鋼にそう聞かれて、俺は少し驚いた。
「なんでだ?」
「いや、よく女主人公のことを目で追ってるなって思っただけだ」
「…そんなにわかりやすいか?」
鋼がボーダーに入ってまだ一か月程度。
それなのに、そんな鋼にもバレバレなほど、俺は態度に出し過ぎているのか。
「多分、オレは荒船と一緒にいることが多いからじゃないのか?」
「そういうことか」
「多分な」
そんな話をしていると、後ろから笑い声が聞こえてきた。
「ふふふふふ」
「話は聞かせてもらったわ、荒船くん!」
「げっ!」
振り返ると、そこには国近と加賀美がいた。
「こんなとこで何してんだよ!」
「オペ研修の帰りだよーん」
「二人がこそこそ話てるから、気になって聞き耳立ててたの」
「それ、堂々と言うことじゃねぇな…」
「いやー、まさか荒船くんが女主人公ちゃんのことを」
「ちょっと待て!」
こんなところで話されたら困る。
俺は三人を連れて、荒船隊の作戦室に向かうことにした。
「なんなんすか、この集まり…」
荒船隊の作戦室には、穂刈と半崎がいた。
「おまえら、訓練はどうした?」
「休みだな、今日は」
「まあまあいいじゃないの」
「別に荒船さんと加賀美先輩はわかるんすけど、なんで村上先輩と国近先輩?」
「悩める荒船くんの恋のキューピッドだよ!」
「…ダルいんで自主練行ってきますわ」
半崎はそう言うと、作戦室から出て行った。
「穂刈くんは知ってるんだよね?」
「荒船の恋か」
「そうそう」
「知ってるぞ、オレ以外にも」
「誰が知ってるの?」
「カゲ、ゾエ、それに苗字だな」
「え!女主人公ちゃん本人も知ってるの?」
「荒船本人が言ってたな、この前」
「なーんだ、じゃあ私たちの出番はない感じ?」
このまま解散になってくれればありがたいが、穂刈の話を聞いて国近はますます興味を持ったらしい。
「でもそれで付き合ってないってことは、もうフラれたの?」
「フラれてねーよ!」
「それじゃあ今はどういう状態かね?」
「…保留?」
「保留なのか?」
そう。
保留だと思っている。
「どこまで伝えたの?」
「俺の恋バナはそんなに楽しいか?」
「もちろ〜ん。荒船くんってモテるのに女の子に興味なさげだったじゃん。それなのに恋してるとは!しかも相手が女主人公ちゃんなんだもん、聞きたい聞きたい」
「影浦くんっていう強敵がいるのに、よく好きになるなーって」
「カゲは強敵じゃないだろう?」
「まあ、あの二人は幼なじみなだけで、恋愛感情はないもんね」
「見えないけどな、外から見てると恋人同士にしか」
「穂刈!余計なこと言うな!」
カゲと女主人公はただの幼なじみで、それ以上でもそれ以下でもない。
それは事実なんだが、周りから見ると付き合っている同士にしか見えない。
クソッ、羨ましいな!
「カゲくんも知ってるってことは、カゲくんの反応はどうだったの?」
「あー…お互い恋愛感情はないから安心しろって。女主人公は押しに弱いから押せって言われたな」
「なるほど。カゲくんらしいアドバイスだね」
国近は「もう女主人公ちゃん自身が荒船くんの気持ち知ってるってことは、後は女主人公ちゃん次第ってことか」と言った。
「そういうことになるな」
「荒船はかっこいいな!」
「急になんだよ」
「男らしく告白してすごいと思った!」
「告白…告白?」
「ん?」
正直、まだちゃんと告白はできていない。
あの時、女主人公に好きな人がいる発言を聞いた後、相手を聞くことも、きちんと告白することもできていなかった。
「告白もしてないのに、なんで荒船くんの気持ちは伝わってるの?」
「それは」
俺はかげうらでのことを話した。
「たしかに…それは告白とは言わないかもね」
「ちゃんと告白できてないじゃーん」
「荒船…カッコ悪いな…」
「おい鋼!」
ハッキリ言ってくるな!
「それで保留なんだね」
「まずは意識させないとな」
「それもそうだね」
「で、この前ちょっと言い争った時に女主人公が好きなやつがいるって言ったんだよ」
「ほうほう。二人が言い争いするって、想像できないけど」
「色々あったんだよ。その時に誰なのか聞こうとしたところに犬飼が来て邪魔された」
「犬飼くん…」
せっかく進展がありそうだったのに、犬飼のせいで邪魔された。
思い出したら腹が立ってきたから、後で犬飼のことは一発殴る。
「でも、苗字さんの好きな人って、やっぱり荒船くんなんじゃない?」
「そう思うか!?」
「わーお、前のめり」
加賀美の言葉に思い切り反応してしまう。
「苗字さんって、他に仲の良い人っていたかしら?」
「うちの出水と烏丸?」
「たしかに、出水くんとか烏丸くんとはよく話してるの見かけるわね」
「どんな感じなんだ?クラスメイトとは」
「女子とは仲良いけど、男子はな。俺がボディーガードしてるし、そんな仲が良いってやつはいないな」
そう考えると、やっぱり俺なのか?
「そう考えると、やっぱり荒船くんなのかな?」
「加賀美、いいこと言うな!」
「出水の可能性もあるでしょ〜」
「国近…やなこと言うな…」
いくら考えても埒が明かない。
やっぱり本人に聞くか、俺がちゃんと告白すればいいだけか。
「オレは荒船だと思うけどな」
「鋼、おまえいいやつだな」
「さすが弟子!」
「そういうんじゃないけどさ。荒船といる時の女主人公を見てると、なんとなくそう思うんだ」
「そうね」
「出水といる時は、姉弟って感じの雰囲気だもんね」
「おまえら…」
ウジウジ考えているのは性に合わねえ。
やっぱり女主人公にハッキリ伝えるべきだな。
「ありがとな。おまえらのおかげで自信がついた」
「自信なかったの?」
「意外だな」
「そりゃあ…ずっと好きだったからな…フラれたくねえ…」
「わーキュンキュンするね〜」
「荒船くんも一人の男だったんだね」
「なんだよそれ」
「それにしても、荒船くんが苗字さんをね〜」
「意外か?」
加賀美の意味深な反応に少し戸惑う。
「ううん。完璧主義の荒船くんは誰に恋をするのかなーって思ってたから、苗字さんで納得って感じ」
「荒船くんは難攻不落だって、女子の中で話題になってたからね〜」
「なんだよそれ」
「それだけ荒船がかっこいいってことだな!」
「恋愛に興味がなかったんじゃなくて、苗字さんのことがずっと好きだったってことね」
「…そういうこった」
こんな風に恋愛の話を、こいつらとすることになるとは思わなかったな。
「それで、どうするの?」
「ちゃんと告白するのかね?」
「そうだな」
とりあえず、犬飼にも言われたからムードは大事にしないとな。
「来月修学旅行だし、そこで告る」
「頑張れー!」
「荒船ファイトだ!」
「おう!」
「フラれても骨は拾ってあげるからね!」
「本当おまえはやなこと言うな!」