鈴鳴第一のメンバー、来馬、村上、別役の3人が選抜試験の事前アンケートに回答している。
「選抜試験って、こんな何日もやるんですね!」
「本当だな」
「来馬先輩と鋼くんはいいけど、太一は大丈夫?心配だわ」
「えー!大丈夫すよ!」
別役の根拠のない自信に、今はますます不安になった。
「まあまあ。太一だって、やる時はやる男だもんね」
「そうっす!今先輩、心配性すぎますよ!」
「本当に心配だわ」
「とりあえず、オレたちがいれば大丈夫だろう」
「それもそうね」
来馬はメールを見ながら、「じゃあ事前アンケートに回答していこうか」と言った。
「そうっすね!」
別役はアンケートの内容を見ながら考える。
「うーん、とは言っても遠征かー。おれはあんまり興味ないんすよね」
「そうなのか?」
「はい。やっぱ遠征って、ちょっと怖いイメージがあるんで。あんまり行きたいとは思わないんです」
「確かに、遠征先では何があるかわらかないからね」
「そうなんすよ!鋼さんはなんて答えたんですか?」
「オレか?」
「こら太一!あんまり人のを聞かないの!」
「オレは別にいいけどな」
別役は村上のアンケート画面を後ろから覗き込んだ。
「鋼さん…修学旅行の班かなにかと間違えてます?」
「そんなことないぞ」
村上の人選は、荒船、影浦、空閑、太刀川、そして北添だった。
「強くて仲の良い人たちばっかじゃないっすか!」
「気づいたらそうなってたな」
「鋼らしいね」
下にスクロールしていくと、別役は「あれ?」と言った。
「一緒に行きたくない人で苗字先輩が入ってるんですか?」
「え?」
「鋼くん苗字さんと一緒に行きたくないの?」
「ああ、これはちゃんと理由があるんだよ」
村上はそう言うと、理由を説明した。
「やっぱり遠征先は敵ばかりだし、女主人公には怖い思いをしてほしくないと思ってるんだ」
「なんだかお母さんみたいな目線っすね」
「本当にね」
「でも一緒に行きたくない人って、そういう意味なんですか?なんか違くないっすか?」
「…そう言われてみればそうだな」
別役にそう言われ、村上は一緒に行きたくない人の欄を打ち直した。
「さっきとあんまり変わってない気がします」
「鋼らしくていいんじゃないかな」
「はい。これで出します」
別役のターゲットは来馬に移る。
「来馬先輩の人選は、ガンナーばっかりですね」
「そうだね。どうしても同じポジションの人たちに偏りがちだね」
別役にツッコまれると、来馬は笑いながらそう答えた。
「東さんはわかります!」
「たしかに」
「じゃあこれで提出しますか!」
「そうだね」
和気あいあいとした雰囲気の中、鈴鳴支部でのアンケート記入が終わる。
そしてここは玉狛支部。
玉狛支部のすぐそばの河川敷で、自転車に乗っている空閑を見てヒュースは言った。
「…よくわからないな。”移動”のために、わざわざこんなバランスの悪い乗り物に乗る必要があるのか?」
ヒュースは興味深そうに自転車を見る。
「車輪が前後に二つだけでは転んで当然だ。オレから見れば曲芸に近い」
「曲芸…そんな大げさなもんかな…?」
「ヒュースくんも練習すれば乗れるようになるよ」
そんなヒュースの言葉に三雲は驚いた。
「こっちの世界は地面がかなり平らだから、自転車に乗れると便利なんだよ。トリオン食わないし。チカもこなみ先輩もふつうに乗れてるぞ」
「ムッ…」
空閑の言葉に、「あんた自転車のれないのふ〜ん」とバカにしたような顔で自分を見る小南を思い浮かべるヒュース。
空閑から自転車を借りて乗るが、すぐに転んでしまう。
ステシャーン!
