06

今日は六頴館の文化祭。
女主人公が王子くん、カゲ、鋼くん、穂刈くんたちと遊びに来る予定だから楽しみだ。

「うわー!犬飼くん似合うー!」
「本当!かっこいい!」
「本当?ありがとうー!」

おれたちのクラスは、定番のメイド&執事喫茶で、裏方以外のメンバーはメイド服と燕尾服を着ている。
もちろんおれも、顔の良さを買われて執事役だ。

「B組って何やるか知ってる?」
「B組は、たしかお化け屋敷のようなものだったと思う」
「のようなもの?荒船くん、全然教えてくれないからなんだろうって思ってたんだよね」
「かなり気合入ってるみたいだよ」
「へー。それは楽しみだね」

女主人公はお化け屋敷が好きだから、きっと楽しめるだろうな。

「犬飼ー!呼び出し」
「ん?」

誰だろう、と思って呼ばれた方を見ると、そこには知らない女の子。
上履きの色を見る限り、1年生だ。

「どうしたの?」
「あ…あの!犬飼先輩!今日って…お時間空いてますか?」

これはお誘いかな?

「もし空いている時間があれば、その…一緒に回ってもらえませんか?」
「…ありがとう。でもごめんね、空いてる時間は案内したい子がいるんだよね」
「そ…そうなんですか…わかりました。急にごめんなさい」
「ううん。誘ってくれてありがとう」

おれが断ると、おれを呼んだクラスメイトが「おまえ、そんな子いたんだな」と聞いていた。

「うん。おれの世界で一番大切な子だよ」







文化祭が始まって、おれたちD組のメイド&執事喫茶は結構な人気。
外まで列ができていた。
時計を見ると、そろそろ女主人公たちが来る時間のはず。
おれがしきりに教室の入り口を見ていると、さっき話しかけてきたクラスメイトが寄ってきた。

「犬飼のそんな姿、初めて見たな」
「初めて見せるねー」
「そんなに大切なんだな」
「それはもちろん」

そんな話をしていると、教室の外が騒がしくなった。
これは女主人公が来たかな?



「うわー、混んでるね!」
「クソ…なんで俺がクソ犬のクラスになんぞに行かなきゃなんねーんだよ」
「ならオレたちは先に行くか、荒船のクラスに」
「えー!みんなでお茶しようよ!せっかく来たんだし」

入り口の方から女主人公たちの声が聞こえてきた。

「なあ犬飼…おまえに似た美少女がいるんだけど…おまえの何?」
「おれのかわいい妹だよ!」

おれは教室から出て、女主人公のもとに行く。
相変わらず、女主人公はすごく目立つ。
隣に王子くんがいるからか、いつもより余計に目立っているような気もしなくもない。

「女主人公!」
「あ!すみくん見つけたー!」

おれを見つけると、女主人公は笑顔で手を振る。

「わー!すみくんかっこいいね!」
「本当?ありがとう!」

朝、クラスの女子にも褒めてもらったけど、やっぱり女主人公から褒められるのが一番うれしい。

「あとで一緒に写真撮ろうね!」
「もちろん」

女主人公の後ろにいる王子くんたちにも声をかける。

「みんないらっしゃい!」
「スミくん、さすがだね。着こなしてる」
「王子くんも似合いそうだよね、燕尾服」
「そりゃあ、ぼくに似合わない服はないよ」
「鋼くんも穂刈くんもようこそ。カゲも来るなんて、珍しいね」
「荒船がいるからな」
「おめーに会いにきたんじゃねーわ」
「本当は国近ちゃんとか今ちゃんにも声かけたんだけど、用事があるみたいで断られちゃった」
「そっか」

おれたちが話をしていると、メイド服を着たクラスメイトから呼ばれた。

「犬飼くん!手伝ってー!」
「あ、ごめん!今行くね。女主人公、少し時間かかるかもしれないけど、並んで待っててね」
「うん!すみくんいってらっしゃい!」

そう言って、おれは教室に戻る。

「あの子、犬飼くんの妹さん?」
「うん!」
「そっか」
「大事な大事な双子の妹だよ!かわいいでしょ?」
「さすが犬飼くんの妹って感じだった」
「あはは、何それ!」


意外と早く女主人公たちの順番になったので、おれは入口でお出迎えをした。

「ようこそ、お嬢様」
「わー、すみくんサマになってる」
「動画撮っていいかい?」
「なんのために撮るんだ?」
「何かのために」
「許可できませーん。はい、5名様ご案内!」

女主人公たちを席に案内して、注文を聞く。

「すみくんのおすすめで!」
「それなら女主人公の好きなショートケーキにしようか。美味しいから期待しててね」
「うん!」
「女主人公はショートケーキが好きなのか」
「イチゴが好きだから、ケーキならショートケーキが一番好き!」
「なんか、イメージ通りの回答だな」
「そうかな?」
「他のみんなはどうするの?」
「ぼくは紅茶にしようかな」
「プロテインだな、オレは」
「ありませーん」

