この子は」
「嵐山さんに彼女ー!」

さらに人が集まってきて、収拾がつかない事態に。

「あ、嵐山さん…」
「すまない苗字。こんなことになるとは」
「嵐山さん人気すぎますよ」
「よし…苗字!」
「え?」

嵐山さんは私の手を取ると、

「あ!!」

と三時の方向を指さした。

「「「え!」」」

その場にいた全員が嵐山さんが指をさした方向を見ると、隙を見て走り出した。

「あ、嵐山が逃げたぞー!」

それに気づいた人もいたけれど、嵐山さんの方が早く、私たちは無事に脱出して校内に入ることができた。

「嵐山さん、急に走らないでください」
「すまん!こうでもしないとなかなか逃げられなさそうだったから」
「ふふふ、嵐山さんの人気がすごいですね」
思わず笑ってしまった。
「あぁ…ボーダーの俺に興味を持ってくれてるのは嬉しいけど、苗字には悪いことをしたな」
嵐山さんは申し訳なさそうな顔をしてそう言った。
「全然大丈夫ですよ。こんな経験めったにないので楽しかったです」
それよりも、変に噂にならないかが心配だ。

「ちゃんと訂正しておくから安心してくれ」
嵐山さんがそう言ってくれたのでお任せすることにした。

「そしたら私は影浦雅人のクラスに行きますね」
「あぁ。最後まで一緒に行くよ」
「ありがとうございます」

雅人くんのクラスは1階の奥にあって、すぐに見つかった。
なるほど、メイドカフェなのか。
雅人くんのクラスはメイドカフェで、女の子たちが可愛いメイド服を着ていた。

「あ!嵐山さんと女主人公ちゃん!」
「ゾエくん!」

私と嵐山さんに気付いたゾエくんが、こちらに向かってきた。
「来てたんだね〜!カゲが女主人公ちゃんは呼んでないって言ってたから、来ないのかと思ってたよ」
「呼ばれてないけど来ちゃった。荒船くんも後から来るよ」
「さっき、校門のところが騒がしくて嵐山さんの名前が飛び交ってたけど、もしかして何かありました?」
「いやー、苗字を俺の彼女だと勘違いした周りが勝手に騒いでたんだ」
「そうなの。大変だったよ」

「女主人公!おめーなんでここにいんだよ!」

雅人くんに大きな声で名前を呼ばれ、雅人くんだけじゃなく、クラスの人たちも一斉にこちらを見た。

「え、影浦くんの知り合い?」
「でも雰囲気が違くない?」
「嵐山さんと一緒にいるじゃん」
「さっき嵐山さんと一緒にいた子じゃない?」
「嵐山さんの彼女?」

各々が好き勝手に話をしていて、その感情が雅人くんを刺しているようで雅人くんのイライラが手に取るようにわかる。
これはまずい。

「嵐山さん、ここまでありがとうございました。ゾエくん、あとで荒船くんが来るから連絡しておいて!」
「あぁ」
「うん分かった!」

「雅人くん!」

私は雅人くんの手を取って、なるべく静かになれそうな場所を探して向かった。



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