三門第一の3年A組では、当真が持ってきた女主人公と嵐山隊が載った雑誌を広げていた。
「見るか?」
「見たいー!」
「なんで当真くんが持ってるの?」
「うちの隊長がもらったのをパクってきた」
「それって大丈夫なの?」
「大丈夫だろ、気づいてねーって」
国近は嵐山隊のページを見つけると「わ〜女主人公ちゃんかわいい!」と、ページを広げて今に見せる。
「本当ね。少しメイクしてるのかしら?普段よりももっと綺麗」
「さすがだな〜苗字ちゃんは」
「嵐山さんと並んでも絵になるねぇ」
同じくB組でも、王子が雑誌を持ってきていた。
「見てごらん、クイーンが載ってるよ」
「あ、これこの前女主人公ちゃんが撮影したって言ってたやつ」
「すごー。苗字さんかわいい」
「本当ね。本物のモデルさんみたい」
王子たちが騒いでいるのを、同じクラスの岡が後ろから見ていた。
「(め、女神が雑誌に載っている…!?)」
「ん?岡くんも見る?」
「あ、だ…大丈夫。だけど、その雑誌の名前だけ教えてほしいな」
「クイーンのファンかい?」
「クイーン?」
「あー、気にしないで。あだ名だから」
「女神はボーダーでクイーンって呼ばれてるの?」
「女神?」
「岡くんのもあだ名だからね」
「ふむ。きみのセンスもなかなかだね」
「それ、王子くんには言われたくないと思うよ」
そしてC組。
「なんで黙ってたんだ、こんな面白いことを」
「女主人公はかわいいな!」
「写真写りええのうらやましいわ」
「…こうなるから黙ってたんだよ」
穂刈が持ってきた雑誌を見て、影浦は顔をしかめた。
「写真写りじゃなくて、もともと女主人公はかわいいだろ」
「そうやけど。にしてもやで」
「プロが撮ったからじゃねーの」
「照れているな、苗字を褒められて」
「そんなんじゃねーよ!」
水上は雑誌に写った女主人公を見ながら「でも、ほんまに大丈夫なんか?」と影浦に聞いた。
「あ?」
「こんなん出たら、危ないんとちゃう?」
「どういう意味だ?」
水上の言っている意味がいまいちわからず、村上が質問する。
「世の中には変なこと考えるやつもたくさんおるっちゅーことや」
「その時は守るだろう、カゲが」
「あたりめーだろ」
「まぁせやな。それにカゲだけやなくて俺たちもおるしな」
場所は変わって、ここは六頴館。
「見たぞ」
「…期待を裏切らないわね」
荒船は、雑誌を片手にニヤニヤとしている。
「おまえなんで言わなかったんだよ!めちゃくちゃ綺麗に撮れてるじゃねーか」
「からかわれるのが嫌だから言わなかったのよ。なんで持ってるの」
女主人公は荒船の持っている雑誌を見てため息をついた。
「佐鳥に教えてもらった。あいつ、スナイパー組全員に言ってるぞ」
「佐鳥くん…」
荒船はパラパラとページをめくりながら「この写真、本当におまえかよ」と言った。
「これは、カメラの向こうで雅人くんが見えたの」
「カゲが?」
「うん。綾辻さんとか時枝くんたちとお喋りしてる姿が見えて、ほほえましいなって思ってた時の写真」
「こんな自然な笑顔を引き出せんのは、カゲくらいだな」
「そういうこと」
二人で雑誌を見ていると、隣の席の鈴木が話しかけてきた。
「えー、荒船何それ!苗字さん載ってるの!?」
「鈴木さん…」
「めっちゃ綺麗!私も今日買いに行く!というか、嵐山隊以外にも広報活動するんだね」
「風邪を引いちゃった子の代わりにね。急遽出ることになっただけだから、もうこれっきりだよ」
「レアじゃーん。なおさら買っておかないと!」
ボーダーでも、木虎の代わりに女主人公が雑誌に出ていることがあっという間に知れ渡った。
「女主人公さん!雑誌買いましたよ!」
「あ…ありがとう…?」
「教えてくださいよー!女主人公さん綺麗で自慢しちゃいました!」
「…誰に自慢したのかな?」
「クラスのやつに!この人がおれの弟子なんだぞーって!うらやましがられました!」
「出水くん…」
「苗字さん、すんません。オレには止められなかったです!」
「いいのよ米屋くん…」
本当に嬉しそうにしている出水を見て、女主人公は何も言えなくなった。
「あー…でも京介も雑誌持ってたんで、めんどくさいことになりそうな気もします」
「烏丸くんは、自分の影響力をもう少し考えてほしいわね」
後で烏丸に連絡を入れておこうと思う女主人公だった。
「いやー、苗字のおかげで本当に助かったよ!ありがとう!」
「とんでもないです」
嵐山が、先日のお礼にと菓子折りを持って影浦隊の作戦室にやって来た。
「これ、よかったらみんなで食べてくれ」
「いいとこのどら焼きじゃねーか!嵐山、サンキューな!」
仁礼は嵐山からどら焼きを受け取ると、お茶を入れるために給湯室に向かった。
「それで、大丈夫か?」
「何がですか?」
「その後の影響。何もないか?」
「はい。全然大丈夫ですよ」
「それならよかった!何かあれば、遠慮なく言ってくれ」
「ありがとうございます」
嵐山とのやり取りを聞いていた影浦は、「本当に何もねーんだろうな?」と聞いた。
「何もないよ。みんなが褒めてくれるくらいかな」
「あのイベントの時みたいに、変なやつが出てくるかもしれないからな。その時はすぐに相談してくれ」
「はい」
雑誌に載ったりイベントに出ることで、変なことを考える人間が出てくる可能性もあったので心配をしていたが、女主人公の様子を見て、本当に何もなさそうだとわかった影浦は少し安心した。
「嵐山隊はすごいですね。こういう広報の仕事をこなしながら、ランク戦にも出てて…本当に尊敬します」
「まあもう慣れだな」
「お疲れ様です」
「苗字もまたやりたくなったらいつでも言ってくれ!雑誌社からも、売上が好調でもう一度出てほしいと言われてるくらいだからな!」
「それは、遠慮しますね」
こうして、女主人公の最初で最後の広報の仕事は終わった。