穂刈くんのボケをスルーして鋼くんに聞く。

「鋼くんは何にする?」
「そうだな、俺はコーヒーにしようかな」
「了解!カゲは?」
「…コーヒー」
「カゲってコーヒー飲めたんだね」
「あ?ケンカ売ってんのか?」
「なわけないじゃーん!女主人公も紅茶でいい?」
「うん!ありがとう」

注文を取って、おれは一度裏に戻る。
と、クラスの男子たちが話しかけてきた。

「なあ!犬飼!おまえの妹めちゃくちゃかわいいな!」
「当たり前でしょ、おれの妹だよ?」
「犬飼家の遺伝子やべーな。彼氏いるのか?」
「あの4人の中にいるだろ」
「やっぱそうかー」
「ちょっとちょっと、勝手に話を進めないでくれるかな」
「あの中なら、やっぱあの王子みたいな雰囲気のやつかな?」
「だろうな。釣り合ってんの、あいつくらいだろ」

おれが待ったをかけているのに、全く聞いていないクラスメイトに少しあきれる。

「女主人公は誰とも付き合ってないよ」
「そうなのか!?」
「女主人公ちゃんっていうんだな。かわいい名前だな」
「名前で呼ばないでくれるかな?」
「…犬飼、おまえシスコンなんだな」
「重度の」
「まあね」

女主人公たちのテーブルの食べ物と飲み物が揃ったと声をかけられたので、おれはその場を離れる。
トレーに載せて、女主人公たちのもとに行こうとすると、女主人公がうちのクラスの男子に声をかけられていた。
あの4人に囲まれている女主人公に話しかけに行く男の勇気に賞賛の拍手を送りたいけど、4人はいったい何をしてるのさ!
おれは早歩きで、でも飲み物をこぼさないようにテーブルに向かうと、話し声が聞こえてきた。

「そっかーすみくんって本当にかっこいいんだね!」
「えっと…うん…そう…」
「色々すみくんのこと、教えてくれてありがとう!学校でのすみくんのこと知れて嬉しかったよ!」
「あ…うん…それは良かった…」

「女主人公」
「あ、すみくん!」

おれが声をかけると、その男は「あ、じゃあまた…」と言って、持ち場に戻った。

「お待たせ」

おれはテーブルに飲み物とケーキを置きながら「何話してたの?」と聞いた。

「あのね、声をかけられたからすみくんのこと色々聞いたの!」
「そうなの?」

本当に?の意味を込めて4人を見ると、カゲ以外が無言でうなずいた。

「必要だったら助けようと思ったんだけど」
「ぼくたちの助けは必要なかったね」
「ほぼ自慢だったな、犬飼の」

ナンパだと気づかなかった女主人公は、クラスメイトにひたすらおれのことを聞いていたようだ。
家では女主人公の方が話していることが多いから、ここぞとばかりに色々聞いたんだろうな。
想像できすぎて少し笑ってしまった。

「みんながいるのに何で話してるのかなと思ったよ」
「ケーキ美味しい!すみくんの言ったとおりだね!」

女主人公は全く気にしておらず、おいしそうにケーキを食べている。
それでこそおれの妹だなー。

「この後はどうするの?荒船くんのところ?」
「ああ。荒船のところは何やるんだ?」
「それは行ってからのお楽しみかな!」
「教えてくれなかったからな、荒船は」
「穂刈くんにも教えてないんだね」

そんなに気合の入ったお化け屋敷なのかな?

「おれももう少ししたら休憩に入るから、休憩になったら一緒に回ろうね」
「うん!すみくんからの連絡待ってるね!」



食べ終わった5人はそのまま荒船くんのクラスに向かった。
休憩になって、女主人公に連絡を入れて合流すると、そこには疲れ切った4人+元気いっぱいの女主人公の姿が。

「どうしたの?」
「どうしたのじゃねー!おめーの妹はバケモンか!」
「えー、何それ。失礼だな、おれのかわいい妹を化け物扱い?」
「とっても楽しかったの!」
「何が?」
「それが…」

鋼くんから事情を聞くと、荒船くんたちのクラスは某洋画をモチーフにしたホラー脱出ゲームだったようで、鎖で片腕の自由を奪われたまま、脱出ゲームの謎解きをしているとお化けに襲われるというもの。
これはお化け屋敷なのか?と思う内容だったけど、とにかく謎解きが難しい&お化けがリアルすぎてヤバかったそうだ。

「死ぬかと思ったね」
「本当にな」
「王子くんと鋼くんがいなかったら、一生脱出できなかったね!」
「おめーはなんでそんなに楽しそうなんだよ…」
「お化け怖くて最高にゾクゾクしたね!」

女主人公はお化け屋敷好き、ホラー映画も大好き、怖いもの大好きだから、とても楽しかったようだ。

「女主人公が楽しかったみたいで良かったよ」
「もう一回行きたい!」
「一人で行け!!」



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