広報のお仕事01

嵐山隊はボーダーの広報部隊で、メディアに出たりしている。
この前、かげうらに隊員募集のポスターが貼ってあって、おばさんに聞いたら「雅人の鞄の中に入ってたから、勝手に取って勝手に貼っちゃった!」と言っていた。
このポスターにも嵐山隊の写真が使われている。

そんな嵐山隊が、今度雑誌の撮影とショッピングモールでイベントを行うことになったとのこと。
撮影とイベントは今週末。
そして、なんとこのタイミングで木虎さんがインフルエンザにかかってしまったそう。
季節外れのインフルエンザということで、木虎さんは熱が下がってからも自宅待機を命じられている。

「雑誌社も、男ばかりで華がないのは…ということだ」
「そうだったんですね…」
「イベントも、老若男女問わず来てほしいから、俺たちだけだとな」
「はあ…?」
「ちなみに苗字は、今週末予定はあるか?」
「…えっと…なぜでしょう?」
「苗字に手伝ってもらえたらと思っている」
「私なんかよりも、もっと適任の方がいるのでは?」
「いや、いないな!」

なぜでしょう。
華が欲しいなら、A級には加古隊がいる。
加古先輩は綺麗だし、黒江さんも木虎さんと同世代で可愛らしい。
B級には香取さんや、那須隊の熊谷さんと日浦さんもいる。

「加古さんには予定があると断られてしまった!できれば、昔からいる隊員に話を聞きたいという雑誌社からの意向もあって、他には苗字しかいないんだ!」
「そうなんですか…」

正直、雑誌社の事情は知らないけど、嵐山さんは大変なんだなというのは伝わってくる。

「苗字!!頼む!!」
「あ…嵐山さん…顔を上げてください…」
「本当に申し訳ない!だが、もう苗字しかいないんだ!!」
「えっと…そう言っていただけるのは光栄ですが…」
「ならいいか!?」
「えっと…雅人くんが何て言うか…」
「わかった!影浦に許可を取ってくるから、そしたら大丈夫か!?」
「う…はい…雅人くんが大丈夫なら、私は大丈夫です…」
「ありがとう!そしたら影浦に聞いてくるな!」
「はい…」

嵐山さん、その顔は反則です…。







「マジでお人よしすぎんだろ」
「…雅人くんだって断れなかったじゃない」
「…チッ!」

そう。
あの後、嵐山さんは雅人くんを探して見つけると、90度に体を曲げてお願いしていた。
その勢いと、周りからの目もあって、雅人くんは嵐山さんのお願いを承諾してしまったのだ。
出るのは私なんだけどね!

「本当に大丈夫か?」
「…まあ、いつも嵐山隊がやってて大丈夫なんだから、私でも大丈夫でしょう」
「そうじゃなくてよー…出た後が大変じゃねーのか?」
「もうこれ一回って約束してもらったから大丈夫よ」
「…」
「それに、何かあったら雅人くんが守ってくれるでしょ?」
「あたりめーだろ」
「だから安心。トリガーもあるしね。私、こう見えてボーダー隊員の中でも結構な古株なのよ」
「知ってる」

私と雅人くんは、嵐山さんに教えてもらった雑誌社に向かう。
中に入ると、かなり大きな会社で、とにかく広い、そしてお洒落。

「雅人くん、大丈夫?」
「おう」
「一緒に来てくれてありがとう」

ロビーの前の椅子に座って嵐山さんに連絡を入れる。
すると、すぐに時枝くんが迎えに来てくれた。

「苗字さん、影浦先輩、今日はすみませんでした」
「いいえ。私なんかでお役に立てるなら喜んで」
「テキトーなこと言うな」
「本当にすみません。もうこれっきりなんで、影浦先輩も安心してください」
「へーへー」

