Lock on you

体育祭が終わって、次に待っているのは期末試験だ。

「女主人公、一緒に勉強しようぜ」
「いいわよ」

荒船は女主人公を誘って期末試験の勉強をすることにした。

「犬飼くんも呼ぶ?」
「俺は二人がいいんだよ」
「はいはい」

荒船はそう言うと、何もわかっていない女主人公を後ろから抱きしめる。

「おまえは男心をわかってなさすぎな」
「男心っていうか、荒船くん心じゃない?」
「そうとも言う」
「ごめんね」
「わかればいいんだよ」

二人のやり取りを見ていたクラスメイトは、そういうことは二人の時にやってくれと切に願った。







「どこで勉強する?やっぱりボーダーのラウンジ?」
「俺ん家でしようぜ。ボーダーだと集中できねえ」
「いいよ。でも、突然お邪魔して大丈夫?」
「今日は二人とも祖父さんの家に寄ってくって言ってたから遅くなる」
「そっか」

そう言うと、二人は荒船の家に向かう。

「お邪魔します」
「初めてじゃねーんだからそんなかしこまるなよ」
「いつ来ても緊張するでしょ」
「そういうもんか?」

荒船は靴を脱ぐとそのまま台所に向かった。

「飲み物とか持っていくから、先に部屋で待ってろ」
「わかった」

女主人公は荒船の部屋に向かう。
荒船は飲み物やお菓子を持って、自分の部屋の扉を開ける。

「ありがとう」
「…ッ」
「どうしたの?」
「いや…やっぱ俺の部屋に女主人公がいるって、絵面がやべえ…」
「どういうこと?」
「そのまんまの意味だよ。付き合ってんだなーってしみじみ思う」
「私たち、付き合いたてのカップルだったかしら?」

荒船の挙動に女主人公は若干引いていた。

「女主人公…」

荒船は女主人公の隣に座ると、顔を近づける。
が、女主人公が荒船の口元に手を置くと「勉強しに来たんでしょ?」と言った。

「少しくらいいいだろ」
「だーめ。勉強が終わってからね」
「こういう時くらいしかキスできねえだろ」
「勉強しなさい」
「チッ」
「舌打ちしないの」

荒船が女主人公から離れる素振りを見せたので、女主人公は荒船の口元から手をどかす。

「隙あり」

その隙を見逃さなかった荒船は、女主人公の唇に軽く口づける。

「もう」
「これくらいならいいだろ」
「荒船くん、私のこと好きすぎでしょ」
「当たり前だろ。死ぬほど好きだわ」
「少しは照れて…」
「おまえが照れんのかよ」
「その顔で言われたら照れるわよ」

少しだけ顔を赤くした女主人公に荒船は気を良くして、もう一度女主人公に口づけようとする。

「調子に乗らないの」
「クソ」
「まったくもう」

だが、今度は女主人公がしっかりと阻止したので、荒船はさすがにあきらめた。

「終わったらいいんだろ?」
「そっちが目的になってない?」
「いや、本来の目的は勉強だ。けど、褒美があった方がやる気出んだろ」
「ご褒美がなくてもやる気を出してください」

女主人公は自分の鞄から教科書や参考書を取り出す。

「今度の期末、勝負しようぜ」
「なんの?」
「順位。負けた方が勝った方の言うことを聞くってのはどうだ?」

荒船がそう言うと、女主人公は少し目を細めながら「自信があるみたいね」と聞いた。

「そりゃあな。俺のほうがなんだかんだおまえより成績いいじゃねーか」
「それは否定できない」
「どうだ?」
「でもそれで言ったら、荒船くんに有利な勝負じゃない?」
「そんなことないだろ」
「私の得意科目だけで勝負してよ」
「それだとおまえに有利だろ?」
「男らしくないわよ」
「…言ったな」

女主人公にそう言われて、荒船に火が付いた。

「いいぜ、おまえの得意科目で勝負してやるよ」
「そしたら英語で勝負!」
「負けねえ!」




期末試験が終わり、結果が返ってきた。

「どうだった?」
「せーので見せよう」
「いいぜ」

「「せーの!」」

二人は一斉に成績表を机に出した。

「英語98点!?」
「俺の勝ちだな!」

荒船の点数は98点、そして女主人公の点数は97点だった。

「荒船くん、そんな英語得意じゃなかったじゃない」
「そうでもないぞ。洋画好きだしな。それに今回は絶対負けたくなかったからマジで勉強した」
「…その努力の使い方間違ってない?」

女主人公と荒船のやり取りを聞いていた鈴木が「二人とも勝負してたの?」と聞いた。

「おう。英語の点数、負けた方が勝った方の言うこと聞くっていうな」
「英語なら負けないと思ったのに…」
「苗字さんに何させるつもりよ」
「秘密だ」
「うわーやらしー笑顔」
「うるせーな!」


放課後になると、荒船は女主人公を連れて屋上に向かう。

「勝手に屋上入ったら怒られるわよ」
「少しだけな」

荒船は屋上に続くドアノブを回すと「やっぱ開かないか」と言った。
二人は階段に座る。

「それで、荒船くんは私に何をしてほしいの?」
「ここで言うか迷ってる」
「どこで言っても同じじゃない?」
「まぁそうだな。ここなら誰も来ないだろうし」
「…一体何をさせるつもりなの?」

荒船は女主人公の方を見ると、自分の口元を指さして「キスしてくれ」と言った。

「え?」
「女主人公からしてくれたことなかっただろ」
「それは…そうだけど」
「俺からしかしてないからな、おまえからもしてほしい」
「それが荒船くんのお願い?」
「おう」

女主人公は「…恥ずかしいんだけど…」と、うつむきながら言った。

「恥ずかしがってるおまえもかわいいな」
「もう!」
「ほら」

荒船は女主人公の手を握ると、女主人公の体を引き寄せた。

「目、つぶってよ」
「ん」

荒船が目を閉じたのを確認すると、女主人公は、荒船の唇に軽く触れる。

「おまえなぁ…」
「何?」
「こんなんキスって言わねーだろ」
「失礼な、立派なキスでしょ」

女主人公が離れていく前に、荒船は女主人公のことを抱きしめ、そのまま女主人公の唇をふさぐ。

「んっ!」

驚いて離れようとする女主人公の頭を左手で抑えると、角度を変えながら優しいけれど深い口づけをする。

「ふっ…ん…あらふねくん…」
「女主人公…」

荒船は女主人公の髪の毛を撫でながら、何度も口づけると「好きだ」と言った。

「私も好きだよ」
「…おまえはいつまで俺のことを苗字で呼ぶんだ」
「え?」
「俺のことも名前で呼べよ」
「…嫉妬ですか」
「カゲのことは雅人くん、鋼のことは鋼くん。なのに彼氏の俺が苗字なのはおかしいだろ?」
「そうかな?」
「おまえももうすぐ荒船になるんだから」
「そんな予定はないけどな」
「あるんだよ」
「はいはい。でも、もうお願い使っちゃったよ?」
「そうだった!」

思った以上にショックを受ける荒船。
そんな荒船を見て、女主人公はクスっと笑うと荒船を抱きしめる。

「そんなのお願いされなくてもいつでも呼んであげるよ」
「本当かよ」

女主人公は抱きしめていた腕を離すと、荒船を見つめる。

「哲次」
「〜〜〜〜っ!破壊力」

荒船は、女主人公の微笑み+名前呼びで赤くなった顔を両手で隠して下を向いた。



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