「…やはりな。理屈の上ではこうなる」
「はじめはだれでもそんなもんだ」
「文化の違いだなあ…」
そんな話をしていると「みんな〜!選抜試験の日程が出たよ〜!」と、宇佐美がベランダから大きな声で知らせた。
四人は支部の中に戻ると、早速選抜試験の日程と事前アンケートの内容を確認した。
「質問は3つあって、遠征を希望するか、隊以外で一緒に行きたい人、行きたくない人を選ぶ感じだね」
「一緒に行きたい人…」
三雲はリストを確認すると「このリスト…嵐山さんの名前がないですね」と言った。
「あれ、ほんとだ。佐鳥くんや充くんもいないね。こっちで仕事があるからかな?」
宇佐美も同じようにリストに載っている名前を確認する。
「ん?でも木虎ちゃんはいるね。なんでだろ?」
「あ、いますね」
「んじゃおれは、しゅん、カゲ先輩、ゾエさん、むらかみ先輩、トーマ先輩、の5人だな。理由は全部”仲いいから”で」
「OK」
宇佐美は空閑の分を入力する。
「アズマ、ムラカミ、イヌカイ、イコマ隊のシューター」
「水上先輩だね」
「いこまさんよりみずかみ先輩なんだ?」
「チームで相手をした時の、”厄介さ”で選んでいる」
ヒュースの人選に、少しだけ驚く空閑。
「後は女主人公だな」
「苗字先輩?ヒュースくんって苗字先輩と面識あったっけ?」
「おれも思ってた。ROUND7の時も思ったけど、ヒュースはなんで苗字さんのこと知ってるんだ?」
「あの時も言ったが世話になった」
「お世話になったの?いつ?」
ヒュースは入隊式の時の話をした。
「なんですぐに言わなかったんだ。お礼に行ったのに…」
「あいつも言っていたが、大したことではない」
「なんでおまえがそんな偉そうなんだよ…」
助けてもらった側のヒュースが偉そうにしているので、三雲はツッコミを入れる。
「苗字先輩も同じ理由?」
「ああ。あの至近距離から攻撃を躱されたからな。あの身のこなしは厄介だ」
「たしか苗字さんもサイドエフェクトもちって言ってたな」
「そうだね。強化動体視力だったかな?」
「なるほど。それであの距離でも躱されたのか…」
ROUND7での戦いを思い出し、納得をした表情のヒュース。
「あとは単純に顔が好ましいから伴侶にしたいと思っている」
「…なんて??」
ヒュースの言葉に三雲は冷や汗をかく。
「ぼくの聞き間違いか?」
「アタシにも聞こえたけど…」
「ヒュース、おまえ苗字さんのことが好きなのか?」
「そうは言っていない。顔が好みだと言っているだけだ」
「…それは…好きだってことじゃないの?」
ヒュースの言葉に、雨取が再度質問する。
「オレの国では個人の恋愛感情よりも、能力や容姿で結婚が決まることが多いからな。感情はいつか壊れるものだ」
「おまえの国って…アフトクラトルってすごいところだな…」
「ここは日本だ」
「っ!!」
空閑はヒュースの頭をチョップした。
「何をする!」
「勝手に苗字さんを伴侶にするな。それに、苗字さんはカゲ先輩の彼女だぞ」
「そうなのか?」
「あれ、修くん知らなかったっけ?」
「何!?あの凶悪なカゲウラだと!」
「おまえ…影浦先輩に怒られるぞ…」
「ふん…この先どうなるかわからないからな」
「何てこと言うんだ!」
「カゲ先輩に連絡してボコボコにしてもらおう」
空閑は、後で影浦に連絡を入れておこうと誓った。
「ヒュースくんは苗字先輩のことあきらめてね。とりあえず、これでいい?」
理由が理由なので、宇佐美はヒュースの一緒に行きたい人から女主人公の名前を消した。
「あとは敢えて挙げるなら、アズマ隊とスズナリのオペレーターだな」
「摩子さんと今先輩ね」
人数オーバーではあるが、とりあえずで記入をする宇佐美。
一緒に行きたくない人は書いたり書かなかったりで提出することにした玉狛第2のメンバー。
こうして事前アンケートは無事に提出できたが、次の日、本部では空閑から話を聞いた影浦が鬼の形相でヒュースのことを待っていた。
「おいこら、おめー女主人公のことなんて言った」
「カゲウラ…!ユウマ、貴様余計なことを言ったな!」
「おれは知らないよー。カゲ先輩にボコボコにされるがいい」
空閑はヒュースの肩を叩くと、影浦にバトンタッチした。
「変なこと言えねーようにボコボコにしてやっからブース入れ!」
「ふん!貴様に勝てるわけがないだろ」
「上等だ!」