私たちは嵐山隊の控室に向かう。

「嵐山さん、お二人を連れてきました」
「充ありがとう!苗字、影浦、今日は本当に悪かったな!」
「いいえ、今日はよろしくお願いします」
「苗字さーん!一緒の撮影楽しみですね!苗字さんと撮影できる日がくるなんて、佐鳥、感激です!」
「おめーはうるせー!」

私たちが中に入ると、今日の流れを嵐山さんが説明してくれた。

「午前中は、ここで撮影とインタビュー。お昼休憩をはさんで、午後はモールでイベントだ。少しバタバタするが、よろしく頼む」
「わかりました」
「苗字さん、今日はよろしくお願いしますね!」
「綾辻さんも、よろしくね」

撮影は生身でしてから、トリオン体でも撮影するらしいけど、生身で撮影する必要があるのかな?

「そしたらメイクをするので、女性の方はこちらにどうぞ」
「いってくるね」
「おー」

私は呼ばれた方に向かうと、大きな鏡の前にたくさんのコスメやスキンケアが並んでいるメイクルームに通された。

「よろしくお願いします」
「よろしくお願いします!あなた綺麗ねー!メイクなんか必要ないくらい!」
「そんなことないですよ」
「やる気出てきたー!頑張っちゃうね!」
「ほどほどにで」

メイクさんは気さくな方で、メイク中も楽しく過ごすことができた。

「はい完成〜!とっても可愛くできたわ!」
「ありがとうございます。自分じゃないみたい…」

鏡を見ると、やりすぎていないのにいつもとは違う自分がいた。
メイクの力ってすごいなー。

「そしたら嵐山くんもメイクしちゃうから呼んできて!」
「わかりました」

私は控室に戻って嵐山さんを呼んだ。

「嵐山さん、呼ばれてます」
「おお!ありがとう!苗字、すごいな!いつもよりさらにきれいだ!」
「本当ですね!苗字さん、とってもきれいです!」
「そうかな?ありがとう」
「苗字さん、めちゃくちゃきれいですね!」
「影浦先輩も見てくださいよ!」
「おう…」

私は雅人くんの前に立つと、「どうかな?」と聞いた。

「まぁいいんじゃねーの」

雅人くんは右手で口元を隠しながらそう言った。
これは照れてますね。

「かわいい?」
「おめーがかわいくない時なんざねー」
「ふふふ、ありがとう」

「影浦先輩すてきです!」
「さらっと言えるのがすごいですよねー!」
「影浦先輩の苗字さんへの愛が伝わってきますね」
「うるせー!おめーらテキトーなこと言ってんじゃねー!」

雅人くんは顔を赤くしながら叫んだ。
怒ってるけど、顔が赤いから全然怖くないよ。

「なんだか落ち着かない」
「そんな変わんねーだろ」
「いや、変わるよー。プロのメイクさんって、やっぱりすごいんだなって思ったよ」

雅人くんは、ジッと私の顔を見つめる。

「?」
「…やっぱ、いつもと変わんねー」
「そう?」
「これ以上きれいになりようがねーだろ」
「…雅人くん、ありがとう」

雅人くんからの最上級の褒め言葉だ。
私は嬉しくなって、笑顔がこぼれた。

「キュンとしちゃう」
「佐鳥もです」
「影浦先輩は、本当に苗字さんのことが大切なんですね」

そこに、嵐山さんが帰って来た。

「ん?どうした?」
「影浦先輩と苗字さんの愛の深さに感動してましたー!」
「?よくわからないが、二人は本当にお似合いのカップルだな!」
「そういうことです」

「うっせーな!時間は大丈夫なのかよ!」

雅人くんが赤くなりながらそう言うと「おっと、そろそろ時間だな。多分スタッフの人が呼びに来る」と嵐山さんが言う。
そして、嵐山さんが言った通り、すぐに扉がノックされて、スタッフの人が来た。

「お待たせしました!そしたら嵐山隊のみなさんと、影浦隊の方はこちらに移動してください」

私たちは撮影スタジオに移動した。



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