もしも三門第一だったら

「あ…」
「女主人公ちゃんどうしたの〜?」
「体操服忘れちゃった…」
「え?大丈夫?」

女主人公は自分の体操服がないことに気づいた。
体操服の下は予備で置いてあるのだが、肝心の上がない。
次の授業は体育で、体育教師は忘れ物に厳しいので、忘れたから見学をしたいというのはだいぶハードルが高かった。

「影浦くんに借りに行く?」
「そうねー…」

影浦に借りに行くのはいいのだが、はたして影浦は体操服を持っているのだろうか。
女主人公は少し疑問に思いながらも「とりあえずB組に行って加賀美さんか人見さんに聞いてくる」と言った。

隣のクラスに行って、入り口のそばに立っている男子に声をかける。

「あの」
「ん?うおっ!苗字さん!!」

女主人公に話しかけられた男子は、少しだけ顔を赤くする。

「どうしたの?」
「ごめんなさい、加賀美さんか人見さんいるかしら?」
「ちょっと待ってて」

そう言うと、教室の中に入って加賀美と人見に声かける。

「苗字さんどうしたの?」
「ごめんね、今日ってB組体育ある?」
「今日はないよ」
「あー、そっか」
「忘れたの?」
「そうなの。雅人くんに借りてもいいんだけど、少し恥ずかしいなって思って…それに持ってるかどうかわからないし」
「そっかー。ごめんね、昨日体育だったから持って帰っちゃった」
「ううん、こちらこそ急にごめんね」

三人が話をしていると、王子と北添がやって来た。

「やあクイーン、どうしたんだい?」
「学校でそれはやめてよね」
「いいじゃないか」
「苗字さん、体操服忘れちゃったんだって」
「え?そうなの?ゾエさん持ってるけど、さすがにゾエさんのじゃ大きすぎるよね」
「ゾエくんのは大きいね」
「カゲくんに借りないのかい?」
「加賀美さんと人見さんが持ってなかったらこれから借りに行く予定」

女主人公はあきらめてC組に向かうことにした。

「みんな、ありがとう」
「無事に借りられるといいね!」
「うん」







女主人公はさらに隣のクラス、C組に来て教室の入り口から中をのぞく。

「あれ?」

中を見ると、影浦の姿がない。

「どこ行っちゃったんだろう?」

そろそろ着替えをしないと、時間が迫ってきていた。

「女主人公?」
「鋼くん」

名前を呼ばれ、女主人公が振り返ると村上と水上がいた。

「どうしたんだ?」
「雅人くんいる?」
「カゲなら委員会の仕事で職員室に行ってるぞ。多分戻ってくるのは予鈴と一緒かな」
「えー、そうなんだ…」

ということは、この休み時間に影浦に体操服を借りることができない。

「どしたん?なんかカゲに用やったん?」
「うん…実は体操服忘れちゃって…。加賀美さんと人見さんに聞いたんだけど、昨日体育で持ってないって」
「そうやったんか」
「ヒカリちゃんに借りに行こうかしら」
「間に合うん?」
「微妙かな…」

2年生の教室は、下の階でさらに仁礼のクラスはD組だ。
ここからだと少し距離があるので、予鈴に間に合うかどうかというところ。

「カゲのロッカーから取るか?」
「勝手にはあかんやろ」
「女主人公ならいいんじゃないのか?」
「ほんまかいな?」

たしかに、いくら幼なじみとはいえ、勝手にロッカーを開けて体操服を借りていくのは少し気が引ける。

「じゃあオレの使うか?」
「え、鋼くんに悪いよ」
「鋼くんのやとサイズ大きない?俺の使い」
「水上の方が背、高いだろ」
「横のサイズは俺のがスリムやで?サイズなんなん?」
「Lサイズ」
「俺はMや」

そろそろ戻らないと、本格的にまずい時間になってきたので、女主人公は水上から体操服を借りることにした。

「本当にごめんね。下はあるから、上だけ貸してもらえるかな?」
「ええよ」
「カゲにはうまく言っとくからな」
「ありがとう」

女主人公は水上から体操服の上を借りて、自分の教室に戻った。



A組に戻ると、国近と今はすでに着替えを終えていた。

「おかえり」
「借りられたー?」
「うん。加賀美さんと人見さんは持ってなかったらC組に行ってきた」
「影浦くん?」
「雅人くんがいなかったから水上くんに借りたよ」

そう言って、女主人公は体操服を広げた。

「水上って書いてある」
「サイズ大丈夫?」
「水上くんMサイズって言ってたから、多分大丈夫」

着てみると、そこそこブカブカではあったが、着れなくはないといった感じになった。

「鋼くんはLサイズって言ったから、鋼くんに借りなくて良かった…」
「たしかに。男子のLは大きすぎね」
「そろそろ時間だから行こう〜」
「うん」





体育の後、昼休みになったのでC組に向かう女主人公。
C組につくと、影浦、水上、村上、そして穂刈の4人が後ろの席で固まってご飯を食べていた。

「水上くん」
「苗字ちゃん」
「あ?なんだ?」
「体操服ありがとう。洗って返すね」
「別にそのまんまでもええのに」
「それはさすがに」
「体操服?なんの話だ?」
「まだカゲに言えてなかったな」
「苗字ちゃん終わってからすぐに来るとは思わんかった」

水上と村上の話についていけない影浦と穂刈。

「体操服、上だけ忘れちゃって水上くんに借りたの」
「は?俺の使えよ」
「雅人くんいなくて、時間も迫ってたし」
「勝手にロッカーから取ればいいだろ」
「人様のロッカーを勝手に開けるのはどうかと思って」

女主人公の言い分が正しいのだが、影浦は自分以外の男の体操服を着たのかと思うと気分が良くなかった。

「ごめんね」
「今度から勝手に取れ。俺とおめーの間で遠慮してんじゃねー」
「うん、ありがとう」

そう言うと、女主人公は自分の教室に戻る。


「すまんかった」
「あ?別に気にしてねーよ」
「ほんまかいな」
「おめーからは下心が一切刺さってこねーからな」
「あたりまえやろ。カゲに下心なんてあるかい」
「俺にじゃねーよボケ!」


次の日、女主人公は水上にお礼のお菓子を作ってきた。

「水上くん、昨日はありがとう。助かりました」
「別にええよ」
「はい、これ。良かったら食べてね」
「うまそうだな、マフィン」
「女主人公!オレたちにはないのか?」
「あるよ」
「俺へのお礼やないんかい」
「おめーだけ特別なわけねーだろ!」

影浦は勝ち誇ったような顔をした。

「雅人くんは昨日のうちのもう食べてるもんね」
「そーゆーこった!」
「なんか腑に落ちんな」



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